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出会いの連鎖の少年のお話②

 ドローンのようなカルディアは空高くに上がっていく。針を飛ばしながら…ドロフォノスは針を叩き落としながらドローンを追う。だが、遠くには行けない。理由は簡単。今は夜だ。上に行ったら、見づらい。そしたら、攻撃も防ぎにくい。

 僕は走り出した。空を飛ぶと言う事は、室内ならこっちが有利になるはずだ。飛べない環境に誘い込む。あれを撒けるならそれが百点だけど、その百点はきっとテストで百点を取るよりも難しい。室内に誘い込めれたら七十点だろう。

 そして僕は走り続けて、廃ビルの中に入った。下手に人が居る場所に入れば、赤の他人に被害が出る。そんなのは絶対にダメだ。他人に被害が出た瞬間、間違いなく赤点だ。僕はそんなのは許さない。

 廃ビルの中は静かだった。僕は忍び足で歩き、辺りを警戒する。スマホのライトは付けない。あのレンズ…もしかしたら、アンファンスと視覚を共有している可能性があるからだ。そんな中、スマホのライトを付けたら、光で位置がバレる。だから視界の悪い中、カラスぐらいの大きさのドローンに警戒する形になっている。

 廃ビルに入ってから、約二十分。あのドローンは見えない。針も来ない。これは百点を期待していいかもしれない。そして、僕は歩いていて、窓の前を通った。

 通ってしまった。それが失敗だった。窓の外に、あのドローンが見えた。そして、針が放たれた。ドロフォノスの蹴りが針を蹴り飛ばす。危なかった。ドロフォノスを出して動いていなかったら、今頃僕はあの針に刺されていた。僕はすぐにその場から離れた。

 そして、足音が聞こえ始めた。恐らく、あのドローンのカルディアを持つアンファンスだ。暗闇のせいで良く見えない。


「見つけたぁ!」


 そこにいるそいつがそう言った。その瞬間、針が僕の方に飛んできた。なんでそっちは見えているんだ?!ドロフォノスのハサミで、針を受け落とす。


「今ぁ、不思議にぃ、思ったぁ?この僕ちんのぉ、『ナイトレイド』のぉ、レンズはぁ、暗闇でもぉ、見えるんだよぉ!」

「なんで僕を狙う?」

「うぅ〜ん、そうだねぇ。僕のぉ、ナイトレイドさぁ、一般人にはぁ、見えないからぁ、見える人にぃ、見せてぇ、どれくらいぃ、強いかぁ、知ってほしいのぉ!」


 針を再び放ってきた。僕は走り出した。僕に当たりそうな物はドロフォノスのハサミで叩き落とす。そして、僕は廃ビルの裏口を見つけ、そこから出る。だが、まだ走る。

 僕の背後の当たるギリギリの場所に、針が飛んできて、地面やら近くの塀やらに突き刺さる。その時、僕の走る方向に猫ちゃんが居た。野良猫だ。ここは一本道。このままいけば、あの猫ちゃんに針が刺さっちゃう…!そんなのはダメだっ!尊い命に危機が来てしまう。

 僕は立ち止まり、ナイトレイドの方を向く。ナイトレイドは、少し離れた位置に居た。直線距離は、およそ六十メートル。このまま一発殴って気絶させれば、何とかなるか…?


「鬼ごっこはぁ、もう終わりぃ?」


 二十代前半であろう、小柄な男性はそう言い放つ。そして、その手の中には…針があった。近づきすぎると、恐らくあれで刺される。

 僕は戦いなんてした事無い。ミスズさんのように、上手く立ち回れない。その時、ナイトレイドが針を放ってきた。ドロフォノスは、拳でそれを全て真下に殴り落とす。


「僕さ、こういうの嫌いなんだよ。だからさ、やめない?君の力はもう見たからさ。」

「違うんだよぉ、お前さんはまだぁ、生きてるじゃないかぁ!ダメなんだよぉ!死んでくれないとぉ!僕の『ナイトレイド』はぁ!弱いのかなってぇ!思ってくるからぁ!早く死んでよぉ!」


 仕方ない…ドロフォノスはそれに近づく。もう、殴って気絶させるしかない。だが、その時だった。ドロフォノスは、およそ五十メートル地点の場所で、ピタリと止まる。


「…なんで…」

「あれぇ?知らないのぉ?カルディアはぁ、使い主からはぁ、五十メートル弱しかぁ、離れられないんだよぉ?」

「…なんでミスズさん説明してくれないの…!めちゃくちゃピンチなんだけど…」

「何か言ったぁ?」

「いや、こっちの話です。気にしないでください。」

「分かったよぉ。」


 あの人、恐らく、カルディアの力のせいで自惚れただけで、悪い人では無い気がする。そしてその時、ナイトレイドの針を出す速度が上がる。

 あまりの速さと多さに、僕は対処しきれなくなった。ドロフォノスは防御の姿勢になる。すると、ドロフォノスの体に針が刺さり始める。僕の体にも、ドロフォノスの針が刺さった場所と同じ場所に傷ができる。このままじゃ、やばい…!

