異世界転移
アキとヒョウをしっかり抱いて、オレは時空魔法と異世界転移を唱えた。
――次の瞬間、オレたちは見知らぬ草原に立っていた。
「あれ?」
そこに立っていたのは白い服を着たこの世の人とは思えないような美しい人だ。
一瞬でわかる。
ここは神界で、この人は神様だ。
「やあ、やっと会えたね」
「神様!」
「ええっ!」
「おお、ここは久しいな」
見渡す限り、黄金色の草原。
おそらく雲の上なのか。
空には青空なのに星々が煌めき、とても神々しく尊厳な景色が広がっていた。
「え、なんで?」
「ナツくんが異世界転移するならちょうどいいと思ってね。ちょっとだけ手心を加えさせてもらったよ」
「神界に来れるなんて思わなかったな」
「すごく綺麗……」
「氷狼……いやヒョウ、お帰り」
「うむ。心配をかけてすまなかった」
「君のせいじゃない。次に来るときはほかの神獣も呼んでおこう。みんな会いたがっているよ」
「それは嬉しい。頼む」
「そうだ、神様! 聞きたいことがたくさんあるんです。今は時間はどのくらいありますか?!」
「まあ慌てなくていい。ここは時間が流れていないに等しい。ゆっくり話せるよ。少し話をしていこう」
そういうと神様は手をかざして椅子とテーブルを出した。
「あ、そうだナビィ!」
「わーい♪ 今度は忘れずに呼んでくれてありがとう!」
ナビィは収納から飛び出すと嬉しそうに神界の空を舞い、神様の肩に降りた。
「ナビィもお帰り」
「ただいま〜♪ 創造神さま♪♪」
「「!?」」
それを聞いて固まるオレとアキ。
「そんなに構えなくてもいいからね」
「いや創造神って」
「神様の神様ですよね」
「神は神だよ。差なんてない」
「いやでも……」
「まあいいから。とりあえず座りなさい」
オレたちはおずおずと席につく。
うわあ、ふんわりにも程がある!
「さて、話しておきたいのはまずここまでのことだ。みんなよくやってくれたよ。どちらの世界も心の準備が整いそうだね」
「はい、なんとかここまではどうにかできたと思っています。でもまだ異世界……ウートの世界はこれからの説明になりますが」
「あちらにはまだ時間があるからきっと大丈夫だよ。とにかくありがとう」
神様に丁寧な礼をされてしまい困ってしまう。
「それからあと一つは堕神についてだ。大元の堕神リーダーはすでに先人が滅ぼしている。残りはさして力を持たないものばかりだ。安心していいからね」
「そうなんですね」
「それも次に戻った時に懲らしめてもらえたら助かるよ」
「それはもちろん。……え、またあそこに戻れるのですか!」
「もちろんだ。次からはもうここにも転移で来れるだろう」
なんて嬉しいニュースだ!
……いやでもあれだけ泣いてあっさり帰るのも恥ずかしい気がしてきた。
でもいいや。嬉しいことだ!
「それにしても神界に転移なんて許されるものなんですか?」
「ナツは半神だからね」
「そういえばそうか」
「伝えたかったのはその二つだ。お礼とお願いだね」
「わかりました!」
「ほかに聞きたいことはあるかい?」
「いいですか?」
アキが手を挙げる。
「もちろん」
「Xデーって何が起きるのですか?」
「いろんなエリアに異世界とのルートが繋がるよ」
「やっぱり。どうしよう」
「君たちなら大丈夫だ」
「「え!?」」
「文明同士が遭遇しても取り返しのつかないような混乱は起きないだろう」
「いやでもモンスターが!」
「君たちの世界はもう準備が整っている。それにどれほど強いモンスターが来たとて君たちで対処できるだろ?」
それは確かに。
もはや敵らしい敵も思いつかない。
「この短時間でモンスターの沈静化にまで手を付けるなんて思わなかったよ。果樹園もきっといい影響になるさ」
「そうか。オレたちはいい方向に向かってたんですね」
「普通ならXデーの前に能力者の奪い合いになってめちゃくちゃになるのがオチだ」
「創造神様がくれた能力のおかげですよ。あまりにチートで誰も勝てないと判断したんでしょう」
「まあそれもあるだろうけど、すべてはナツくんの人徳だ。誰にでもできることじゃない」
「そんなもんじゃないですよ」
「支配者になることだってできたよ」
「それは夢にも思わなかったな」
「普通はその救い方が一番手っ取り早いと思うものだ」
言われてみればそうかもな。
恐怖政治で押し切ることもできたのか。
でもオレには合わないよなあ。
「フッ。そういうところだね。剣道家っていうのも大きかったのかもね」
「え?」
「礼儀と規律を重んじ、真面目で忍耐強い。芯が強く、冷静沈着で客観性を兼ね備えている」
「いや褒めすぎです」
「魔力の鍛錬と剣道がこんなに相性がいいとはね」
「それはナビィも言ってたな」
「この短時間にさしたるパワーアップイベントもなく最強格にまで上り詰めるとは思わなかったよ」
「最強格だなんて。え? 本当に?」
「もうナツくんを倒せる者は神界にもそう多くはいないと思うよ」
「えええ」
なんかめちゃくちゃ強くなってたらしい。
「さあ、そろそろ行きなさい。待ってる人たちがいる」
「そうだった!」
「ここにはいつ来てくれてもいいからね。神獣も呼んであげたいから来るときは手紙でもくれるといい」
「わかりました!」
「じゃあ最後まで頼んだよ」
「はい!」
神界に招かれるとは思わなかった。
「居心地の良い場所だったな」
「うん。本当に!」
「でしょー♪」
「主、また来よう。神獣を紹介する」
「ああ!」
改めて故郷へ!
オレは時空魔法と異世界転移を唱えた。




