正直者が馬鹿を見る世界でも迷わない少年のお話
僕は目を瞑る。もう一度、話をしよう…
「話をしよう、ドロフォノス。」
次に僕が目を開ける。すると、そこは、ロンドンのような街の、路地裏のような場所だった。目の前には…ドロフォノス。
「君が言う『目覚め』って、何?」
「お前はXXXXXXXXXXXの末裔だ。お前にはXXの才能がある。この言葉が聞けないなら、まだ、お前は本当の意味では、目覚めていない。」
「…ねぇ、一つ、聞きたい。」
「なんだ?」
「君は僕の何なの?心の具現化?」
「あぁ、私はお前の心の形。そして、お前の願いを叶える、唯一の存在だ。」
「じゃあ、次は確認。君は…兵器なの?人を殺せる、普通じゃない兵器なの?」
「…『カルディア』は『心の具現化』。だがそれと同時に『魂の本性』でもある。私が人を殺せる力を持っているのは、お前の魂に刻まれた、過去の因縁だ。だから私は、本来はお前の兵器だ。」
「僕は君が好きじゃない。人を殺すためのモノは嫌いだもん…多分、今の僕の精神状態は不安定だ。だから、間違える。僕が間違える事を、君は許してくれる?」
僕は現実世界で目を覚ます。
「やっぱり、君は苦手だ。でも、手伝って。来い!『ドロフォノス』!!!」
ドロフォノスを召喚する。
「死ね…!死ね!死ねェェェ!!!」
「誰も死なせない!僕は、この僕の手の届く範囲の人、全員を救う!誰一人として死なせない!世界の全ては守れないし、世界を良くするなんて、一人じゃ無理だ!でも…手の届く範囲だけでも、僕の正しさで埋め尽くしてやる!」
ドロフォノスが男の人に近づく。男の人がドロフォノスに発砲する。ドロフォノスの右腕のハサミが、弾丸を切り落とす。ドロフォノスは男の人を蹴り飛ばす。
「この…クソガキがぁ!」
男の人が発砲した。だが、銃弾は、僕に届く前に、地面に落ちる。
「カルディアの射程距離が五十メートル弱…なら、ナイトレイドのあの針は、明らかに、アンファンスから五十メートル以上離れて僕に迫ってきた。そこから導き出せるのは…カルディア自体の射程距離は五十メートル。でも、そのカルディアから放たれるカルディアの一部である、ナイトレイドの針や、君のその銃弾は、カルディアから五十メートル弱まで離れる事ができる…そう考えたら、納得行く。」
「…確かに…」
「なんなんだよ…!なんなんだよ、お前!」
「…タイガとドロフォノス。裁判官ごっこの、裁判官役だよ。子供騙しの遊びに付き合ってよ…僕の偽善にも、付き合ってよ。僕の…『裁きの時間』に付き合ってよ。君の罪状は、この世界の闇に堕とされた事…無罪だけど、刑を執行する。」
ドロフォノスは近くにあった小石を拾う。そして、それを投げる。それは真っ直ぐ進み、男の右肩に当たる。続けて二投目。それは男の左肩に当たる。男は、両肩を同時に負傷した。
「刑の執行を終えた。その肩は、病院に行ったら治してもらえるよ。それぐらいの力に抑えたから。」
「俺を否定できねえんだろ…!なら…俺の気持ちも分かるはずだ…!なんで…!まだ!世界に馬鹿だと嗤われても、前を見れるんだよ?!俺は…戦争に行って、大量に罪の無い命を殺した。そして母国に帰ったら、父も母も、女房も殺されていた…もう…前なんか見えねえよ…」
「…前なんか、見なくていいですよ。目は顔の正面に付いてるけど、体と首の向きさえ変えれば、左右も、上下も、後ろも向ける。人間は万能じゃない。見たくない物は見なくてもいいんだよ?僕は、馬鹿だから、馬鹿だと嗤われても平気だもん。それに、馬鹿を見ているからこそ、助ける事のできた命だってある。でも、決して、僕は前を向いているんじゃない。常に、僕の見たい方向だけを、見ているんだよ。」
「…お前、名前は…?」
「タイガ。人鬼泰我。」
「…俺、今からでも、やり直せると思うか?」
「僕はまだ高校二年生だよ?人生相談をこんな子供にする?…僕は、やり直せると思うよ。本当に変わりたいのなら、人の心なんていくらでも変わる。やり直せるかどうかは、貴方が本当にやり直したいなら、できると思う。」
「俺はルイって言うんだ。ベルナール・ルイ。お前みたいなガキに説得されるとか、ダセエな…でも、目が覚めたよ。俺、この街で、やり直す事にしてみるよ。」
