第15話 依頼料の代わり
船は全部で十二隻。
ちょうど、巨大うなぎを横たえた場所に船が揃えてあるというので、一同はぞろぞろと歩き出した。
街の方を覗くとワタツミ支部の魔導士たちが、怪我人の有無を確認したり、瓦礫を撤去するために働いているのが見える。
次に、目的地に置かれているうなぎに再び目を向けた。体色は黒っぽく、光沢があり、まだ生きているかのように感じられる。
うなぎの体は、船数隻ぶんにも匹敵する長さだった。
周囲の漁師たちが、ちらちらとそちらを見ている。動いたら困るから、念のため、鉤は刺したままにしてある。
それにしても……あれの処理か。
粉々にして海に還せばいいや……と考えていたけど、漁師たちにこの件は任せることもできるんじゃないか?
魔法を跳ね返す体なだけであって、刃物は通すのだろうし。
刺さったままの鉤爪が何よりの証拠。
うん、それがいい。
たまたま自分の隣を歩いていた男性に声をかける。
「うなぎの後始末を頼まれているんですけど……命を奪ってしまった以上、ただ廃棄するのはかわいそうだと思いまして。依頼料の代わりに、みなさんで捌いていただけないでしょうか?」
街のみんなの朝ごはん分に余裕で足りるどころか、市場で販売することもできる。街のみんなも喜ぶし、俺の仕事も減る。
……最高の提案だ。
善人ぶっているように聞こえるかもしれないけど、こっちだって助かるし。
「かなり大きいですが、大丈夫ですか?」
「いやいや、やらせてもらうよ。ありがとな」
そうしてうなぎの処理をお願いしていると、じいさまが「せめてお礼を」と申し出てくれた。依頼料の代わりに俺とソラの朝食をお願いすることに。
大したことはしていないつもりだけど、こうして感謝されると、やはりうれしい。
やった甲斐があるというものだ。
三枝ばあさまには「みんなのごはん会場を作りたいんだけど」と、相談すると「任せておいて!」と、頼り甲斐のある返事がきた。
目を輝かせたその笑顔は、胸を弾ませる少女のようだった。
漁師たちはうなぎをさばきに、自分は船の修理に行った。




