第3話 終末のうなぎ掻き
このままじゃただの野次馬だ。それだけは、さすがにかっこ悪すぎる。
「……よし。やるか」
「がんばれー」
「うん。がんばる」
ゆっくりと目を閉じる。
――うなぎ、ね。
小さい頃、銀三じいさまが見せてくれたあれを思い出す。長い棒の先に、鉤がついた“うなぎ掻き”。
まさか今になって役に立つとは思わなかった。
うなぎ掻きを、あのうなぎの大きさにしよう。
頭の中で、金属の流れを組み立てていく。
切削、焼き入れ、研磨。
――さて、やろう。
魔法を起動した瞬間、耳を劈くような轟音があたりを震わせた。足元が一瞬ぐらりと揺れる。
思わず膝をつき、顔を上げると、夜空を裂くように何かが落ちてくる。
漆黒の巨大な棒。その先に、二本の鉤。
鉄の匂いが焦げついた空気に混じる。それは月明かりを受けて、冷たく光っていた。
「大っきいねえ」
「ソラ、ちょっと離れてて」
「はーい」
懐の中から、するりとソラが抜け出す。
しかも、ちゃっかり湯たんぽをくわえているし。
……この、寒がりめ。
ぬくもりが消えた腹のあたりが、急に寒い。凍えそうになりながら、同じ大きさのうなぎ掻きをさらに九本、順番に創り出す。
魔力が腕を通って抜けていく。体の奥から何かが抜けていくような感覚。
魔力の残量は……今のところは問題ないな。
空から落ちる巨大な鉄の柱が、次々と地面に叩きつけられるたび、雷鳴のような衝撃音が耳に響いた。
自分でやったくせに……この光景、洒落になってない。まるで終末のようだ。
周囲の建物が揺れ、地面にヒビが走る。あまりの規模に、自分でもちょっと引く。
――すぐに攻撃するべきか?
銀三じいさまの話を思い出す。
たしか、うなぎの血には毒があるって言っていたな。船置場で戦ってるほかの魔導士たちに、飛び散ったらまずい。
……だったら、もう少し海側に誘導してから。
それにしても、これで効かなかったら……どうすればいいんだろうな。




