第117話【道を閉ざしたのは、元Fランクの闇使い】
UFO級のコアを追う翔星とサイカは、
新たな硼岩棄晶に闇を消されて苦戦を強いられた。
「まずは闇を消す手段を暴く」
「心当たりは?」
「俺の闇で覆えないのはひとつだけ、それをどう細工してるかを見極める」
確信に満ちた表情を浮かべた翔星は、前方を睨んだまま聞き返すサイカに親指を立ててから通路を塞ぐ上半身が背中合わせになったスクナ級硼岩棄晶を指差す。
「具体的な指示を要求」
「まずは近付いて闇を使う」
「了解した。瑞雲、起動」
バイザーを下げて脚に力を込めたサイカは、左手の力を抜いた翔星の首根っこを掴んで飛び上がった。
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「敵スクナ級、電撃発射の兆候」
「やはり足止めか、避けながら投げてくれ」
「了解した」
低空飛行をしながらスクナ級の動きを観察していたサイカは、翔星の指示に従い速度を上げる。
『『!!……レイガン、ダブルファイア!』』
「発射確認、投擲開始」
「っしゃあぁぁっ!」
背中合わせになったスクナ級の上半身が同時に電撃を放ち、飛行中に回避運動を加えたサイカに力いっぱい投げられた翔星は電撃の合間を矢のように飛び抜けた。
『『!?……ハッ!』』
「おっと……食らうかよ」
肉迫して来た人影に向けてスクナ級が右手に生えた巨大剃刀を振り払い、翔星は靴底に闇の異能力を出して宙を蹴りながら懐へ跳び込む。
『『!?』』
「初歩的な目くらましも見破れんとはな、闇よ!」
目標を見失ったスクナ級の動きが止まり、周囲の光を屈折させて姿を消していた翔星は左手を振って闇を展開する。
『『ハッ!』』
「そこだ! オーバーサークル!」
両腕を広げたスクナ級に踏み込んだ翔星は、銃口に闇の針を出したRガンを指で回して作り出した円刃を撫でるように振った。
『『!!』』
「光る網か。急ごしらえにしては、よく考えたな!」
「闇の展開を確認。闇を消した網は、バイパスと同じ構成と分析」
バリバリと音を立てて破れた網に似た物体の手応えに満足した翔星が更に円刃を振り、サイカはバイザーを通して網の破れた位置を分析する。
「考えてみりゃ簡単な話だ、俺の闇で消せないのはコアの光だけだからな」
「網の位置、及び構成をインプット。排除を実行する」
自嘲気味に笑った翔星が円刃を振り続け、バイザー越しに目を忙しなく動かして記録を終えたサイカはガジェットテイル先端の懐中電灯を手に取った。
「思いっ切りやってくれ!」
「了解。虎影灯襖虚、起動!」
『『!?』』
銃の回転を止めた翔星の合図に頷いたサイカが光の刃を振り、スクナ級が周囲に張った光の網を残らず切断する。
「排除完了、再生前に解析を要請」
「任せろ、闇よ!」
バイザー越しにスクナ級の周囲を分析したサイカが合図し、翔星は左手を振って周囲を闇に包んだ。
▼
『『!?』』
「……何だ、ありゃ?」
「過去に遭遇した合体型硼岩棄晶と同様、バイパス接続と推測」
周囲を闇に包まれて動きを止めたスクナ級の全身を眺めた翔星が呆気に取られた表情を浮かべ、サイカは手のひらに類似する硼岩棄晶の映像を浮かべる。
「そのバイパスが何本にも枝分かれしてるから、ちょいと驚いただけだ」
「外部に展開する網を内包すると推測」
「何とも合理的な事で。どっちにしろ奴は囮だ、さっさと駆除して本命を探すぞ」
闇に浮かぶ網目状の光を指差した翔星は、手のひらの映像を切り替えたサイカに大きく肩をすくめてから気持ちを切り替えるべく息を整える。
「全バイパスの同時破壊は困難と判断」
「なら、コアを同時に破壊するしかないな」
「了解した。虎影灯襖虚、起動」
撮影したバイパスの画像を手のひらに浮かべて首を横に振ったサイカは、翔星の指示に頷きを返して懐中電灯から光の刃を伸ばした。
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『『レイガン、ダブルファイア!』』
「オーバーサークル!……やはり、貫通攻撃も持ってたか」
再生した光の網を広げて闇を消したスクナ級が各々の左手から電撃を放ち、指に通したRガンを回転させた翔星は電撃を弾いて立ち止まる
「台刻転起動、梠接射出」
『『ハッ!』』
翔星の後ろでゲートを展開させたサイカがスクナ級の2つの首に向けて光の刃を同時に転移させるが、スクナ級は右手の巨大剃刀を振って難無く弾いた。
