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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
2章 家出少女

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第8話 英雄の困惑


樺谷さんからの視線が刺さる。


うわ、この目……思い出すな。

以前の組合で、いたずらがバレたときの上司の目だ。


じわじわ、じりじりと。背中が勝手に縮こまる感覚があった。



そんな空気をふっと断ち切るように、市長が手を差し伸べてきた。天然なのか計算なのか……判別がつかないけど、今はそれがありがたい。



「わたしはこの街の市長を務めている井波だ。利他くん、きみの噂は聞いているよ」



市長の声に呼応するように、瓦礫の隙間から潮の香りがふわりと立ち上る。



「よろしくお願いします。いい話だとよいのですが……」



引きつった笑みでその手をとり、浅くお辞儀する。

肩に乗ったソラが、突然体勢を変えたことに驚いて、尻尾で背中をばしばしと叩いてくる。


「さて」と声を落とすと同時に、市長の表情がきゅっと引き締まった。



「改めて、この街を救ってくれてありがとう。樺谷さんと相談したんだが……君への依頼をわたしがしたということにして、報酬を受け取ってくれないか?」



……え?

まじ?


市から直接報酬が出るなんて、普通に考えてありがたい話だ。けど――



「それはありがたい限りですが、受け取ってよいものか、迷ってしまいますね……」



顔を見合わせる二人を前に、自分の考えを言葉にする。



「到着したとき、山口さんが奮闘されていました。ほかの方も、きっと同じように。それなのに、正当な報酬が受け取れないのは、どうにも納得がいかなくて」


「……ですが、あれを仕留めたのは利他さんです。あなたの力があってこそ、完遂できた依頼ですので。受け取っていただけると幸いです」



――うーん、説き伏せられそう。


けど、ちゃんと恩に報いる形にはしておきたい。

どうしたもんかな。




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