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【完結】明日からモンスターまみれの世界〜剣道家たちが世界を救う〜神からもらった能力がチートすぎた件  作者: opocho


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大会最終日



大会三日目、最終日を迎えた。


いつものように朝の素振り。

隣にはアキも並んでいる。

昨日は遅れたから今日は早くから待っていてくれたらしい。


「昨日が早すぎだったんですね」

「んー。そうだな」

「私、何時から待ってたと思います?」

「え、そうなの? なんかごめん」


頬を膨らませてアキが抗議してくるが、そもそも一緒に朝練するとか約束をしてなかったんだけどな。


昨日と同じように、朝陽を浴びながらポニーテールを揺らして素振りをする姿に思わず見惚れてしまう。


「まあ、会えたからいいんですけどね」


……相変わらず勘違いしたくなるよな。

「もしかして?」で撃沈した男は何人いるんだろう。


オレは勘違いしないように気をつけよう。

せっかく仲良しなのに台無しになったら悲しすぎる。

オレは今の幸せな距離感で満足すべきだ。

勘違いしちゃだめだ。


ひと通りの朝のルーティンをこなして練習を切り上げることにした。


「ナツ先輩の出番が楽しみだなあ」

「大将のオレに出番があるってことは後がないってことでもあるからな。できれば出番は少ない方がいいだろ」

「でもみんなナツ先輩を観に来てますからね」


オレを先鋒にしてほしいという意見も確かにある。

でもそれはチームとして無しだ。

万が一があったら詰むからな。

それにたった一人が延々と5人抜きして仮に優勝したとしたらそれはもう団体戦じゃないだろ。


一昨日の初日はシードのオレたちは試合がなかった。

昨日は二試合。

今日の最終日、まず三試合勝てればやっと各パーツの代表。

それでようやくベスト8だ。

そこから続けて三回勝てば優勝。

出場校が多いオープン大会の王龍旗は日程が進むほど試合数が多くタフになる。

今日の六試合、体調コントロールはとても大事だ。


さすがに二日続けてアラートはないと思いたい。

神様、「徐々にペースアップ」って言ったよね?

頼んだよ。


―――――――


序盤はオレの出番はなく順調に勝ち進み、無事にAパーツを勝ち抜けた。

この準々決勝からはそうもいかない。

優勝経験のある強豪校ばかりが名を連ねている。


相手は熊本の超強豪校。

先鋒が引き分け、こちらの次鋒、中堅が相手の次鋒に抜かれる。

副将の篠田は次鋒は抜き返したが、中堅と引き分けになった。

副将と大将の二人を相手に、ついにオレの出番となった。


この大会、初登場となったオレの出番に会場が湧く。


一礼して開始線へ進む。

蹲踞から構えをとり、開始の声がかかる。


直後、オレの飛び込み面が決まる。

あまりの速さにやや遅れてから旗が3本上がった。


開始とほぼ同時に決まった鮮やかな一本に、アリーナ全体が大きくどよめく。


――本来、剣道の試合では観客は歓声をあげたりしない。

攻防に対しての反応は拍手のみ。

せいぜいが惜しい攻めに対して味方チームからの「いいとこ!」という声がたまに聞こえるくらいだ。


試合場に聞こえるのは審判の声を除き、竹刀の音と、踏み込みの音、そして選手同士の気合いの大きな声、そして拍手だけなのが当たり前である。


試合は勝ち負けだけではなく、対戦相手を敬うことが最も大切とされる。

ゆえに勝ったあとに喜ぶこともしない。


ガッツポーズでもしようものならその一本は取り消される。

感情を出すのは一礼して試合場を出てから。

そこでようやく嬉しい涙も悔しい涙も流すことができる。

剣道とは、そういうものなのだ。



にも関わらず。


音速の一本には会場を揺らすようなどよめきが起きたのだった。


続けて再開。


直後にまたも飛び込み面が鮮やかに決まる。

さらに大きくどよめくアリーナ。


試合時間は5秒に満たない。


それはそれで良くない気もするが、万が一のことがある。

もしアラートが届いてしまったらその時点でオレは試合を降りなければならないのだ。

願わくばチームメイトの汗を、涙を無駄にしたくない。


オレの試合はすべて最速で終わらせる事を決めていた。


続く大将戦も同じく数秒で勝ちを決めた。

相手の攻撃の前に攻撃を決める。

相手が動いた瞬間に技を決めるのが「先の先」と言うが、これは「先々の先」。


いや、違うか。


「先先々の先」かな。


相手が動き出した瞬間に先に技を決めるのが先の先。

相手が動こうと心を決めた時に技を決めるのが先々の先。

これはそれすら凌駕している。


全員で礼をして試合場をあとにしても、アリーナのどよめきは消えなかった。


――結果。


オレは続く準決勝を2人抜き、そして決勝で3人を抜いて、三連覇を成し遂げたのだった。



――江之島選手、三連覇おめでとうございます。

「ありがとうございます」


――今日7回の対戦、すべて開始直後の二本連取でした。

「みんな本当に強い選手ばかりですから。油断せず最初から全力でいくことを決めてました」


――驚きを超えて恐ろしさすら感じました。

「そんな大げさな。たまたまタイミングが合っただけです。気を抜けば私が負けます。それほど強い相手ばかりでした」

 

――このあとはすぐに関西でインターハイですね。

「はい。今年こそ団体で優勝したいと思います」


――手応えはどうですか?

「王龍旗のような抜き試合じゃないですからね。本当にチームの力が試される。だからこそ勝ちたいんです」


――個人戦の連覇にも期待がかかります。

「個人も頑張りますけど欲しいのは団体優勝です。それを目標に全力を尽くします」


館内が大きな拍手に包まれる。

決していい子ちゃんのリップサービスではない。

本気で団体戦で勝ちたいのだ。


一人一試合の五人制。

三勝すれば勝ち。

四人が引き分けて最後の一人が勝っても勝ち。

引き分けも立派な作戦なんだ。

個人がどれだけずば抜けてても単なる一勝にしかならない。

仲間を信じて勝負をかける。

これこそが剣道だと思う。


ひとつ嘘があるとすれば。


状況によってはオレはインターハイには出られないかもしれないのだ。


そのことを隠して、オレは夢を語った。

みんなの想いがどうか叶いますように。

優勝できずとも、みんなと一緒に挑戦させてほしいと願うのだった。



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