「なら嬉しいです。」
僕はニコッと笑みを浮かべた。ルイさんはどこかに歩いて行った。ルイさんが歩いて行った方向には、ハローワークがある。
その時だった。
「時には拳を、時には花を…本当に僕らのチームに入らない?僕、めちゃくちゃ君みたいな子が好きなんだけど?」
「お前みたいな強い人材、私達的にも居てほしいんだぞ。」
リーダーさんとユウヤさんが来た。
「リーダーさんとユウヤさん!なんでここに?」
「最後の勧誘だ。」
「タイガ君だっけ?ならター君だ。ター君、僕達に協力してくれない?それに、カゲトを殺さずして止める事ができて刑務所の中に入れれたら、あいつがこれから殺す事になる命も助けれるよ?」
「…人殺しの手伝いはしません。でも、僕は誰かの命を救いたい…僕をチームに入れたら、貴方達がカゲトさんを殺そうとした時に止める事になりますよ?それでもいいんですか?」
「私はタイガ君と一緒に旅したいよ?」
「ミーちゃん、ター君に恋でもしてるの?」
「違います!戦力的に頼もしいからです!」
「…構わない。止めたければ止めろ。」
「リーちゃんがそんな事言うなんて珍しいね?」
「考えてみろ?殺したい奴は三人、殺したくない奴は一人…どう考えても、止め切れる訳無い。」
「止めてみせます!」
「あはは!やっぱりこの子面白いわ!」
「…止める気満々って事は…一緒に来てくれるんだな?」
「はい。それに、この街は、何かあったらルイさんが守ってくれると思うので!」
「さっきまで戦ってた人を良くそんなに信頼できますね!」
「あの人は悪い人じゃない。闇という目隠しをつけられて歩いていたから、怖くて、暴れようとしていたんです。今、その目隠しが無いあの人なら、今度こそ、争い以外の平穏と幸せを、馬鹿を見る事無く掴めると思いますよ?」
「ター君、本当にお人好しだね?」
「僕は自分の思った事をそのまま言っただけですよ?」
「タイガ、それをお人好しと言っているんだ。」
翌日。僕は学校に退学届を出した。学校側から理由を聞かれた。僕はそれに対して「自分の居場所を作ってくれる人を見つけました。僕のやりたい事が分かりました。夢が見えそうなんです。」と言った。
学校から出る。
「本当に良かったのか?学校を辞めるって…そんな簡単な話じゃないだろ?」
「リーダーさん、良いんですよ。それに、あの学校に僕が残っても、僕は平凡な人間として終わるだけです。平穏は好きですが、平凡はあまり好きではないので。」
「ター君の性格を大体理解してきたよ。」
「そう言えばミスズさんは?」
「あの小屋で待ってる。」
リーダーさんとユウヤさんは僕の前を歩き、僕は二人の後に着いていく。道中、ナイトレイドの攻撃から守った猫ちゃんが居た。
「あっ…久しぶり、でもないよね…どうしたの?」
その猫の口には、一本の花が咥えられており、それを僕の足元に置いた。僕はしゃがみ、それを拾う。
「これ、僕に…?君、優しい猫ちゃんなんだね!ありがとう!大事にするよ!」
「タイガ、何をしている?置いていくぞ。」
「あっ…ごめんなさい!それじゃあ猫ちゃん、バイバイ。」
僕は猫ちゃんに手を振り、二人の後を急いで追う。そして、約二十五分後、あの小屋に着く。
「という事で、新メンバーが来た事だし、改めて自己紹介しよっか!ミーちゃんから時計回りで!」
「虹断魅鈴!十八歳!朝はご飯派です!」
「人鬼泰我と申します。年齢は十七歳。朝はトースト派です。よろしくお願いします。」
「凜海楓。二十七。朝はカップラーメンで済ませる。」
「最後は僕ね?朝焼夕焼。二十六。朝は食べない派。よろしく!」
「そう言えば、チーム名をまだ言っていないな。私達のチーム名は…『カルディアイ』だ。」
「ようこそ、ター君、カルディアイに。今日から一緒に頑張って行こう?」
「はい、これから宜しくお願いします。」
その日の午前十一時、僕達は電車に乗り、遠くの街に行く。片道二時間十五分もかかった。街の名前は…栄航町という場所だった。
駅にあったパンフレットを手に取る。
「栄航町…昔、船が栄えていたからその名を付けられた。今では海鮮系の食事が多く美味いため、知る人ぞ知る観光スポットになっているらしいです。」
「へぇ〜。お昼ご飯は海鮮にする?」
「海鮮か…」
