世界樹
エルフの信仰である世界樹が弱っている。
まずは神眼か。
というか神眼しか頼れるものがない。
頼んだぞ。
世界樹に手を当てて目を閉じる。
「何が起きたんだ? 助けるから教えてくれないか?」
………「地脈の乱れ」?
樹の病気じゃない!
さらに深く要因を探る。
〈世界中を巡る地脈に異常〉
〈人為的な災い〉
〈北の大陸〉
〈世界の崩壊まで残り僅か〉
「はぁっ!!??」
突然大声をあげたオレに全員が驚く。
「ナツ様、どうしたのです?」
「……ちょっとヤバいかもです」
「どうした主」
「ナツ?」
「ナツ殿?」
「怖い顔だよ」
「世界樹が弱っているのは病気かなにかだと思っていたんだけど、エルフの言うとおりだった。誰かが地脈を乱しているせいで世界が崩壊しかかっているみたいだ」
オレの言葉に今度はみんなが驚く。
「なんですって!?」
「「「!」」」
「オレはすぐに地脈を調べてみる」
「地脈は世界中を巡っています。見つけられますか?」
「世界樹が教えてくれた。ここから遥か北の大陸に原因があるみたいだ」
「北の大陸……魔人の国ですわ」
ここでそうなるんだな。
運命ってか、豪運ってかどっちだ?
「行く予定だった場所だな」
「お導きだ」
「主、急ごうか」
「エイリル、これを解決できたら協力してくれ。この騒ぎとは別に世界の融合が起きるんだ。オレの世界とエイリルの世界が混じる。オレはその日をみんなと笑って迎えたくて国王たちを説得してる」
「そうだったのですね」
「エイリルが協力してくれるなら魔人国が最後だ。頼む」
「もちろんです。その代わりにまたカレーを作ってくださいね」
「オレのレシピはそんなもんじゃない。最高に美味いメシを作ってやるよ!」
オレたちはすぐに北の大陸を目指して旅立ったのだった。
位置的に一度ドワーフ国を経由するが、挨拶する時間もないので街外れに転移してからすぐにランクル改で空へ。
そのまま最高速で北を目指す。
「魔人に悪い奴がいるのかなあ」
「なんか怖そうな名前だね」
「ハイガ、魔人族の〈魔〉は魔力の〈魔〉だよ。悪魔とかじゃないからね」
そう。
オレも最初は勘違いしていたのだが、魔人族は「魔力に優れた人族」の略だ。
その他は人間と見た目は何ら変わらない。
「魔族がやらかしたのか、場所が魔国なたけだのか、どっちかだよな」
「だいぶ違いますね。魔族を味方とみるか、敵とみるか」
「行ってみて考えるか」
魔国に近づくにつれ脳内アラートがガンガン鳴る。
もはや時間もあまりないのか?
やがて北の大陸が見えてきた。
ここはもうバレも気にせずアラートをダウンジングにして原因となっている場所を探す。
「あそこか!」
アラートのサイクルが短く強くなり連続音に変わったポイントを見つけるとオレはそのまま土魔法で地中へと飛び込んでいく。
掘るというよりは溶け込んでいくイメージだ。
ランクル改はついに地中も克服してしまった。
ボコンッと地中を突き抜けて広い空間に出たのでそのままその底を目指して降下していく。
地の底に辿り着くと、そこは真っ暗でだだっ広い空間だった。
すぐに光魔法で一面を照らすと、そこには明らかに人工物と思われる機械が無数に突き当てられていた。
「なんだこれ!?」
「地脈から強引に魔力を吸い上げてます!」
「どこに流れ込んでいるんだ!?」
魔力の流れを追うとそれは空間の奥へと流れ込んでいるのがわかった。
まずはこの機械を止める!
オレはマップでの即時殲滅をしようとしたが、人工物はマップに反応しない。
仕方なく木刀を取り出して片っ端から壊していったが、途中でいきなり何かに吹き飛ばされていまった。
「なっ!?」
100メートル以上吹き飛ばされ転がりながら壁に強打したオレは初めて戦闘でダメージを受けたことに驚く。
「マジか。なんの攻撃だよ!」
続いて同じようにヒョウ、イザナミ、ハイガも吹き飛ばされてきた。
「大丈夫か!?」
「たいしたダメージではない! だが攻撃の出どころが分からぬ!」
「同じくです!」
「ぼくは痛い……」
「ハイガは無理するな! 一旦引け!」
「うん!」
ハイガが後ろに下がったのを確認してから前を向く。
そこに姿を見せたのは、巨大なゴーレムだった。
「とういうことだ! 魔力を感じないゴーレムだと!?」
「ヒョウ、どういうことだ?」
「魔力は感じぬ! 魔力なしでゴーレムが自走するなど聞いたことがない!」
「何が何だか!」
ヒョウもイザナミさんも困惑している。
オレも神眼を向けてみたがなんの反応もない。
つまりは……いわばあれはロボットだ。
普通のゴーレムではないと考えるんだ。
ならば!
