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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
2章 家出少女

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第7話 逃亡劇の失敗


ソラは肩に飛び乗ろうとして、急に鼻をひくひくさせた。

「ユウナ潮くさいよー」と、不満そうに文句を垂れる。


そりゃそうだ。

あのうなぎに海水かけられたせいで、外套、着物、髪まですっかり磯の香りだ。


見下ろせば、乾いた潮が白く浮き出ていて、真っ黒な涅色くりいろの着物に斬新な模様を描いている。


芸術品みたいだけど……このままだと着物がだめになる。


着物の襟の部分に触れ、魔法を発動。

しゅわっと、炭酸が発生したような音が鳴り、海水が全身から蒸発していった。


これで、服も髪も肌も濡れる前の状態だ。


ソラは、やっと乗れると言わんばかりに、満足げに肩に飛び乗ってきた。



さて。次は、じいさまとばあさまの無事の確認だな。

といっても、俺に電話をかけてこられたんだから、元気なはずだ。たぶん。


これ以上ここにいたら、組合の人たちの邪魔になるし――何より、報告書とか、そのへんの面倒事に巻き込まれそうでだるい。


怪物は退治した。俺の仕事は終わった。

市長が来る前に、さくっと撤収といこう。



「怪物も片付いたし、あとは任せよう。さっさと帰ろうか」


「うん。おなかぺこぺこ」



あとは、組合の人に任せれば大丈夫だろう。


心の中で樺谷さんと、ついでに山口さんに軽く拝んでおく。



傘に腰掛け、空中にふわりと浮かんだ――そのときだった。



「ちょっと、利他さん?」



「……あ」


「ありゃ」



「おお!! 傘に乗って飛ぶのかね! おもしろいことをするなあ!」



真下に、すごくにこやか……だけどなんとなく怒ってそうな樺谷さんと、少年のような目をした、ふくよかな中年男性がいた。

おそらく市長だろう。


黒髪に白髪が混じっていて、額が少し湿っている。


もしかして、走ってきたのか?


その目には、興味と期待の感情が込められている。



ゆっくりと地面に降り立つ。ばつが悪くて、思わず後頭部を掻いた。

笑って誤魔化したいけど、無理がある。


……ああ。逃げ切り失敗、だな。これは。




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