第9話 街の修復
んー……本当にどうしよう。
頭の中に最悪な展開がいくつも浮かぶ。
銀三じいさまと依頼が重なれば二重契約。報酬の話がこじれたら、それだけで地獄だ。
俺が仕事を横取りしたってことで、支部の面目を潰すことになるし、下手すればワタツミ支部組合員の入れ替えが発生するかも……。
うわあ、胃が痛い。逃げ出したい。
「どうするの? ユウナ」
ソラの尻尾が首をくすぐった。
……慰めてくれるのか。ありがとう。
うん、そうだな。変に焦って失敗するのが一番まずい。
市長が周囲を気にするように視線を彷徨わせているのが目に入る。その背後に積み上がる瓦礫。
――ああ、そうだ。手はある。
「……井波市長が駆除の依頼をしたのはワタツミ支部、俺の依頼者は一般の方です。なので、この件についての報酬は辞退させてください」
驚いたような顔をする二人をよそに、畳みかける。
「余分にお金はかかりますが、街の修復とうなぎの後始末を俺に依頼していただけませんか?」
街の建物や船が破壊されてしまった以上、誰かに修理を依頼する必要がある。相当な範囲で被害を受けているから、時間と金がかかって大変な思いをするのは目に見えている。
それに、俺の魔法以外効かない大きなうなぎを、どう処理するのかも悩まなくてはならないだろう。
それを踏まえると、一人の魔導士に依頼料を支払うだけで、二つの問題を数時間で解決できるのは、街としても、市民の懐事情にも優しい。
これなら、ワタツミ支部にも報酬が入るし、俺も金が手に入る。
さらに街まで直るというんだ。これなら誰も損はしないだろう。
「いかがでしょう?」
「それはぜひお願いしたい! 早速手続きに入ろう!」
……うん、よし。
みんな得するなら、文句はないはずだ。
……俺の財布にとっても。
「ユウナさん、めずらしく気が利いてるね」と、ソラが肩の上で鼻を鳴らした。