 その時だった。


「にゃ〜お?」


 あの猫ちゃんが近づいてきていた。


「んん?猫ぉ?邪魔だねぇ!」


 ナイトレイドが猫に向けて針を放つ。

 僕は、生身の僕の手で針を受け止める。手のひらに針が刺さる。だが、そんなのは眼中になかった。


「貴方、今、何をしました?」

「んん?どうしたのぉ?たかがぁ、猫でしょぉ?一匹ぃ、死んだぐらいぃ、気にしなくてぇ、良くないぃ?」

「…黙れよ。」

「君ぃ、今ぁ、なんて言ったぁ?」

「黙れって言ったんですよ。クソ外道が。」

「防ぐ事しかぁ、できないぃ、クソ雑魚にぃ、今更ぁ、何ができるのぉ?」


 ドロフォノスを僕の近くに戻す。僕は近くの小石を拾い上げる。それをドロフォノスに投げ渡す。


「教えてくれてありがとう。五十メートル以上遠い相手には攻撃できない、それがカルディア。だから、君は五十メートルよりも遠くから攻撃できるから強い、って?」

「うんうん、そういう事だよねぇ!」

「…馬鹿なんですね、貴方。」

「…はぁ?」

「ドロフォノスが近づけなくても、攻撃手段はありますよ。野球、知っていますか?」


 ドロフォノスは小石を、まるで投手のように投げる。そして、小石は、そいつの肩にめり込む。


「なぁぁぁにぃぃぃ?!痛いぃぃぃ!痛いよぉぉぉ!!!何するんだよぉ?!」

「『裁きの時間』を始めよう。君の罪状は…罪の無い猫を自分勝手な理由で殺そうとした事。」


 僕はその人の方向に走った。


「来るなぁ!!!近寄るなぁぁぁ!!!」


 ナイトレイドが針を放ってくる。だが、痛みに支配されたか、針は遅く少なく、単純な動きをしていた。ドロフォノスはそれを殴り返し、針はその人の太ももに突き刺さる。

 そして、僕とその人との距離が、五十メートル以内に入った。そして、ドロフォノスの拳が、アッパーカットを決める。その人は軽く吹っ飛び、気絶する。


「人を殺しているかもだから、警察呼ぶね。」


 僕は警察を呼んだ。そして、猫ちゃんの様子を見た。僕は、傷ついていない方の手で、猫ちゃんに手を振る。そして、帰路を辿る。お弁当はまだ持っている。

 僕の体はボロボロだった。色々な場所に小さな穴が空いており、片手の手のひらには大きな穴が空いていた。僕は、道端で倒れてしまった。僕の目線の先に映ったのは…長い紫色の髪を持つ、怖い顔をした女性だった。


「タイガ。良くやった。お前は良くやったのだ。」

「ドロフォノス…と言う事は、ここは夢の世界?なんか、懐かしい感じがするよ。会ってないのなんて少しの間だったのに。」

「タイガよ、お前は私に何を望む?人を殺す力か?人を守る力か?」

「…僕はただ、目の前で誰も死なない、平穏な生活を送りたいだけ。君に望むのは、あまり無いから。強いていえば、僕と、僕が守りたいモノを守ってほしい。」

「…まだ目覚めないか。」

「え?」


 次の瞬間、僕は目を覚ました。木の床、見覚えのある布団…え?なんであの山の奥の小屋に居るの?

