ドワーフ
そして私たちは獣人国を後にして、次の国へと向かう。
「それにしてもナツ殿はすごい方だな!」
「いやいや、そんなことは」
「何をいう! 右に神獣ヒョウ、左にイザナミ様を従える者などありえぬことよ! さらにはハイオーガだ。決して交えぬモンスターと縁を繋いでいると驚きだ。まるでそなたは神のようだ!」
あー。半分ですけど、神ですね。
次の国まで獣人国のウララ国王も同行することになった。
目指すドワーフ国とは深い親交があるそうで、その取り次ぎ役を買って出てくれたのだ。
なお、ウートには自覚がないそうだが、ドワーフ国にウートが行っても会えるかは分からないと、ウララがこっそり教えてくれた。
わりかし、やりあってる間柄らしい。
「なんか想像できます」と言ったらウララ国王は笑っていた。
ということで、ランクル改で爆走中である。
空も飛べるしその方が速いと言ったのだが、地を駆けるクルマにウララは歓喜してしまい、そのまま走らされている。
まあ空を飛ばずとも速く進む方法はある。
クルマごと目視転移をすればいいのだ。
ウララはショート転移にも大喜びだった。
ランクル改はあっという間にドワーフ国にたどり着いたのだった。
そこは高い山々に囲まれた盆地のようなエリアだ。
こっちの世界でいうと京都かな。
遠くに見える山々がすべてヒマラヤ山脈やアルプス山脈のような大きさだと思ってくれれば、それがこのドワーフ国になる。
「すごいな。見渡す限りデカい山脈に囲まれているんだな」
「ドワーフは地下深くまで資源を掘るからな。山脈の山中に城や街を構えてはいるが、地下にもドワーフの街が広がっているはずだ」
ウートが自慢げに教えてくれた。
なんとそんなに広大なエリアを統治しているのか。
それを聞いたウララはなぜか笑っているけどなんだろう。
ウララの案内に従いクルマを走らせていく。
かなり山を登ってきているがランクル改はどんな傾斜も悪路も踏破できるのでノンストップで城壁にまで辿り着くことができた。
突然やってきた鉄の塊に驚いた衛兵だったが、「獣人国からの使者だ」と伝えると手招きをしてくれた。
全員下車をしてウララが挨拶をする。
「獣人国の国王、ウララである。先触れなしの来訪となり面倒をかけるが、緊急の案件につき至急ガント国王に取り次ぎを頼む」
その報に衛兵たちは大騒ぎとなる。
「ウララ国王! どうされたのです!」
騒ぎを聞きつけた一人のドワーフが駆けてくる。
ずんぐりむっくりで走るとなんかかわいいな。
「グント隊長、久しいな!」
「ご無沙汰をしております。いま国王に報せを走らせますのでまずはあちらでお待ちくだい」
グント隊長の案内に従い、門に繋がってるトンネルを歩く。
長いトンネルを抜けたその先にはこの世のものとは思えないような景色が広がっていた。
「おお! すごいなここは!」
トンネルを抜けた先は大きく広い展望台のようになっていた。
眼下に広がるのは緑溢れる自然の森だ。
広い森の中には煙をあげる家がところどころに見える。
その真ん中には大きな湖がありそのほとりに城が建っていた。
「すごい!!」
あまりに壮大な姿に二の句が続かない。
それを見たグント隊長は嬉しそうに教えてくれる。
「外に広がっていた盆地は言わば仮の姿です。これが本当のドワーフ国ですぞ」
「街がこんな見事に自然と調和しているなんて信じられない」
「だろ。オレも初めて見たときは驚いたもんだ。この雄大な姿にはいつ来ても心を奪われるよ」
ウララの言葉に心から納得する。
「オレはここまで入ったことがないぞ!」
「ウートはケンカっぱやいからな。まだ信頼されてなかったんだな」
「そ、そうなのか?」
「冗談だよ。オレもここに招き入れられたのはつい最近だよ」
「ぐぬぬ」
「あのな、付き合いの深さが違う。獣人国とドワーフ国は隣合わせだぞ」
と、そこに大きな声が響く。
「待たせたな! おぅ、ウートもいたのか!」
「おいガント! ということだよ! オレはここに入れてもらったのは初めてだぞ!」
「お前みたいな暴れん坊を簡単に中枢まで入れるはずないだろ!」
「ぐぬぬ」
「冗談だ。気にするな」
リピートしてるぞ。
なんかこの三人、仲良くて気持ちいいな。
「そちらは?」
「今日の主役たちだ。紹介するから少し落ち着いたところで話せるか?」
「いいだろう。迎賓館にいこうか」
そこに待ったをかける。
「ガント国王、ナツと言います。ご紹介前に立ち入ってしまいますが、このままこのテラスで話せませんか?」
「? 構わんがどうされた?」
「こんな景色がいいのに移動するなんて勿体ないですよ」
しばらく固まった後、ガント国王は大笑いした。
「ガハハハ! 嬉しいことをいうヤツだな! いいだろう!……おい! ここにテーブルとイスを用意せよ!」
急遽パノラマ謁見がスタートした。
「改めて今日はいきなり押しかけて申し訳ない。どうしても急ぎ伝えねばならんことが起きた」
「日頃こんなことはせん男だからな。よほどのことじゃろう。聞こうか」
ウララは意を決して伝える。
「驚かずに聞いてくれ。まずは紹介しよう。異世界人のナツ、神獣のヒョウ、そしてイザナミ共和国王と、ナツ殿の従者であるハイガだ」
ドワーフ国王とその配下の者たちは驚きのあまり言葉を失ったのだった。
――――――――――
「なんとそのようなことが……」
「……ふむ。世界の融合と来たか」
ここまでの顛末をひと通り聞いてグント隊長の驚きとは別に、ガント国王は何かを知っているような仕草を見せた。
「国王、なにか思い当たる節でもありましたか?」
「うむ。このところドラゴンに落ち着きがなかったものでな。なにかよからぬことの前触れかと思っていたところじゃった」
「え、この国にはドラゴンがいるのですか?」
「いや国内にはおらぬよ。近くの山に住みついておるのじゃ」
「すごい! 見ることはできますか?」
「どうじゃろうな。気に入られれば姿を見せるかもしれぬ。ワシも慣れるまでは50年かかったからの」
「そんなに! それは厳しいかもしれませんね」
「いや意外と行けるかもしれない」
口そう呟いたのはイザナミさんだ。
「え?」
「ドラゴンは人の本質を見抜くという言い伝えもある。異世界人であり、神獣を従えるナツ殿には興味を示してもおかしくない」
ワンチャンあるなら行く価値もあるよな。
「ガント国王! 挑戦させてもらえませんか?」
「もちろんよいぞ。但し何かあっても自己責任じゃからな」
こうしてオレたちはドラゴンに会いに行くことになったのだった。




