第11話 象徴の修繕
「たしかこの灯台、石でできてたよな」
無残に崩れ落ちた港の象徴を下から見上げる。
造りが古いのか薄汚れており、土台には、朽ちかけた箇所もあった。
うなぎの襲来がまたあるとは思えないけど、強固にしておくに越したことはない。
まずは灯台の残骸を砂の山に変えた。
指を振ると、更地になった灯台跡に、鉄の骨組みがにょきにょきと伸び始める。
格子状に生えていくのは、見ていてなかなかおもしろい。
先ほど作った大量の砂を、コンクリートの材料として生まれ変わらせているとき、たまたま近くにいた、潮浴び青年山口さんが感嘆の声を漏らしていた。
あとは骨組みに合わせてコンクリートを張り、煉瓦を重ねれば、完成だ。
灯台の中とか適当に作ったけど……まあ、守り人がなんとかするよね。
「利他さんの魔法……すごいっすね……」
「ありがとう。でも、派手に見えるだけで、案外地味な魔法なんだよね」
みんなが使う属性魔法と比べると、攻撃手段があまりにも少ない。戦闘向きの能力じゃないから、こういう……ちまちました活動の方が好きだったりする。
「属性魔法の方が、魔導士らしくてかっこよくない?」
「唯一無二みたいでそっちの方がかっこいいに決まってるじゃないですか!」
なんだよ、そんなこと言われたら照れるじゃないか。俺の魔法、別にかっこよくはないんだけどな……。
“唯一無二”は、言いすぎだろ。
褒められ慣れてないから、こういうとき困る……。
どう反応していいのかわからない。
さも何も思っていないですよ、という風な無表情を装い、灯台の表面を撫でる。
軸もしっかりしているし、しばらく倒壊することもないだろう。
このあとは建物の修理か。
船が刺さった釣具屋とか、道にも船の部品が転がっていたから、そちらの移動を優先した方が……ちょっとめんどうだな。
「山口さん。時間あったらでいいんだけど、船を一ヶ所に集めてもらえないかな?」
「お任せください!」
相変わらずいい返事をして走り去っていく。
水の魔法を使っていた彼なら、海水を操作して船を別の場所に移すことができる。
建築物を修理する分の魔力は残しておきたかったから、近くを通りかかってくれて助かった。山口さんがいなかったら、次は左腕が使い物にならなくなるところだった。
「もう夜が明けちゃったねえ。おなかすいたなー」
「俺も腹減ってきたわ」
「街でごはん準備してくれないかなー」
「いや、そっちの期待はほどほどにしとけよ……」
井波市長と山口さんの準備ができるまで、堤防の上を散歩しながら休憩を取ろう。
水平線から現れた朝日が、淡い黄色の光を水面に撒き散らし、波がその光を受けて輝き始める。
ああ、やっぱり朝の海って、どこか生き生きとしているな。
血の海が消えて、再生されたように感じる。
深夜、あの巨大なうなぎを仕留めたときのことを思い出すと、胸が少し苦しくなるけど、今はこの海の美しさに気持ちが落ち着くのを感じる。




