↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/20

恋をし戦いをする少女のお話

「てかさ、忘れてほしくないって理由で、襲いかかったりする?僕がきたから良いけど、ター君めちゃくちゃ絶体絶命だったからね?」

「殺したりはしませんよ。死にかけた場合は寸前で攻撃をやめてますし。」

「もしかしてさ…ター君の事、好きなの?だから忘れないでほしいの?」

「いえ、違いますね。」

「ター君、残念だったね。花嫁候補が一人増えてすぐに一人消えたよ。」

「僕の花嫁候補を勝手に増やさないでください。」

「ごめんごめん。それで、何で来たの?」

「…恩返しをしたかったので。助けたのを忘れられてしまったら、恩返しじゃなくなる。」

「真面目なんだね、ミウちゃん。そうだ!ミウちゃん、僕達のチームに入らない?きっと楽しいよ!」

「いえ、猫は自由に生きるものなので。助けを求められたら“貴方は”助けますよ。貴方には、返しきれない恩があるので。」

「そう言えば…あの時、なんでポリモルフォスを出さなかったの?猫目だから、夜でも問題無いよね?」

「あたしのポリモルフォスは、貴方みたいな殴ってくる事がメインのカルディアには強いですけど、ナイトレイドみたいな遠距離攻撃には弱いんですよ。すぐにバラバラにされるので。」

「なるほどね…」

「ねえねえ、ミウ猫。」

「その呼び方、不愉快です。」

「良いじゃん良いじゃん。助けを求めたら助けてくれるんでしょ?」

「あくまで助けるのはこの人であって、貴方を助ける気はありません。」

「なんかさ、僕の周りの女子って、僕に辛辣じゃない?」

「自業自得じゃないですか?」

「助けてあげたのにこっちも辛辣…まぁいっか!これからどうする?帰る?」

「あっ、ちょっと待ってください。ミウちゃんにお願いがあるんだけど…」


 僕はミウちゃんにお願い事をし、ユウヤさんと共にあの家までの帰路を辿る。


「何をお願いしたの?」

「カゲトを見つけて欲しいって伝えたんです。見つけたら僕に知らせて欲しいとも伝えました。戦わないでっとも伝えました。」

「なるほどね〜。やっぱり、ター君頭いいでしょ?」

「そうですか?」

「うんうん、教師になれるんじゃない?リーちゃんよりも立派な教師にさ。」

「僕、他人と関わるの少し苦手なので、遠慮しておきます。」

「えぇ〜?勿体ない〜…でも、僕は君の意見を尊重するから、これ以上は何も言わないでおくよ。」

「ありがとうございます。」


 僕達は家に帰る。


「おかえり、タイガ、ユウヤ。で、どんなカルディアが相手だったんだ?」


 僕とユウヤさんはリーダーさんにポリモルフォスとミウちゃんのお話をした。


「なるほど…要するに、タイガだけの協力者ができた、と…」

「ん〜…まぁ、そんな感じだね〜てか、ミーちゃんはどこ行ったの?」

「買い物に行った。」

「ミーちゃん、道に迷ったりしてないかな〜?まぁ、してたらしてたでめちゃくちゃ面白いけどね〜」

「ミスズさん、方向音痴なんですか?」

「方向音痴と言うよりは…道草を食いすぎて良く分からん道に自分から突入する馬鹿だ。好奇心は猫をも殺すということわざがあるが、あいつはそれを知るべきだな。今日、道草を食っていたら、言っておこう。」


 私は今、お買い物に来ていた。いつもなら、綺麗なお花を見つけてはそれを観察していたり、美味しそうなご飯屋さんがあったら入ったりしている。が、今日こそちゃんと行く。じゃないと、そろそろリーダーさんに怒られかねないからだ。

 スーパーマーケットの中に入り、食材や日用品をどんどんカゴの中に入れる。リーダーさんは卵が好きだから卵パックを三つ入れて、ユウヤさんはバジルが好きだからバジルソースも入れて…あれ?タイガ君の好きな食べ物ってなんだろう…?この前、朝はトースト派って言ってたし、パンが好きなのかな?食パンを多めに二袋入れよう。

