帰還からの帰還
次の瞬間、辿り着いたのは新天地だった。
「よし! 成功だ!」
周りを見るとコアメンバーが揃っていた。
師匠、ひかりさん、篠田にイザナミさんも!
「「「おかえり!」」」
みんなに抱きつきオレとアキは喜びを爆発させる。
「不思議だな。こっちではまだ二日目なんだけどな」
「こっちは一か月以上だよ?」
「本当にそんなに時間のズレがあるんだな」
「もちろん心配はしてたけどな。ギャップがあるよ笑」
「こっちは大変だったんだよ」
「手紙で知ってるよ。一時間おきに届いたからな」
「ってことはXデーまではあと8日くらい?」
「あと9日だな」
まだ時間は十分にある。
創造神様からは合格点をもらっているがまだやっておきたいことはある。
あ、ナビィ呼ばないと!
「ナビィ!
「な、ナビィだよぅ♪」
「なんか疲れてんな」
「異世界転移はダメージが大きいんだ」
「げ、そうなの? 多分すぐまた戻るぞ?」
「ちょっと無理かも……」
「こっちにいれば時間の流れは遅いから大丈夫だろ。しばらく休んでいいぞ」
「ありがとう〜。ちょっとダウンする〜」
負荷がかかりすぎたんだな。
ゆっくり休んでいいからな。
時間がない。
まずは改めての報告だな。
「家町総理たちは?」
「カーター大統領とイワンコフ大統領たちは揃って待機してくれているよ。今は会議室で打合せ中だ」
「いっていいか? みんなにもそこで説明する」
「もちろんだ。到着したらすぐ入ってくれと言われてるよ」
そのまま会議室に入室し、皆と再会を喜んだ。
世界の首脳に帰還を喜ばれるってなんかすごいな……。
「おかえり。さぞ苦労したことだろう」
『我々にはたった二日だがナツたちは大冒険だったな』
『まさか異世界に転移させられるとは。聞いたときは肝を冷やしたよ。よく戻ってくれた』
家町総理、カーター大統領、イワンコフ大統領がまずは労いをしてくれた。
「おおよそは手紙で届けた通りですが、神様から得た新情報がいくつかあります」
全員が真剣な表情で立ち上がる。
「実はいまここに戻る途中で神界に呼ばれて立ち寄ってきました」
今度は全員が呆気に取られた顔になる。
「え? 神界?」
「神の住む世界?」
「「「えええーーっ!?」」」(全員)
――――――――――
『歪みにかこつけた堕神による侵略だったのだな』
『魔王が勇者だったとはな』
「その堕神も最強格はすでに倒され、残りはそこまでの脅威ではないそうです」
「それはいい情報だ」
『あとはウート国王次第か』
「私はこれから向こうに戻って各種族の説得に同行しようと思います」
「頼む。それがいいだろう」
「時間の流れが違うのですぐに出ます。アキ、悪いが今回はこっちに残って細部の報告を頼むよ」
「さすがに仕方ないよね。わかったわ」
「主の警護は我に任せておけ」
「私も連れて行っていただけますか?」
手を挙げたのはイザナミさんだ。
「私も役に立てるはずです。みなさんに恩返しがしたい」
「もちろんです。もともとイザナミさんは異世界の方ですから向こうにお送りするつもりでした」
「ありがとう。必ずお役に立ちます」
「では時間が惜しい。すぐに行きましょう」
こうして私は異世界へとんぼ返りすることになったのだった。
すぐに準備を整えて転移しようとしたら、見送りの輪を飛び越えてハイガが走ってきた。
「ナツ!」
「ハイガ! 会いに行けなくてごめんな」
「事情は聞いてるよ」
「話せるようになったんだな! よく頑張ったじゃないか!」
「ぼくも連れて行って」
「え?」
「向こうの世界の仲間たちを説得したい」
「……そうか」
「お願いだ」
「わかった」
「ありがとう!」
ハイガは泣いて喜んでいる。
「みんな! ハイガも連れて行くことにした! 預かるぞ!」
そう叫ぶとそのまま異世界転移を詠唱し、オレたちはウートの世界へ舞い戻ったのだった。
――――――――――
転移したのは王城に作ってくれたオレの私室だ。
「よし、戻れたな」
「主、最後やけに急いだな」
「ハイガを連れて行くなら自分も行くっていう後追いが増えそうだったからな」
「ハハハ。師匠は動こうとしてましたね」
「一瞬ひかりさんを見たから間に合った。あっちの最高戦力だから残ってもらわないと困るよ」
部屋を出てウートを探そうと思ったが、イザナミはともかくハイガを連れてウロウロするのはマズイな。
「よし、ウートの元へ転移してみるか」
場所ではなく人物を思い浮かべて転移する。
辿り着いたのは……どこだここ。
目の前には驚いた顔のウート。
見渡すと無骨ながらも明らかに場違いな大広間……ってどこぞの国の謁見中かこれ!?
