第6話 属性不明の魔導士
「それにしても……」
彼女は討伐された怪物を一瞥し、ふわりと揺れる髪をかき上げた。
「武器を召喚する魔法を初めて目にしました」
――奇遇ですね。俺も、自分以外で見たことないんです。
なんて言ったら、確実に引かれる。
口にする前に、適当に相槌を打つにとどめた。
「利他さんは、何属性の魔法を使われるんですか?」
「それが……どの区分にも属していないようでして。とりあえず無属性魔導士ということになってます」
まあ……俺が一番知りたいんだけど。この力は何?って。
でも、それをぽろっと話せるほど、気さくな人間じゃない。
ましてや、初対面の責任者相手に。
「そうなんですね」
彼女は軽く頷くと、すぐに切り替えて指示を出す。
「では、わたしは市長に連絡してきます。山口は、みんなの怪我の確認をお願い」
潮くさい青年――山口さんは「了解です!」と、元気に返事をして、すぐに走っていってしまった。
……あ、みんなに置いていかれた。
まあ、いいや。あの子を探しに行こう。
「ソラ?」
瓦礫の隙間や陰になる場所を覗いてはため息をつき、また移動する。
本気でこの瓦礫の山から猫一匹見つけろって?
難易度高すぎる。
空が少しずつ明るくなってきて、ようやく周囲がはっきり見える。
崩れた建物の残骸に、鋭く折れた木材。ヒビ割れたガラス、歪んだ鉄骨、吹き飛ばされた船――惨状という言葉すら追いつかない。
もしかして、あのとき誰か……逃げ遅れた人もいたんじゃ?
背中に冷たいものが走る。
街全体に、灰色のもやがかかったような雰囲気が漂っている。
この空気、嫌いだ。
何もかもが終わったあとの、取り残されたような感じ。
――この街に、もう動くものなんて残っていないんじゃないか。そんな気さえしていた。
ふいに、海風に煽られてくしゃみが出た。
その瞬間――ふわっ、と足元を白っぽい何かが横切る。
「……ソラ!」
しなやかな体をした猫が、すっとこちらに振り返った。その姿を見れただけで、ほっと安堵の息をつく。
「よかった。どこ行ってたの?」
「湯たんぽ、途中で消えちゃって。凍えそうだったから、ちょっと暖かそうな所にね」
おかしい。俺の魔法は、“消えろ”と明確な指示を出さない限り解除されないはずなんだが……?
でもまあ、うなぎ退治で疲れていたのかもしれない。
「……そうか。そういうことにしておこう」
よくわからないことなんて、今は考えたくない。