 なんやかんやで、私は買い物を済ませた。道草をせず、しっかりと買い物をしたんだ。きっと褒めてくれるだろう。

 その時だった。何かが私の死角から飛んできて、私の腕を掠る。私の腕に、一筋の血が浮かぶ。


「あんた…アンファンス?ジュネッス?どれでもいいや…」

「何ですか?」


 二十代くらいだろうか。目の下の隈は酷く、まともにご飯も食べていないのか痩せ細った体…


「私の恋人が…誰かに殺されたの…誰に殺されたかは分からない…でも、私と同じ『カルディア』を持つ者に殺されたの…!あんたからは、カルディア持ちの匂いがする…!」

「…私と戦おう、って事ですか?争い事は嫌いなんですけど…」

「知らないわよ…!私は恋人を殺されたのよ!私の全てが…!許さない!許さないわ!『エラストス』!!!」


 その時、女性から半透明の薄紫色の煙が放たれる。無生物型のカルディア…


「私は殺してませんよ。殺したのはきっと、カゲトって言う殺人鬼です!」

「そんなの知らないわよ!嘘かもしんないじゃないっ!」


 女性は近くのゴミ捨て場にあった、潰れた空き缶を投げてきた。私はそれを体を捻り避ける。缶が地面に落ちた。その時、缶は不自然なほどに私の方に接近し、私の膝裏に当たった。私はあまりの衝撃に、片膝を地面に付ける。

 恐らく、さっきの攻撃もこのような感じなのだろう。何かを投げて、そして、私の方に接近させた。磁力関係?それとも、思った通りに飛ばす能力?謎が多すぎる…私はハスマを召喚した。


「やっぱり持ってるじゃない!カルディア!あんたが殺したのよ!このクソ野郎がっ!」

「私は殺してません!人違いです!一旦落ち着いてください!」

「うるさい!黙れっ!私の恋人の怨み!ここで晴らしてやる!」


 女性は、今度は近くにあった車を蹴った。動く訳が無い。私はそんな事を思った。カルディアが攻撃するのならまだしも、生身の人間が車を攻撃するなんて…何をしたいのか、その時は私は理解できなかった。

 だが、その時、車は、まるでスーパーボールのように、素早く真っ直ぐ私の方に飛んできた。咄嗟の出来事だったが、私はハスマの拳を車に当てさせ、車を裂けさせた。その時、私は見た。ハスマの拳が、押し返されたように、不自然に上に上がっている事を…


「チッ…!なら、これはどうだ!」


 女性は、今度は近くのゴミ袋を殴って、こちらに投げてきた。偶然なのか、策略なのか…ハスマの能力は、触れた物を裂けさせる力。車や生き物などは、外からそれを覆う外装や皮膚が中身とくっついているから、中身ごと裂ける。だが、ゴミ袋の場合は話が別だ。ゴミ袋を裂けさせた所で、中身はくっついていないため、中身まで裂けさせる事ができない。

 ハスマの拳のラッシュがゴミ袋をタコ殴りにした。すると、ゴミ袋は天高く飛び上がった。おかしい。ハスマには、それほどのパワーは無い。いや、あるにはあるのだが、あそこまで強力なパワーは無いのだ。恐らく、純粋なパワーだけなら、人型のカルディアでも下の方だ。だから、ここまで吹き飛ばす力はない。カルディアは基本的には進化も成長もしない。だから、使い手の技術力が求められる。考えれば考えるほど、頭が痛くなりそうだった。こんな時、タイガ君なら、どうする…?

 タイガ君なら…まず、事実を並べよう。その一、相手は無生物型のカルディア。その二、地面に落ちた物を私に当てた。その三、車を生身で蹴り飛ばした。その四、ハスマがゴミ袋を簡単に吹き飛ばした。

 ここから分かるのは、あの『エラストス』というカルディアは、物体そのものに何らかの影響を与えるカルディア。なら、どんな効果を与える?軽くする?そしたら車を蹴り飛ばしたのも納得だけど、缶の説明ができない。最初に考えた好きな方向に飛ばせる?そしたらゴミ袋が吹っ飛んだ説明ができない。磁力も同じ理由でできない。

 その時、私の頬に缶が当たった。


「何考えてんだよ?!気持ち悪いんだよ!この野郎!」


 缶は私の頬に当たった後、私の方には来ず、そのまま地面へと不自然に落ちていった。だが、落ちに行った方向は、女性の方向だった。ハスマの拳、缶の機動…もしかしたら…!


