第14話 漁師の仕事
「なっなんだ!?」
「まあっ!」
船が魔法の力を受けると、船体の傷や欠損部分がゆっくりと修復されていく。
船が元に戻っていく様を、群衆はただ息を呑んで見守っていた。
まるで呼吸をするかのように船体が膨らみ、縮みながら、傷口がゆっくりとふさがっていく。窓や装飾も、カチャカチャと小気味よい音を立てて元の姿に直った。
船体を軽く叩いてみる。
――崩れる箇所はない。
海に行くよう指差すと、船がゆっくりと滑り込んでいく音が聞こえ、水しぶきを上げて海に着水した。
がたつきもなく、完璧だ。
その際、立ち入り禁止の紐が船に巻き込まれて切れたけど……気にしたら負けだと思っている。
「じいさま、これでもう大丈夫」
驚きに固まったままの顔が、少しずつほころんでいくのを見て、思わず胸が熱くなる。
……どうだ。
俺だってたまには役に立つだろう。
「すごいわあ! 直してくれたの!」
三枝ばあさまは、涙をぬぐいながら笑っていた。
「こりゃあ……すごいなあ……」
船首を手で撫でながら、声をやっとのことで絞り出している様子のじいさま。
二人もそうだが、カグツチ村のみんなにはお世話になりっぱなしなので、手伝えることがあるならしてあげたいと思っている。
じいさまは深々と頭を下げて「ありがとう、ありがとう」と手を握ってくれるものだから、逆に申し訳なくてそれを制した。
と、なにやら、視界の端から筋肉質な男性が数人、力強い足音と共に近づいてきた。
なんだ……?
ちょっと怖い。
近寄ってくる圧に思わず身構えてしまう。
だけど――
「すみません……うちらの船も、やられちまって……よかったら修理してもらえませんかね?」
言葉は意外にも優しかった。
彼らはじいさまと同じく被害にあった地元の漁師たちだった。
――元よりそのつもりだ。
この街は、漁業や輸入など、海に関する仕事が多い。いくら街が復旧しても、仕事をするための道具が壊れたままでは生活が成り立たない。
……だから、事前に山口さんに船の移動を頼んでおいた。
一方で、井波市長からは、ワタツミ街の建築物の修復とうなぎの後処理のみを依頼されていたため、船の修理費用は漁師たちが負担することになる。そのように告げるが、快く了承してくれた。
市長と依頼のやり取りをするとき、もしかしたら魔力欠乏症になるのを案じてくれたのかもしれないが、魔力が尽きたら……そのときは、そのとき。
どうせ寝れば回復するし。




