第116話【特技を破られたのは、元Fランクの闇使い】
コチョウと連携してゲノム級を駆除したピンゾロは、
UFO級コアの探索を再開するために翔星の後を追った。
「モードESD、ライトニングブラスト!」
『『グォォオッ!?』』
「もう、キリが無いわね!」
剥がした魔導書のページを畳んで電撃を放ったカーサは、衝角ブロックのハッチ付近で灰となったマグナム級硼岩棄晶を確認しながら後ろに下がる。
「ここまで下がれば大丈夫だよ」
「根拠は?」
先に退避をしていた羽士が衝角ブロックの床からバリケードを起動し、カーサは心持ち不機嫌に聞き返した。
「突き刺さったのはここから先だからね」
「なら、囲まれる心配も無いな」
光球に宇宙船の衝角が突き刺さった映像をLバングルに浮かべた羽士が微笑み、そっとカーサを引き寄せた聡羅は先端部の側壁を叩く音に涼しい笑みを浮かべる。
「宇宙空間ならレーザーで迎撃できるからね」
「これで、どれだけ持ちましょうや」
手近な側壁を羽士が軽く叩き、蔵は複雑な表情を浮かべて合掌する。
「翔星なら必ず決めてくれる、あと少し踏ん張るんだ」
「マスターがここまで言ってるのよ、サイカのマスターも早くしなさいよ……」
震える手を強引に握り込んだ聡羅が自分にも言い聞かせるように激励し、しがみついたカーサは祈るように呟いた。
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「聡羅達は最終防衛線まで後退したぜ」
「いよいよ正念場か、状況は?」
艦内のモニターを確認したテツラが艦長席を覗き込むように報告し、極力平静を装ってモニターを確認した祐路はブリッジの中段に声を掛ける。
「数が増えてないのは幸い……と言っていいのかな?」
「逆に言えば、翔星達に戦力を割いてる証拠でもあるからね」
手元のパネルでレーダーの確認をしたツイナが複雑な表情を浮かべ、政之も艦の外周に取り付こうとする硼岩棄晶を迎撃しながら同じ表情を浮かべる。
「とはいえ、こっちの消耗も大きい。引き付けるのも限界に近いぜ」
「翔星なら大丈夫だよ、むしろ楽しんでるくらいだろうね」
「礼真の言う通りだ、各自は最終フェーズに備えながら迎撃を続けてくれ」
難しい表情でモニターを見詰めるテツラに礼真が振り向いて余裕の笑みを返し、頷いてから船長帽をかぶり直した祐路は激励と共に指示を出した。
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「移動予測ポイントに接近、索敵を要請」
「闇よ!……見付けた、1時の方向だ!」
飛行したまま肩の小型ランプを点滅させたサイカが手にした懐中電灯を前方へと向け、首根っこを掴まれた翔星は闇に閉ざした壁の中を動く光を指差す。
「こちらでも確認、加速する」
「いや、間に合わん。獲物は譲る」
ネコ耳の付いた髪留めからバイザーを下ろしたサイカが飛行装置の出力を上げ、翔星は掴んだ手が離れないよう慎重に首を横に振った。
「了解した。虎影灯襖虚起動、梠接射出」
「気付かれたか! 俺を置いて先に行ってくれ!」
淡々と頷いたサイカが懐中電灯から伸ばした光の刃を飛ばし、突然軌道を変えた光源に気付いた翔星は床を指差す。
「理解不能、貴官の護衛が最優先」
「UFOのコアを潰せば全員の安全を確保出来る、やってくれ!」
「貴官の提案する合理性を受諾、一時離脱を実行」
静かに首を横に振ったサイカは、翔星の強引な理屈に頷いて手を放す。
「あんがとよ! すぐに追い付く、任せたぞ!」
「了解。瑞雲、出力最大」
足元にRガンを撃って手際よく着地した翔星が手を振り、敬礼を返したサイカは両脚の装置から大量の光の粒子を出しながら加速した。
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「コアの軌道を再予測、攻撃を開始……!?」
『『レイガン、ダブルファイア!』』
