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白猫を連れた魔導士が、港町で拾ったのは秘密を抱える美少女でした  作者: 汐田 伊織
2章 家出少女

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第6話 属性不明の魔導士


「それにしても……」



彼女は討伐された怪物を一瞥し、ふわりと揺れる髪をかき上げた。



「武器を召喚する魔法を初めて目にしました」



――奇遇ですね。俺も、自分以外で見たことないんです。


なんて言ったら、確実に引かれる。

口にする前に、適当に相槌を打つにとどめた。



「利他さんは、何属性の魔法を使われるんですか?」


「それが……どの区分にも属していないようでして。とりあえず無属性魔導士ということになってます」



まあ……俺が一番知りたいんだけど。この力は何?って。


でも、それをぽろっと話せるほど、気さくな人間じゃない。

ましてや、初対面の責任者相手に。



「そうなんですね」



彼女は軽く頷くと、すぐに切り替えて指示を出す。



「では、わたしは市長に連絡してきます。山口は、みんなの怪我の確認をお願い」



潮くさい青年――山口さんは「了解です!」と、元気に返事をして、すぐに走っていってしまった。


……あ、みんなに置いていかれた。

まあ、いいや。あの子を探しに行こう。



「ソラ?」



瓦礫の隙間や陰になる場所を覗いてはため息をつき、また移動する。


本気でこの瓦礫の山から猫一匹見つけろって?

難易度高すぎる。


空が少しずつ明るくなってきて、ようやく周囲がはっきり見える。


崩れた建物の残骸に、鋭く折れた木材。ヒビ割れたガラス、歪んだ鉄骨、吹き飛ばされた船――惨状という言葉すら追いつかない。


もしかして、あのとき誰か……逃げ遅れた人もいたんじゃ?


背中に冷たいものが走る。



街全体に、灰色のもやがかかったような雰囲気が漂っている。


この空気、嫌いだ。


何もかもが終わったあとの、取り残されたような感じ。


――この街に、もう動くものなんて残っていないんじゃないか。そんな気さえしていた。



ふいに、海風に煽られてくしゃみが出た。

その瞬間――ふわっ、と足元を白っぽい何かが横切る。



「……ソラ!」



しなやかな体をした猫が、すっとこちらに振り返った。その姿を見れただけで、ほっと安堵の息をつく。



「よかった。どこ行ってたの?」


「湯たんぽ、途中で消えちゃって。凍えそうだったから、ちょっと暖かそうな所にね」



おかしい。俺の魔法は、“消えろ”と明確な指示を出さない限り解除されないはずなんだが……?

でもまあ、うなぎ退治で疲れていたのかもしれない。



「……そうか。そういうことにしておこう」



よくわからないことなんて、今は考えたくない。




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