「いいですね!なんか良いお店とか載ってないんですか?!」
「えっとね…この駅の近くに、評判が良くて海鮮丼が有名なお店がありますよ。」
「いいね!そこ行きましょ!」
「悪くないね〜!リーちゃんもそれでいいよね?」
「あぁ。」
僕は先を歩き、その海鮮丼屋を目指す。そして、歩く事約八分、その海鮮丼屋「クラボウズ」に到着した。
「ここです。」
「思ってたよりも和風な感じの店だな。」
僕達は店内に入る。平日と言えど丁度お昼ご飯の時間帯。店は結構賑わっていた。その時、看板娘さんらしき女性が近寄ってきた。
「四名様ですか?」
「あぁ、四人だ。」
「えっとですね…奥のあそこのテーブル席にどうぞ!ご注文が決まりましたらお呼びくださ〜い!」
看板娘さんは店の奥の方に行った。僕はメニュー表を机の真ん中に置く。数分後、それぞれのメニューが決まった。
「あの〜すみませ〜ん!」
「はい、ご注文はお決まりですか?」
「えっとね〜、僕はこの鉄火丼で。」
「私はイクラ丼を頼む。」
「私は海鮮丼をお願いします!」
「僕は海鮮チラシをお願いします。」
「ご注文を繰り返します!鉄火丼が一点、イクラ丼が一点、海鮮丼が一点、海鮮チラシが一点、お間違い無いですか?」
「はい、大丈夫です。」
「はい!かしこまりました!少々お待ちを!」
看板娘さんは再び店の奥の方に行った。リーダーさんとユウヤさんは怖い顔をしていた。
「二人とも、どうかしたの?」
「ユウヤも分かったんだな…」
「当たり前でしょ?僕はアンファンス歴六年。他のアンファンスの気配なんて分かるよ。」
「あの看板娘さんも…アンファンスなんですか?」
「いや、違う。あの娘と言うよりも…厨房に立っている人間がアンファンスの可能性がある。」
「でも、特に危害を加えてこないのなら、放っておいても大丈夫ですよね?」
「まぁね〜。僕達だって戦闘狂ではないんだし?殴り合いをしないで終われるのならそれで終わらせたいよ。」
「アンファンスの気配なんてあるんですか?」
「まぁな。私は七年、この馬鹿は六年、カルディアと共に生きている。それぐらい生きていれば、パッとその場を見ただけで、どこの誰がアンファンスかなんて分かる。ミスズは一年、タイガは数日。ミスズですら分からないんだから、タイガが分かる訳無い。」
「面と向かって言われると…少し傷つきます…心が…」
「悪いが事実だ。」
「ター君、諦めな?リーちゃん、現実主義者だから。当たり前の事は躊躇せず言うタイプだから。そのせいで、友達も少なくて…ぎっ?!痛っ?!」
「余計な事を言うな。」
「ユウヤさん、たまにリーダーさんの地雷を踏み抜くんですよ。その度に、足を踏まれたり、締め技をされたり…反省しないんですよ、あの人。」
「なるほど…あっ…」
「どうかしたか?」
「いえ…お二人のカルディア、まだ見た事も聞いた事も無かったなって。」
「あれ?そうだっけ?」
「確かにな。まぁ、見せる機会があれば見せてやる。何の目的も無く公共の場で使おうものなら、ナイトレイドとほとんど変わらないからな。包丁を持ちながら歩くものだ。」
「名前だけでも教えてくれませんか?」
「僕のカルディアの名前は『トレケイン』だよ〜。」
「私のカルディアの名前は『ケビムル』だ。」
「どんなカルディアなんですか?」
「名前だけと言ったのはどこのどいつだ?」
「まぁまぁ、リーちゃん。仲間なんだし良くない、トレケインは動植物タイプ、ケビムルは人型タイプ。能力とかは…まぁ、見てのお楽しみって事で。」
「今の会話で思い出したが…タイガ、君は、戦闘歴でもあるのか?ナイトレイド戦を見ていると、そうとしか思えない動きをしていたぞ?」
「どこから見てたんですか?!」
「君の足元に攻撃が来た時。」
「本当に最初の方じゃないですか!」
「気にするな。カゲトを探していたらアンファンスの気配を三つ感じたから行ったら、お前が居たんだ。様子見をさせてもらった。」
「まぁ良いですけど。戦闘歴なんて無いですよ。喧嘩も碌にした事無いので…」
…ん?三つ?と言う事は、あの場にアンファンスが三人居た?一人は僕、一人はナイトレイドのあの人…もう一人は…?もしかして、あのサラリーマンみたいな人…?まさか…そんな訳…




