魔国
地上に転移してみると、そこには武装した兵士たちが大勢で待ち構えていた。
「来たぞ!」
「お前たちは何者だ!」
「突然なんの先触れもなく我が国に侵入した上にこの神聖な場所に潜り込むとは!」
あー。急ぎすぎた。
でも一刻を争う状況だったんだよ。
オレは両手を挙げて説明する。
「聞いてくれ。敵意はない。不法侵入については確かにオレたちが悪かった。だがこの世界の危機を救うためにやむを得ずやったことなんだ」
兵士たちは全く聞く耳を持たない。
かなり興奮しているな。
そりゃデカい狼にハイオーガもいるからな。
明らかに不審者。
あなたたちは間違ってないよ。
「名を名乗れ!!!!」
「異世界から来たナツという冒険者だ。これはオレの仲間でヒョウ、イザナミ、ハイガだ。みんな仲間だから安心してくれ」
「!!!!!!!!!」
なんかフリーズした。
やがて全員がザワつく。
「え? イザナミ?」
「あれさ、もしかして神獣じゃないのか?」
「なぜハイオーガが仲間なんだ?」
「異世界と言ったよな?」
ざわめきが広がり、兵士たちはさらに混乱している。
いかん。
「えーと。あ! あと人間族のウート国王、獣人国のウララ国王、ドワーフのガント国王、エルフのエイリル国王はみんな友だちです!」
ますます混乱をする兵士たち。
いかーん!
「はあ!?」
「あいつなに言ってるんだ?」
「列国の国王たちと友人だと??」
「そんなはずあるか!」
勢いが戻ってしまった!
何を言えばいいんだ!
ぜんぶ真実なのに!!!
兵士たちは遠巻きに囲んでジリジリと間合いを詰めてくる。
「なあ!どうしたら信じてくれる?」
先頭に立つ兵士が答える。
なんか一人だけ赤い帯つけてるから隊長とかかな。
「どうしたもこうしたも、それはこっちが聞きたいのだ! お前は何者だ!」
「ですから、いま話したことはすべて本当のことなんですよ」
「あのな、そう言われて信じる者がいると思うか」
「いやそれは確かに。逆なら信じないよ」
「それをお前が言うなよ」
「それは確かに。ごめん」
神獣にイザナミにハイオーガ。
明らかに異常なチームだけど、こちらに敵意がないのは明らかだ。
ちょっと面白くなってきた感じがしなくもないけど。
えーと。なにか証明するものは……。
あ、ギルドって国に属しない世界的な組織だったよな!
「あのさ、魔国にもギルドってあるのかな?」
「あるに決まってるだろ!」
周りがヤジる。
「なんだこいつは」
「やはり怪しいぞ」
オレは収納からライセンスを取り出して高く掲げた。
「これ、オレのライセンスです!」
それは元の世界で言うところのプラチナカードみたいなやつ。
いやプラチナはこの世界にあるのかは知らないが、そんなステータスのものだ。
「!!!!!!!」
全員が呆然とする。
次第に声を発していく。
「……あれ見たことない色のカードなんだけど」
「……本物?」
「……確かジャポネーゼでSSランクの冒険者が出たとか聞いたよな」
「ああ。神獣を従えてるとか」
「イザナミ様が仲間とも聞いたぞ」
「おいおい」
「おいおいおいおい」
「「「「おいおいおいおいおい」」」」(全員)
ざわめきが広がる。
意を決して一人の兵士が前に出てくる。
あ、さっきちょっと掛け合いが良い感じだった人だ。
「あのー。ナツさんって本当にジャポネーゼで誕生された史上初のSSランクの方なんですか?」
「うん」
「そちらはイザナミ共和国王で?」
「覚えていてくれたんですね」
「し、神獣様ですか?」
「うむ。我は神獣である」
「なんでハイオーガが????」
「仲間を説得しに来たんだよ」
兵士は呆然としたままだ。
「あの、本当に悪い人間じゃないので。大人しくしてますから、国王にお取次ぎいただけないですか?」
「あの……本当に?」
「本当です」
「マジか」
「マジですね」
「……ちょっと偉い人呼んでくるよ。待っててもらえるか?」
「もちろんです。お願いします」
「最後にちょっと整理させてくれる? あなたは異世界人でSSランクのナツさん、あの人はイザナミ国王、えっと神獣様が……」
「あ、ヒョウです」
「失礼しました。神獣様がヒョウ様で、ハイオーガはお仲間のハイガさん」
「そうです」
「えっと、国王様たちは? ガチ?」
「ガチです。魔国王が最後の訪問先です」
「えっと。一番肝心なこと」
「はい」
「なんで無断侵入して神聖なこの地に突入したんです?」
「言っていいよな……実は地脈が乱れてこの世界が崩壊する危険に陥ってて」
「え」
「世界樹が。ここが危ないって教えてくれたんですよ」
「世界樹……」
「で、急いで突入しました」
「あの、世界の危機は?」
「あ、それはもう大丈夫。堕神が悪さしてたんですけど、全員倒しました」
「堕神………」
「そういう訳でした」
「100周くらいして本当としか思えなくなりました」
「すみません、うまく説明できなくて」
「いえこちらこそ」
「それはもう仕方ないかと」
「あ、じゃあちょと国王呼んできますね」
「あー、よかった。はい、お願いします」
兵士はフラフラとしながら歩き出し、やがて猛ダッシュで城の方へと走って行った。
あいつなんか面白かったな。
――――――――――
しばらくすると、さっきの兵士と誰かが走ってきた。
上司かな。
辿り着くと先ほどの兵士がゼイゼイ息を切らしながら話しかけてくる。
「あの……ご紹介します。冒険者の……ナツさんです」
息しろ。倒れるぞ。
「ご紹介に預かりましたナツです。急を要しておりましたので正しい手順を踏めませんでした。申し訳ありません」
「こ、こちらが……イザール国王です」
――国王、走ってきたよ。




