ドラゴン
その後、世界の終わりについての情報共有をしてドワーフ国との緊急会談はひと段落となった。
ガント国王はその危機と対応に理解を示し、協力を快諾した上で、夜は歓迎の晩餐会を開いてくれることとなった。
そしてその合間にドラゴンの棲む山を教えてもらえた。
「一番高く、頂上に一本の大樹がそびえる山が見えるじゃろう。あれがドラゴンの棲む山じゃよ」
遠くに見えるひときわ大きな山に確かに一本の大きな樹が見える。
おそらくは富士山よりも高い標高にもかかわらず、それでも力強くそびえるその樹からはここから見てもその生命力の強さが伝わってくる。
「さっそく行ってきていいですか?」
「いやあそこまでは歩けば三日はかかる。お主の乗ってきた鉄の車に乗ってもそう簡単にはたどり着けぬよ」
「大丈夫です。転移で行ってきますよ」
「行ったことない場所に飛べるのか?」
「目視できる場所には飛べますよ」
「ほう。ならばよいじゃろう。メシまでには戻れよ」
「はい! ヒョウ、ハイガ! 行くぞ!」
「あ、私もお願いします」
「ならオレも!」
「ウートはダメじゃ」
付いて行こうとしたウートはガント国王に羽交い締めにされる。
「なんでだよ!」
「お主とは今のうちにしっかり話し合いをせねばならん」
「はあ?」
「そろそろ腹の中を見せよ。いつまでも破天荒な真似事ばかりではうまくいかんぞ」
「むぅ」
「照れ隠しの時間は終わりじゃ。この世界のあり方を語る時間としようか」
国王たちは三人で話し合いを続けるようだ。
「じゃあ行ってきます!」
――――――――――
目視で大樹へ転移する。
少し抵抗があったように感じたが無事に転移が出来た。
それにしても大きな樹だ。
神眼によると「世界樹の苗」と出た。
世界樹って有名なやつだよな。
でもこのサイズで苗か。
いつか育ったやつも見てみたい。
「大きく育てよ。いつかまた会いに来るからな」
世界樹の苗が少し震えた気がしたのは気のせいだろうか。
いや、きっと返事をしてくれたんだろうな。
辺りを見回すが世界樹の回りには何の姿も気配もない。
「本当にいるのかな」
「いるぞ、主」
「わかるのですか?」
「神獣だぞ。このくらい察知できるわ」
呼んでみるか。
「ドラゴン! 会いに来たぞ! オレは異世界から来たナツだ! 一緒にいるのは神獣のヒョウと、友だちのハイガ、イザナミさんだ。会ってもらえないかな!」
すると空間が歪み、そこから莫大な魔力が溢れ出した。
凄まじい魔力の奔流だ。
「お! きたきた!! こりゃすごいな!」
「ほう。これはなかなかのものだぞ。手強いな!」
「ぐっ、二人ともよく平気ですね。私が前に倒したドラゴンとはケタ違いの魔力です!」
「なんだこれ!!! 耐えられるかな」
しばらくすると魔力の嵐は収まり、そこには大きなドラゴンが佇んでいた。
「ほう、これは何かと思えば……氷狼か」
「む? おう、黄龍ではないか」
「え、二人は知り合いなの?」
「知り合いというよりはライバルだな」
「ぬ? 黄龍ごときライバルではない」
「よく言う。子狼の頃から挑み続けておっただろうが。泣きながら毎日毎日よく来たもんだ」
「ぐ。頼む。それは言わないでくれまいか」
「へぇ、幼なじみなんだ」
「「違う」」
「ワシの方が300歳年上だ」
「それくらいの差はあってないようなものだ!」
なんだ、仲良しじゃんか。
「一般的にはそれ幼なじみっていうけどな」
「「違う!」」
微笑ましいな。
ん?
ハイガとイザナミさんの様子が変だな。
「二人ともどうしたんだ?」
「いやいや。ただのドラゴンじゃないんですよ!? なんで黄龍を前にしてナツ殿が平気なのか分かりません。というか、ヒョウ殿には少し慣れてきてたのですが、こうドラゴンと相対してるのをみるとやはり神獣だと再認識してしまいました」
「ナツ、ヤバすぎるよ」
「えー、楽しそうじゃないか」
「「楽しくない!」」
「「怖い!」」
なんだかんだとおしゃべりしているうちに仲良くなった。
ビビっていたイザナミさんとハイガもいつの間にか楽しそうに黄龍をペチペチ触っているし。
「あ、黄龍ってさ、ドワーフとは仲良しなんだよな?」
「どうであろうな。まあ知らぬ仲ではない」
「このあとみんなでメシなんだけど黄龍も来ないか?」
「ぬ?」
「あれ? いやか?」
「いや……人間にそのような誘いをされたこともないのでな。ワシが行くと向こうも驚くであろう。今回は遠慮しておこう」
「えー、喜ぶと思うけどな」
「そ、そうなのか?」
「主、無理に誘わずともよいだろ」
「いやいまちょっと行く感じだったぞ」
「そのようなことはない!」
「ほらヒョウがそんな言い方するからだ! お前もう明日メシ抜きな」
「ぐあっ! それは困る! 許してくれ主!」
「なら黄龍に謝れよ」
「ぐぬぬ。……黄龍、すまなかった」
黄龍は唖然としている。
「……氷狼が謝るとは。それよりあの暴れん坊をこれだけ躾けるとはナツとは何者だ?」
「躾なんかじゃないよ。友だちだから言うべきことを言ってるだけだって」
「友だち……か」
「もう黄龍だって友だちだろ」
「ぬ?」
「え? 違うの? えー、そう思ってたのオレだけなの?」
「……いや。そうではないが」
「ならいいだろ。ヒョウも黄龍もそういう意地を張るのはよくないぞ。もっと素直になればいいのに」
「うむ……そうだな」
「なんだ黄龍、しおらしいフリをしてどうした?」
「キサマはいつもそうやっておちょくりよって!」
「ほらほら! 仲良くしろ!」
モンスターとかドラゴンとか種族とか関係ない。
みんな普通に仲良くすりゃいいんだ。
「なんにしてもメシは食おうよ! あ、でもオレ主催じゃないよな。これメシ足りないかもな……。よし、オレも料理を出すよ」
「なにい! 主のメシが出るのか!」
「ん? いつも食べてるだろ」
「地元メシも美味いのだがやはり主のメシは別格なのだ」
「お、おい、そんなにか?」
「お前は知らんのだ。主の作るメシはこの世の奇跡だぞ」
「……ナツ、ワシも行っても本当にいいのか?」
「当たり前だ! ドワーフとはうまく付き合ってた方がいいって。ご近所さんなんだからさ!」
こうしてオレはドラゴンと一緒に夕食に「招かれる」ことにしたのだった。
「行くぞー」
「ん? 転移か?」
「ダメか?」
「いきなりは驚くぞ。乗れ、飛んでいこう」
「いいのかーーー!!!!」
オレたちはドラゴンの背に乗り込む。
これは夢じゃなかろうか!!!!
ドラゴンの背中に乗せてもらったぞー!
その後、山から飛び立ちこちらに向かってくるドラゴンを見て、ドワーフ国は大騒ぎになるのであった。




