エルフの願い
「なにこれーーーー!!!」
「辛い! でも甘み? わけわからない!」
「「美味しー!!!!!」」
エルフ、カレーで秒殺である。
「これはオレの国の料理でカレーっていうんだ」
「カレー美味しすぎる!」
「こんなの初めてだよー」
「良かった! おかわりまだまだあるからゆっくり食べな」
「「ありがとうー!!」」
食いしん坊たちの勢いも止まらないな。
コビー増やすか。
せっせとコビーをしていると、またエルフがやってきた。
「アイナ! リンド! なにやってるんだ!!」
「アラノ兄さん!」
「早くこっちきて!」
「は?」
「いいから食べて!」
「いやこんなわけのわからない……なんじゃあこりゃあーーー!!!!」
「おい、アラノ!これは何の騒ぎ……むひょ〜〜〜〜!!!!」
こんな調子で次々とエルフが釣れる。
テーブルとイスを増やして、カレーのコビー、テーブルとイスを増やしてカレーのコビー。
この繰り返し。
食べ終わったエルフのためには食後のデザートにシャーベットを用意した。
溶けるといけないから氷魔法で簡易的な冷凍庫を作る。
こちらも大好評だ。
気付くと周りには100人くらいのエルフがいた。
中でも一際美しくめちゃくちゃ食べてる人がいるのだが……10杯くらいおかわりしてるぞ??
むしろ大丈夫なのか?
あ、シャーベット食べに行ったな。
うわ、凄い勢いだよ。
本当に大丈夫か???
あ、森に駆けていった。
ほらな。食べ過ぎだよ。
その人は戻ってくるとまたカレーを食べ始めた。
あ、やり直すんだね……。
結局、最後まで食べていたのはこの人だった。
やっとシメのシャーベットもきり上げるようだ。
手を合わせてちゃんと何かお祈りをしているな。
その辺はさすがちゃんとしている。
その人が食べ終わるとエルフの全員が立ち上がった。
そしてオレたちの方へと歩いてくる。
「ごちそうさまでした」
「「「「ごちそうさまでした!」」」」(×100)
あれ?
もしかしてこの爆食美女が王様なのかな?
「私はエイリル。このエルフの国の国王です」
うん。王様だったね。
「今日は夢のようなひとときをありがとう」
「いえ、みなさん気に入っていただけたみたいで何よりです。オレは異世界から来たナツといいます」
「異世界の方……どうりでこんな不思議なお料理が作れるのですね」
「オレの世界のポピュラーなメニューですよ」
「本当に美味しかったわ。それで、この森には何の目的でいらしたの?」
「世界の終わりについて、エルフのみなさんにお伝えしに参りました」
その言葉を聞いて周りのエルフがざわめく。
「やはり本当か」
「まだわからん」
「だがこのタイミングだぞ?」
何か知っているようだな。
「みなさん何かご存知なんですね?」
「ええ。世界の終わりが近いと世界樹から聞いていました」
「世界樹!? ここにもあるんですね」
「! あなたは世界樹を知っているの?」
「いや、育つ前の苗とこないだ出会いました」
「え!?」
「?」
「この出会いは必然? 私たちへの救いね」
「どうしたんです? 意味がわかないことばかりで……」
「ナツ様、どうか私たちをお救いください」
――――――――――
話は思っていたよりもシンプルだった。
この森の世界樹が日に日に弱っているらしい。
エルフの国には「世界樹が枯れるのは世界の終わり」という言い伝えがあり、それでこの世界の終わりを予期していたという。
「なるほど。みなさんの心の支えである母なる大樹ですもんね。心配だったでしょう」
「はい。祈りを捧げても一向に良くならず、困り果てておりました」
「祈りですか」
「世界樹の代わりなどないと思っていたのですが、ナツ様が苗をご存知だと聞いて、いざとなればと思いました。でもその考えもどうかといまは思い直しています」
「そうですね。それは本当に最後に考えることだと思いますよ。世界樹まで案内してもらえますか?」
「はい。本来なら多種族は招き入れないことになっているのですが、この出会いは天命だと感じています」
そういってエイリル国王が森に向かって手を挙げると、不思議なことが起きる。
木々の隙間に光る道が浮かび上がったのだ。
「すごい」
「あの道を辿ればエルフの国に着きます」
神眼でも見抜けなかった。
これはすごいな。
エイリル国王と一緒に光る道を辿る。
(あ、術式わかっちゃったかも。なるほど次からは来られるな)
しばらく歩くと森を抜けた。
そしてそこには自然と完全調和した「村」があった。
深い緑の木々を背景に、鮮やかな色をした花が咲き乱れている。
そこに建てられている家々はすべて木造で、ツリーハウスなどもある。
「へえ。ここは落ち着くな」
「素朴ながら美しいですね」
「自然を守りながら暮らしておるのだな」
「ふむ。いい魔力だ」
「木の上に家だー」
思わずこぼれた言葉にエイリル国王は嬉しそうに微笑む。
「森の恵みだけで過ごしてますから。そこにあのカレーは堪えましたよ」
「すみません、そんなことも知らなくて」
「その森がいま死にかけているのです」
「それは心配なことでしょう。現場はどの辺りですか?」
「こちらです」
エイリル国王の案内で村の外れに歩くと、だんだんと木々の緑が色褪せていくのがわかった。
やがて立ち止まると祈りを捧げた。
するとそこにあまりに巨大な大樹がその姿を現した!
「すごい!!!!」
オレたちは次の言葉が見つからなかった。
遥か天空まで強くそそり立つその姿は神々しいという言葉以外に見合うものがない。
だが確かにこの樹には何かが起きている。
苗に感じた生き生きとした力強さが失われている気がする。
周りの木々へにも影響が出るほど傷んでいるようだ。
オレに治すことができるだろうか。