「すまん! 謁見中だったか??」
「ナツ!?」
そのまま私に抱きつくウート。
あ、こっちではそれなりに時間が経っているのか。
「よく戻れたな!」
「ああ。帰り道に神界に呼ばれてさ。いろいろ追加情報もあるし、こっちの説明も手伝おうかなって」
途端に周りがザワつく。
「なんなんだ彼らは?」
「神界!?」
「神界と言ったのか?」
「うわ、モンスターが!?」
「あれはなんだ? 魔狼じゃないぞ」
「ハイオーガまで!?」
いかん。
騒ぎになってるぞ。
「突然ごめんなさい! 私は異世界からきた冒険者のナツです。ここにいるのは私の仲間ですから大丈夫です」
大きな声で説明するが騒ぎは収まらない。
と、そこに大きな声が響く。
「皆のもの、黙れ!」
喧騒は一瞬で静まりかえる。
見るとそこにいたのは――トラ?!
これが獣人か。
周りを見渡すと確かに様々な獣人たちが並んでいた。
「ウート、説明してくれ」
「ウララ、すまないな」
「構わぬよ。説明が省けそうだ」
軽く息を整えてウートが話し出す。
「いまここに来たのが先ほど説明した異世界人のナツとその仲間だ。まもなく訪れるお互いの世界の危機を救うために、神より遣わされた者だ」
そこにヤジが飛ぶ。
「単なる転移じゃないのか? 彼が異世界から来たという証拠にはならない」
「いやそれより従えている者の方だろ。そいつらはなんだ!」
「黙れ」
ウララの一言でまた場が凍りつく。
「ウート殿の説明の途中だ」
「も、申し訳ありません」
「お許しください」
「では改めて。ナツの仲間だが、まず氷狼のヒョウは神獣様であられます」
途端に場が凍りついた。
「確かか?」
ウララの問いにはヒョウが答える。
「我は神獣なり。300年の呪いから解き放った恩義に報いるためナツを主とした」
その言葉を聞き、ウララは膝をつき礼を取る。
「大変失礼をいたしました。我は獣人国王、ウララにございます」
慌てて王に続いて部屋中の家臣が膝をつく。
「構わぬ。突然の乱入だ。こちらこそ非礼を詫びよう」
どうやら場は収まったようだ。
「配下の者が失礼をした」
「いや悪いのはこちらですから。まだこちらの世界のことも詳しくなくて、いきなり転移なんてしてしまってごめんなさい」
「驚いたよ。一応、城にはバリアも張られているのだがな」
「え?」
「『この国に悪意を持つ者は弾け』という設定だ。この時点でナツ殿御一行に悪意がないことは理解できている」
「よかったです」
「それでそのハイオーガは?」
「こいつも仲間でハイガって言います。絆を結んでますからご安心ください」
「なんと! モンスターと絆を結べるのか!」
「はい。ほらハイガ、挨拶だ」
ハイガは一歩前に出て挨拶をする。
「初めまして。ナツの配下でハイオーガのハイガと申します」
「おお! 流暢に話せるのだな!」
「この世界の仲間たちを説得するために今回は帯同させていただきました。どうぞ皆様のお力もお貸しください」
これには臣下たちも驚いている。
一人、二人と立ち上がり拍手をし始め、それはやがてこの部屋中に拡散した。
うん。気持ちは伝わったな。
ハイガを連れてきて良かったよ。




