第16話 家の修理
船の修理が終わる頃、視界の端から走ってくる井波市長の姿が見えた。顔は真っ赤で、ふうふうと息を切らしている。
握られてくしゃくしゃになった家の間取り図と見取り図を渡され、手に取ると少し湿っぽかった。
走ってきたせいだけじゃない、きっと、ろくに休まず動いていたのだろう。
置いてある場所聞いて、俺が行けばよかったな。申し訳ない。
「利他くん! 待たせて悪かったね」
「いえ、お忙しいところありがとうございます」
頭を下げると、足元をうろついていたソラが、道端の小石をちょいちょいと小突いていた。
空腹を紛らわせているのかもしれない。猫のごはんくらい持ってきたらよかった。
こんなときでも、我慢をさせてばかりだ。
「あ、うなぎの件は漁師さんたちに任せました。食べられる部分は捨てることなく食べ切ってあげてください」
「いやあ、本当に助かるよ。ありがとう」
次は建物の修理作業だ。
破壊された建物や散らばった物品を注意深く見回してみる。
……どこから手をつけていいのやら。
海から近い家屋は、屋根が崩れ、壁面には大きな亀裂が入っている。窓ガラスは割れており、中には家具が散乱していた。
海から少し離れた家でも、コンクリートの破片や木の板なんかが飛んできていたようで、壁に穴が開いた家が数軒あった。
まずは、被害の少ない場所から順に直していこう。
市長から渡された見取り図と間取り図をしっかり頭に入れて、じいさまの船を修理したときのように壁に触れ、魔法を使う。
あっという間に穴が塞がった。
意図してやったわけではないが、直したときに経年劣化で薄汚れていた箇所も、新築同様の状態に。
ただ、家の中にあった私物は壊れていてもそのままになっているせいで、住人が帰ってきたときにはがっかりさせてしまう。
そこは本当に悪いと思っている。
どの家も造りが同じだったおかげで、修理は思ったより早く進んだ。
青い屋根に白い壁が統一された街並みはまるで美術作品のようで、澄んだ青空に映えている。
ようやく元の街に戻ったみたいで、胸の奥がじんわり温かくなる。
「もう終わったんじゃない?」
「んー、そうかも」
ほかに直すべきところがないか見渡すと、道路の修復もいつの間にか行われていたようで、もう問題なさそうだった。
しいて言うなら家の中にあったものくらいだろうが、さすがにそこまではできない。
……もどかしいけど……でも、そこまでが俺の限界だ。




