宴
ドラゴン来襲の騒ぎも誤解がとけてようやく落ち着く。
事の次第を知ったドワーフたちは今度はドラゴンの来訪に大いに沸いた。
「それにしてもナツ殿には驚かされるばかりだな!」
「そうですか? 普通に仲良くなっただけですよ。ご近所同士だしみんなとも仲良くなればいいのにって思っただけです」
「ドラゴン相手にそれをできるのが普通ではないからな」
今は城の隣の湖畔で大夕食会の最中である。
予定していた迎賓館では収まらなかったのだ。
オレも鉄板やコンロを大量に出して、自慢のデッドリーカウを大盤振る舞いだ。
「くぬわあ! なんだこれは!」
「であろう!主のメシはとんでもないのだ!」
ドラゴンの胃袋を満足させるにはとてもじゃないが間に合わないぞ。
「黄龍! サイズダウンできないのか?」
「ぬ?」
「あー!! なに牛一頭丸呑みしてんだよ!」
「ダメなのか?」
「焼くから美味いんだよ!」
「仕方ないな」
黄龍はヒョウくらいのサイズになった。
「まだダメだよ! ヒョウはトイプーまで小さくなれ。黄龍もそれに合わせろ」
「「えー」」
「……あのな、秘密を教えてやろうか。その方が本当の味を楽しめるんだぞ」
「「任せろ」」
二人は抱っこサイズになった。
うむ。チョロい。
振る舞われたドワーフ料理は香辛料の効いたものが多く、これはオレにはかなり好みの味だった。
「ガント国王、ドワーフ料理もいいもんだな!」
「それを言うならナツ殿のバーベキューとやらがとんでもないぞ」
「この肉にドワーフの香辛料はきっと合うぞ。次は漬け込んで焼いてみるか」
「「「うぉーーーー!」」」
なんの歓声だよ笑
でもやってみたらめちゃくちゃ美味しくてオレも叫んだのだった。
「まさかドラゴンに会うどころか夕食に招くとは。ドラゴンと一緒に食事をした人間などこの世にいないだろ」
「仲良くなりすぎです。こう見えてもかつてのドラゴンの厄災では当時のドラゴンのボスを倒してますからね! 黄龍はケタ違いなんですよ!? 私はずっと震えてましたよ」
「最後は仲良くなれたけどね。怖すぎたよ」
「おい、黄龍! 今度はオレの国に来いよ。肉をたらふく食わせてやるぞ」
「遠いのは面倒だ」
「この牛はオレの国のもんだぞ」
「なにぃ! 行くぞ!」
「おい、それを言うなら獣人国だ。肉の宝庫だ」
「宝庫なのか! 行くぞ!」
黄龍はいわゆるメシに弱いっていうファンタジーのテンプレだな。
「黄龍、これ食べてみろよ。オレの国の料理で『焼きおにぎり』だ」
それを食べた途端……黄龍が今日イチの悲鳴をあげた。
「なんじゃあこりゃあ!!!! 外はカリカリ、中はほっこりふっくら!! 香ばしいこの香りもたまらん!!!」
おお、まさかの和食が刺さったぞ。
龍におにぎりとは似合わないけど嬉しいもんだな!
楽しいパーティもようやく終わりに近づいたようでみんなが片付けを始めた。
あ、こっちにはあれがないのか。
よし、デザートを振る舞うか!
即興で作れるものか……。
うん、ないな!
ここはストックしてあったホールのショートケーキを大量コピーで誤魔化す!!
「おーい、シメのデザートタイムだ」
その声に全員が反応する。
「シメ? シメとは何だ?」
「デザートというのは?」
ざわつくドワーフに説明する。
「オレの国では料理の最後には甘いものを食べるんだ。最後だから締めるという意味で『シメ』という。そして何を隠そう、どれほどメシを食った後でも『デザートは別腹』と呼ばれるのだ! 奇跡のショートケーキを食べたいか!?」
「「「うおぉぉぉーーー!!!」」」
だからなんの歓声だ!
楽しい!
だがその言葉通りにショートケーキは奇跡を起こしたのだった。
全員がメロメロになり、おかわりが止まらない。
最後は国王自らレシピを求めてきた。
困ったな。
そうだ。アキに頼もう。
「このデザートという料理は我が妻、アキの専門分野だ。今度連れてくるからその時を楽しみにしておいてくれ!!」
湖畔にはアキコールがいつまでも続くのであった。
――――――――――
「えー! 私、そんなにデザートは得意じゃないよ」
「そうだっけ? いつも出してくれてるじゃん」
「あれ、ほとんど買ったものだって」
「マジか。まだみんなアキコールしてるぞ」
「聞こえてるわよ。どうすんのよ!」
「ま、買ってきたものでいいんじゃないか?」
「……やだ」
「え?」
「行くまでにマスターしてやる。楽しみにしておれ!」
アキは時間が惜しいといってデザートの開発をするために行ってしまった。
ちなみに今のはオレがクリエイトした異世界通話ができる携帯電話だ。
「収納経由で通話くらいならできるんじゃね?」という篠田のアイデアが見事にイメージに刺さった結果だ。
その日は結局みんな飲んで騒いでそのまま湖畔で朝を迎えた。
もちろんオレは未成年で飲んでないからちゃっかり現実世界からアキを連れてきて一緒に寝たよ。
なお、イザナミさんとハイガもちゃっかり帰宅組だった。
翌朝、起きてからドワーフ国に行くと二日酔いのメンバーが湖畔のあちこちに転がっていた。
仕方ないので全員に毒消しの魔法をかけたらみんなようやく復活したのだった。
獣人国に続いてドワーフとも仲良くなれた。
世界の終わりについても伝えたし、また改めて新世界に移行するための打合せを約束してオレたちは出国することに。
「じゃあオレたちはそろそろ行くよ」
「楽しかったぞ。次は新世界の国王たちとの顔合わせだな」
「うん、全員で集まってこれからのことを話し合おう」
「楽しみにしてるよ。じゃあな、黄龍、ドワーフのみんなと仲良くやれよ」
「ん? ワシはナツに付いていくぞ? なに言ってんだ?」
「はあ?」
「友だちだと言っただろうが」
「そりゃそうだけど。住処はいいのか?」
「気まぐれに居着いただけだ」
「そっか。ならいいよ。よろしくな」
「よろしく頼むぞ。……メシを」
「おい」
これも異世界テンプレだよな。
でも神獣に伝説の国王にドラゴンか。
なかなか派手なパーティーメンバーになったものだ。
残りは魔人族にエルフか。
ここにはツテがないけど大丈夫だろ。
なんせオレは異世界人だからな。
この世界のしがらみなんか関係ない!