「分かりました!貴方のカルディアの能力が!」

「何ぃ?!」


 女性は片眉を上げて、苛立ちを顕にして言う。


「貴方の『エラストス』の能力…それは『弾性』です!元に戻ろうとする力、それが弾性!缶が私の膝裏に来た件、今の空き缶の件、ハスマのゴミ袋の件、全て説明ができます!元の形に戻ろうとするが、当たっている物が邪魔となる。だから、自分の体を弾かせ、当たっている物から遠ざけ、元の形に戻ろうとする!それが…貴方のカルディアの能力!」

「あんた…何なんだよ!何者なんだよっ!」

「カルディアイ所属、三番目の女…!虹断魅鈴!ハスマを使うアンファンスです!以後、お見知りおきを!」


 ハスマが拳を握る。


「ルッキズムとか、そういうのは言わないでくださいね?私、美容とか、そういうのはあまり意識していませんが…だからって、顔を攻撃されるのは、少しイラッときます…!貴方も女性なら分かるでしょ?女にとって、顔は武器です!好きな人の心を射る、一つの武器になります!恋人が居る貴方になら、理解できるはずです!」

「うるさいわねっ!それが何よ!何だって言うのよ!」

「私は、タイガ君みたいな慈愛も、リーダーさんみたいな責任感も、ユウヤさんみたいな寛大な心もありません。なので、嫌な事をされたら、お返しをしたくなるんですよ…!私にも好きな人が居るんですよ…優しくて、強くて、私の命を守ってくれた人が居ます…その人の心を射るには、私は性格が悪いから、顔や体で対抗する必要があります…その一つを、貴方は傷つけた。私は許しません。女性の恋路を邪魔する奴は、乙女の敵です!一回、頭を冷やしてくださいっ!」


 ハスマが首を回す。肩を回す。手首を回す。私はゆっくりと、女性に近づく。


「来るな…!こっちに来るなぁ!」

「貴方のカルディアが、その煙なら、煙に触れた物を弾性を強くするんでしょう…そして、弾性を強くすると同時に反発力も格段に強くしているのでしょう…!種も仕掛けも分かったマジックはつまらないように、貴方のカルディアももう強敵ではありません。対処法は見つかっています!」

「なら…その対処法って奴で、私を倒してみやがれっ!阿婆擦(あばず)れ女っ!」


 女性は、ゴミ捨て場に捨てられていた、割れた皿の破片を投げてきた。ハスマがそれを殴る。ほんの少し、拳から血が出るか、皿の破片は一瞬にして吹き飛ぶ。


「こちらからも衝撃を与え弾かせれば、多少のダメージはあれども、対処可能です!」


 私は女性の方に走った。ハスマも女性に接近する。そして、ハスマの手刀が、女性の額に当たる。女性は簡単に吹き飛び、近くの塀に背をぶつける。


「愛していた人を奪われる感覚は、きっと辛い物でしょう。私は同情する事でしか、貴方に寄り添えない。でも、貴方に寄り添う必要はありません。恋人を失ったからって、赤の他人を巻き込んで良い訳は無い。私が、貴方の無念も晴らします。なので、私を信じてください。それに、私、どうやら貴方よりも強いっぽいので、任せるのが適任だと思いますよ!」


 私は女性にニコッと笑みを浮かべた。


「…純粋無垢ね…ごめんなさい、少し、周りが見えていなかったみたい…」

「こちらこそごめんなさい。」

「貴方が謝る事は無いわ。貴方は何も悪くない。悪いのは私と、私の恋人を殺した殺人鬼…」

「お名前、聞いてもいいですか?お友達になりたいです!喧嘩するほど仲が良いって言葉もありますし!」

「お人好しね…私の名前は広原(ひろはら)天子(てんし)。」

「テンシさん…良い名前ですね!後、私よりもお人好しの人を、私は知っていますよ。私が好きな人、私なんか比べ物にならないぐらいのお人好しなんですよ!」

「その恋情、実る事を願っているわよ。」


 テンシさんは立ち上がり、帰っていく。私は「ふ〜」と息を吐く。


「一件落着!って、あっ!買い出しの帰りだった!食べ物が腐っちゃう!早く帰らないと!」


 私は走って、あの家に帰る。


「ただいま帰りました〜!」

「おかえりなさい…って、怪我してますよ?!大丈夫ですか?今、包帯を持ってきます!」


 タイガ君はそう言い、そそくさと救急箱の方へと走っていった。リーダーさんとユウヤさんが近寄って、私が持っていた荷物を持ってくれた。


「怪我人はじっとしておけ。」

「そうそう。後、お買い物お疲れ様。ほんの少し道草を食ってた?」

「ほんの少しも今日はしてません!」


 リーダーさんとユウヤさんがキッチンの方に行く。間もなくして、黒い髪に赤いメッシュ、ルビー色の瞳の少年…タイガ君が私の元に近寄り、私の体に包帯を巻く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。