「おいおい……至近距離の転移まで弾くのかよ……」
「駆除には時間を要すると判断、貴官には……」
「サイカ、コアの見分けは出来るか?」
考えうる必勝の策を破られて言葉を失う翔星は、背中に軽く触れて来たサイカの提案を遮ってスクナ級の奥の壁を指差す。
「発光パターンは記録済み、判別は可能」
「ここは俺が食い止める、サイカはコアを追ってくれ」
振り向けば見える位置に手のひらを差し出したサイカが淡い光の映像を浮かべ、安堵の表情を浮かべて頷いた翔星は奥の壁を指差したまま指示を出した。
「理解不能。貴官の護衛が最優先」
「UFOのコアをつぶせば俺も助かる。行ってくれ」
静かに首を振ったサイカが制服の背中を掴み、翔星は頭を下げてからぎこちない笑みを作る。
「貴官の発言は詭弁と判断」
「久々に骨のある奴が出て来たんだ、少しは楽しませろよ」
抑揚のない声で指示を拒んだサイカが制服を掴む手に力を込め、小さくため息をついた翔星は吹っ切れたような笑顔を返す。
「今回は貴官の好戦的な性格に免じる、索敵開始」
「恩に着る、こっちは任せろ」
制服を掴んでいた手を放したサイカがバイザーの偏光機能を起動し、頬を緩めた翔星はいつでもスクナ級の気を引けるようにRガンを構え直した。
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「緊急事態、索敵可能範囲内にコアの反応無し」
「何だって!? まさか逃げられたのか」
バイザーを上げてから振り向いたサイカが手のひらに立体地図を浮かべ、翔星は自分の言葉に否定の望みを込めながら聞き返す。
「コアの移動速度、軌道パターン、その他のデータから可能性は低いと判断」
「ここに来てコアが速度を上げる方向で進化……ん?」
『『レイガン、ダブルファイア!』』
手のひらの映像を切り替えたサイカが首を横に振り、考え込む翔星にスクナ級が電撃を放った。
「……っと。ワンパターンなんだよ、こっちは考え事をしてるってのに」
「貴官の思考がまとまるまで時間を稼ぐ」
「冗談だ、もう考えはまとまってる。それよりサイカ、今までに硼岩棄晶が戦闘の途中で進化した例はあるか?」
闇の円刃で電撃を弾いて毒づいた翔星は、素早く前へと躍り出たサイカに複雑な笑みを返してから頭で整理した疑問を聞き返す。
「データベース検索、どの硼岩棄晶も事前に組み込まれた動作を実行」
「やはりな。急ごしらえの化け物バディを出すくらいだ、コアは変化してねえ」
「説明を要求」
天井を見上げてから即座に戻して首を横に振ったサイカは、確信を固めた翔星に小首を傾げる。
「木を隠すなら森の中、ってやつだ。まずはスクナ級を駆除する」
「了解した」
肩をすくめてはぐらかした翔星がスクナ級にRガンを向け、懐中電灯を手にして準備を整えたサイカは淡々と頷きを返した。
▼
『『レイガン……』』
「パターンは見切った! 闇よ!」
電撃を放つ構えを見せたスクナ級を鼻で笑った翔星は、靴底に展開した異能力で何度も宙を蹴りながら周囲に闇を広げる。
『『ハッ!』』
「サイカ! 光の網を切ってくれ!」
「了解、虎影灯襖虚起動!」
両腕を広げると同時に光の網を広げたスクナ級が闇を消し、翔星の指示に頷きを返したサイカは懐中電灯から光の刃を伸ばしてスクナ級の周囲を切り裂く。
『『!?』』
「もういっちょ、闇よ!……やはりな、網にコアをもうひとつ隠してやがった」
「瑞雲出力最大、虎影灯襖虚リミッター解除。推して参る!」
狼狽えるスクナ級に向けて再度闇を展開した翔星がUFO級のコアを探り当て、即座に飛び上がったサイカは懐中電灯から背丈を超える巨大な光の刃を伸ばした。
『『ハッ……!?』』
「チェストー!」
『『ギェェェェェッ!?』』
「結局美味しいところを持ってかれ……てないな! Rガン、ダブルファイア!」
サイカの巨大光刃は上で交差した右手の巨大剃刀ごとスクナ級を両断し、複雑な表情を浮かべた翔星は離れた光球に向けてRガンの引き金を素早く2回引く。
「これで地球への道は閉ざされたぜ」
「コアの破壊およびUFO級の自壊開始を確認、脱出フェーズに移行する」
Rガンの銃口から闇の針を伸ばした翔星が熱線に弾かれ床に転がった光球に突き刺し、周囲を確認したサイカは飛行装置を起動して翔星に抱き着いた。