オレは木刀を手に近接に持ち込む。
全力で胴を打ち払うとゴーレムの身体は半分に砕け散った。
だが次の瞬間、ゴーレムは自動再生して元に戻る。
「チッ! 再生能力か!」
「主、おかしい! 再生の時に魔力が発動してない!」
「なにかあるはずです!」
「神眼が反応しないんだ!」
無反応ゆえに不意打ちを食らった初撃以外、動きは見切れるので攻撃は一切受けていない。
攻撃を叩き込むのも余裕なのだがすべてノーダメージで復活してくる。
「なんのからくりだ!」
「わからぬ!」
「地脈から吸い上げた魔力が使われているのは間違いないのに!」
その言葉を聞いて少しひっかかる。
直接ゴーレムに注がれてないってことは……とこかに変換装置があり魔力以外のものとしてゴーレムに注がれてるってことだ!
そのイメージで神眼を使うと、遥か奥に何かの装置が見える。
(地底空間の一番奥になんかある! ヒョウ! オレがゴーレムの相手をするからさっきの機械も一緒に破壊してくれ。イザナミさんもフォローを頼みます!)
((了解!))
オレは高速移動で打撃を加えながらゴーレムの周囲を駆け巡る。
面、面、胴、突き、面、胴、突き!
激しい連続打突にゴーレムの再生が徐々に追いつかなくなる。
(主! 見つけた!)
(周囲を守っているのは……堕神だ)
(いけるか?)
(ちょうどよい)
(借りは返しますよ)
「フハハ! 何が来たかと思えば!」
「我らが下僕ではないか!」
「知らぬのか! 我らはモンスターを使役できるのだぞ!」
「キサマも一度はモンスターに身を落としただろう! もちろん対象だぞ」
「また最強の駒を手にできるな」
「ノコノコと! 笑わせてくれる」
堕神たちは口々に嘲る。
それを聞いた二人はニヤリと笑う。
「笑わせてくれるな」
「ああ。私たちの絆を知らぬのだから仕方ないか」
「屈辱は100倍にして返すぞ」
「同じくだ」
ヒョウとイザナミの表情は一変した。
呪われた者。魔物に変えられた者。
それぞれの怒りが膨れ上がる。
「んなっ……」
「早く!使役しろ!早……」
「とっくにやってる!!!!なんで効かな……」
「おいどうにか……」
「うわぁぁぁ助け…… 」
「ひぃぃ!!!逃げ……」
堕神は一瞬で「破壊」された。
「なんの手応えもないな」
「まったくです」
そう言って二人は目の前にあった装置を粉々に破壊した。
「ヒョウ! イザナミさん! サンキューです!」
高速移動でボロボロになった巨大ゴーレムに、渾身の面を叩きつける。
ゴーレムは再生することなく粉々に崩れたのだった。
「おつかれー」
「これはすごいな。粉々ではないか」
「凄まじいな。装置を破壊せずとも再生不可能だったのでないですか?」
「そうか? また再生しただろ」
「「無理(だ/ですよ)」」
神眼で地脈を診てみると、魔力の流出は止まったことがわかった。
だがかなり衰弱している状況は変わらない。
「まだ危ないな。ちょっと魔力を注いでみる」
オレは傷つけられた地脈に手をかざし、全力で魔力を注ぎ込む。
「おぉっ。なかなか効くな」
過去感じたことのないレベルにまで魔力が削られたのがわかる。
だが次の瞬間また魔力がフルチャージされていくのも感じた。
「いいぞ! どんどん吸え! 治せ!」
その後も延々と魔力を注ぎ続ける。
やがてどこからは声が聴こえた。
〈ありがとう。もう大丈夫〉
これは………わかった。世界樹だ!
「もういいのか?」
〈うん。もう十分だよ〉
「よかったーーーーー!」
〈あとで来ておくれ。お礼がしたい〉
「お礼なんていいけどな! 会いたいからいくよ」
オレたちは地上に転移したのだった。