肩装甲の小型ランプを点灯させて懐中電灯から光の刃を伸ばしたサイカは、突然壁から現れた背中合わせのヒト型硼岩棄晶が放った電撃に襲われる。
「緊急回避……バランスに異常」
「……っと、間に合ってよかったぜ」
咄嗟に体勢を変えたサイカが急降下を始め、Rガンの反動を利用して跳び込んだ翔星は落下して来たサイカを両手で受け止めた。
「貴官の救援に感謝」
「気にすんな。それより、あれは何だ?」
自身の動作確認を終えたサイカが上目遣いで微笑み、慌てて目を逸らした翔星は降ろしながら目の前にいるヒト型硼岩棄晶を睨み付ける。
「UFO級のコアを防衛する急造の硼岩棄晶と推測」
「前後に顔と腕……まるで両面宿儺だな、スクナ級とでも呼んどくか?」
懐中電灯を構え直したサイカが淡々と推測し、翔星は二本足の下半身を共有して背中を合わせたヒト型硼岩棄晶に暫定の名称を付ける。
「了解、スクナ級で申請……接続途絶、申請は接続回復後」
「とりあえずここでの呼び名だ、あとは奴を駆除してから考える」
「了解した」
しばし天井を見上げて首を振ったサイカは、頭を撫でてからスクナ級を指差した翔星に頷きを返して懐中電灯を構え直した。
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「ベースはゲノム級と同じと言ったところか?」
「我々に対処するための急造と推測」
慎重にスクナ級を観察していた翔星はつい先ほど遭遇したヒト型硼岩棄晶を思い出し、サイカは類似点を指摘した映像を手のひらに浮かべる。
「ここに来てあんな化け物相棒を作るんだ、完全に対話の余地は無さそうだな」
「速やかな駆除に移行、コアの確認を要請」
「任せろ、闇よ!」
背中合わせの歪なヒト型に冷笑を向けた翔星は、光の刃を伸ばした懐中電灯を構えたサイカの要請に応じてスクナ級の周囲に闇を展開させる。
『『!!』』
「なっ!? 闇が……消えた?」
『『レイガン、ダブルファイア!』』
二対の両腕を同時に広げたスクナ級が周囲の闇を消し去り、一瞬だが呆然とした翔星の隙を突いて電撃を放った。
「くっ!」
「説明を要求する」
「闇を消された! 理屈は分からん!」
咄嗟にRガンの反動で後ろに跳んだ翔星は、バイザーを上げて聞き返すサイカに状況を簡潔にまとめる。
「過去のコア探知手段を検索……」
「コアがゲノム級と同じなら、隠したいのはバイパスだ。まずは仕掛けを見破る」
「了解、解析に専念する。タイガーアイ、出力最大」
天井を見上げて忙しなく目を動かし始めたサイカは、落ち着き払った翔星からの指示に頷きを返してバイザーを下ろした。
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「ちっ! 向かって来るか!」
『『レイガン、ダブルファイア!』』
「Rガン、ダブルファイア!」「梠接、射出」
スクナ級の接近に合わせた翔星が飛んで来た電撃を躱しながら熱線を撃ち返し、側面に回り込んだサイカも懐中電灯から光の刃を飛ばす。
『『ハッ!……!?』』
「踏み込みを足りなくした! Rガン、ダブルファイア!」
『『!?』』
それぞれの右手に生えた巨大剃刀を振って攻撃を受け流したスクナ級は、僅かに距離を狭めた翔星の熱線を肩に受けて動きを止める。
「今度こそ、闇よ!……!?」
『『ハッ!』』
「これでも消されるのか!?」
間髪入れずに闇を展開した翔星だが、両腕を広げたスクナ級に再び闇を消されて大きく後ろに跳んだ。
「コア探知妨害の解析は困難と判断、一時退却を具申」
「俺達の標的はUFOのコアだ、スクナじゃねえ」
「説明を要求」
エラーで埋め尽くされた観測結果を手のひらに浮かべたサイカは、大袈裟に首を振った翔星の言葉を理解出来ずに聞き返す。
「スクナは囮、構えばUFOのコアが逃げる。戦いながら次の策を考える!」
「了解した」
スクナ級の奥を見据えた翔星にサイカが頷きを返し、2人は武器を構え直した。