 僕は体を起こす。体が痛い。すぐにまた横になった。痛む体を抑える。まぁ、針が刺さったのと同じダメージがあるんだから仕方ないといえば仕方ないけど…


「起きたか。」


 聞き覚えのない声が聞こえた。僕はその方を向いた。そこには…紫色の長い髪に、空色のジャージを着た、女性だ。


「えっと…貴方は?」

「楓(かえで)だ。凜海(りんかい)楓。好きに呼べ。」

「カエデさん…ミスズさんが言っていた?」

「あいつと知り合いなのか?」

「はい。」


 僕はカエデさんに、ミスズさんとの会話の内容を詳しく簡単に説明した。


「なるほどな。」

「それで、なんで僕をここに?それと、ミスズさんは?それに、もう一人のユウヤさんって言う人は?」

「ミスズは自室でまだ寝てる。ユウヤはまたカゲトを追っているんだろう。君を連れてきたのは、君を勧誘しようと思ったからだ。どうだ?私達のチームに入る気は無いか?」

「復讐を目的とするチームに入る気はありません。」

「連れない事を言うんだな。助けてやった恩を忘れたとは言わせないぞ?」

「悪いですけど、その恩は仇で返します。人殺しの協力なんてしません。僕は誰の命も殺したくないので。」

「猫を殺されかけて本気で怒ってたからな。説得力はある。納得はしないがな。」

「…見てたんですか?」

「あぁ。お前の活躍を見ていたから、こうやって勧誘しているんだ。」

「見てたなら助けてくれても良かったんじゃないんですか?恩を売るなら、少し遅かったんじゃないんですか?」

「お前が敵か味方か分からない状況で助けろ、と?ミスズならしただろうが、私やユウヤはそこまで甘くも優しくもない。現実を見ろ、ガキ。社会ってのは、自分が苦しめば苦しむほど、誰も助けてくれないもんだぞ。」

「知ってますよ…この世界には、泣いている子供を平気で無視し、差し伸べた手を平気で振り払い踏み付ける、そんな人間が居る世界です。でも、僕はそれでも、泣いている子供の話を聞き、差し伸ばされた手を優しく両手で包み込む、それができる人間が居る事を信じています。」

「夢を語るな。私は現実を見ろと言ったんだ。そんな人間は居ない。どんな人間も、自分の事で手一杯だ。今の時代は特にな。それなのに他人に手を回す奴なんて、馬鹿な偽善者だ。」

「貴方の言い分は分かりました。どうやら僕は、とことん貴方と気が合わないようです。居ないと言うのなら、なってみせますよ。僕がその、馬鹿な偽善者に。」

「無謀者め…いつか、醜い人間に地獄に堕とされ骨の髄までしゃぶられるぞ。」

「それで誰かが幸せになるのなら、喜んであげますよ。」

「…君、狂ってると言われた事は無いのか?」

「う〜ん、その子は狂ってるんじゃなくて、軽く壊れてるだけじゃない?」


 また新しい声が聞こえた。声の方を振り向くと、そこには…夕焼け色の髪と瞳を持つ男性が立っていた。


「やぁやぁやぁ初めまして。副リーダーの朝焼(あさやけ)夕焼(ゆうや)です。よろしくね?」

「よろしくって…僕、貴方達の仲間じゃありませんよ…」

「えぇ?僕らのチームに入らないの?君、さっきから聞く感じ、人助けしたいタイプでしょ?」


 ユウヤさんは僕に近づくや否や、肩を組んできた。友達のような距離感で…正直、こう言う人は少し苦手なのに…


「おいユウヤ、少し馴れ馴れしくはないか?」

「リーちゃん、別にいいでしょ?それとも、リーちゃんは距離を縮められないから拗ねてるの?可愛いね〜?」

「ユウヤ、ふざけるなよ…」

「…リーちゃん?」

「ん?リーダーだから、リーちゃん。ミスズちゃんはミッちゃん。ね?呼びやすくて可愛いでしょ?」

「はぁ…」

「君、良い子でしょ。肯定から入る子の相場は良い子って決まってるもん。」

「ユウヤ、離れろ。そいつ、ユウヤみたいなタイプが苦手だと思うぞ。」

「えぇ〜?まぁ、それなら仕方ないか〜。」


 しっかり者のリーダーさん、明るく周りを振り回すユウヤさん、天然でおっちょこちょいなミスズさん…確かに、カエデさんがリーダーになるべきだ。

 そして、その時だった。


「あっ!リーダーさん!ユウヤさん!あれ?タイガ君も居る?!どうして?!」

「ミスズ、少し黙ってろ。後で事情を話す。話を戻そう。もう一度言う。チームに入らないか?復讐の手伝いはしない。こちらは復讐以外にもカルディアを悪用する奴を成敗したいし、君はカルディアを悪用する奴から罪の無い命を守りたい…利害の一致はしている。」

「あっ、報告ね。僕たち、明後日には違う町に行くから。カゲトが次の街に行くまでには一ヶ月の空白が開く。奴はその空白期間で人を殺し、目を奪う。そして、明後日はその一ヶ月目って事。行く方向は、遠くにいる知り合いのカルディアの力借りたら分かるんだよね〜ざっくりとだけど。」

「…僕は貴方達と手を組むつもりはありません。」

「まぁまぁそんな事言わないでさ。明日、結論を出しても良いでしょ?時間は明後日まであるんだし。」

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