正解
話し合いは続く。
「神がこっちの世界に直接関与できないのは仕様なのか主義なのかどっちなんだろう」
「主義ならもっと堕神たちは積極介入するはずじゃないか?」
「だよな。オレの前に出てくる神も時間に追われていたから主義でなく仕様だと思う方が自然だよな」
現世に干渉するには厳しい制限がある。
おそらくはなんらかの代償が必要。
ゆえにオレとの対話も時間制限があるし、二回目は本当に短いものだった。
魔王レンジャーへの指示はそれなりに行われていたのだから、収納を授けてそこに手紙を送るのはノーリスクで頻繁にできるって感じか。
「あ、手紙きたよ♪」
ナビィが教えてくれたので収納を見てみるとさっそく神からの手紙だった。
『正解だよ。どうやら堕神が絡んでいるのがこちらでも分かった。手紙のやりとりはナイスだね。教えてくれてありがとう』
「――だって」
「こっちが見えてるんだね」
「じゃあこれからはアシストはもらえそうだな」
みんなで空に向かって頭を下げておく。
宜しくお願いいたします。
――――――――――
それから二週間が過ぎた。
こちらの世界ではモンモニの反応は一度もなかった。
そして向こうの世界でもまだ魔力花火は上がらない。
これはおかしいということになり詳しく調べてみたのだが、思っていたよりも全然時間の進み方が違っていた。
まだ確証はないが、こちらの一か月があっちの一日くらいだというのがわかってきたのだ。
こっちは手紙が全然来ないなと思っていて、あっちはなんでこんな頻繁に手紙が来るのかと思っていたというオチだ。
ということでオレたちはこの世界でもモンスターの体質改善を試すべく、モンスターランドを拡張世界に作ったのだった。
手頃なモンスターを見つけると拡張モンスター世界に放り込むこんでいる。
オレたちの拡張拠点の隣にはクマくんたちの森があるのだが、そのさらに奥にいくつかの区画に分けて、モンスターたちの住処を作った。
モンスターランドで起きるトラブルはクマくんたちが対処することになっているが、これがなかなか機能している。
果樹園の効果も顕著で、最初は混乱していたモンスターたちも二、三日もすればすぐに大人しくなり、異種同士でも仲良くやっていけるようになっていた。
これはすぐにでも現実世界でも進めるべきだということになり、こっちの世界中にナツ果樹園を大量コピーで配置していくことになった。
――――――――――
魔王レンジャーは情状酌量の余地ありということになり、厳しい罰は免れた。
5人は大喜びだ。
「このまま保護してもらえますか?」赤
「なんでもやります」青
「このまま放り出されたら偽神にどんな目に合わされるか」白
「怖かったんですよ」緑
「掃除洗濯、荷物持ちなら得意です」黄
「いやだよ。面倒だ」
「「「「「そんなー」」」」」
「もう堕神の干渉なんてないと思うぞ。外界に声を届けるだけでもかなりの制限がある。姿も見せられないしな」
「え、そうなんですか?」
「裏切ったらいつでも殺せるって言ってましたよ」
「たぶん無理だと思うよ。もしそうならとっくに殺されてるだろ」
「ナツ神、やめてくださいよ」
「ナツ神ゆうな」
「お前たちの身柄は国が預かる。脅されていたとはいえこれまでの所業は許されるものではない」
「「「「「はい」」」」」
「よって拡張世界に投獄とする」
なんだよ、ウートも優しいじゃんか。
「人のこと言えないよな」
「使いどころだろ。弱くても勇者だ。モンスターランドの管理を任せよう」
確かにいいかもしれないな。
調査と報告くらいは出来るだろ。
さっそくクマくんたちと顔合わせをさせたら全員がビビって気を失った。
やっぱりダメかもな。
その後、復活した魔王レンジャーたちは、クマくんと会話ができることを知り、どうにか落ち着きを取り戻した。
実際にランドに棲むモンスターたちの豹変っぷりにも驚いて、これならやっていけると思ってくれたようだ。
すぐに立派な魔王レンジャー改めてモンスターレンジャーとして働くようになったのだった。
――――――――――
こちらの世界もだいぶ変わってきた。
そろそろ頃合いだと判断したオレたちは、ついに時空魔法と、異世界転移を試すことにした。
時間の進みが違うとはいえ、向こうに戻ればすぐにXデーを迎えることになる。
世界の交じり方はまだわからないが、時間差を使えばきっとハグレてくるモンスターも果樹園の効果で性質が変わってくるはずだ。
それらを踏まえて向こうでも万全の体制でXデーを迎える必要がある。
「行くのはオレ一人だ」
「ありえぬな。我も行く」
「当然私もだよ」
話し合いは揉めに揉めた。
「上手くいくとは限らないんだぞ」
「だからこそ一緒に行くんでしょ」
「時空を彷徨うことになるかもしれない」
「ならばこそ我も行くのだ」
全然噛み合わない。
結局、アキに「逆ならどうするの?」と
いつもの決め台詞に負けて、全員で転移することになった。
「オレも連れて行け」とゴネるウートをギルマスのカズに任せて出発の準備を進める。
まだウートがゴネているようだな。
「あのな、ウートにはこの国の王として頼んだことが山ほどあるだろうが」
「それは帰ってからやるぞ」
「それじゃ遅いんだっていってるでしょう! そもそも帰れるか分からないのに国王が行っていいわけがない」
「そうだよ。ギルマスの言う通りだ。これから全種族に説明して回るんだぞ。時間なんて全然無いんだからな」
「ぐぅ……確かに」
なんて軽いノリだけど、本当はそうじゃないよな。
「ていうかさ」
「……言わずともよい。これまで楽しかったぞ。ありがとうな」
ウートは涙を浮かべながら手を差し出す。
その手を強く握りながらオレも本当の感情を口にした。
「ウートのことはこの世界の大事な親友だと思ってるよ。お礼を言うならオレの方だ。本当にありがとうな」
そこで涙腺が決壊した。
ここにまた戻れるとは限らない。
この世界も好きだからきっと想いが届くとは思っているが、確証はない。
ウートはヒョウにもしがみつき涙を流す。
クマくんも泣きながらオレたちにしがみついてくる。
ギルマスも大号泣だ。
みんなで号泣しながらしばらく別れを惜しむのだった。
「キリがない! 恥ずい!」
照れ隠しにそんなことを言いながら旅立ちを宣言する。
「きっと帰ってくるからな!」
「おう! 待っているぞ」
「お待ち申しておりますぞ!」
「ランドはお任せください!」×5
「皆も元気でな」
「ありがとうね!」
「またねー♪」
イメージトレーニングは散々やった。
準備は完璧にできている。
きっと大丈夫なはずだ。
小さくなったヒョウを抱き、アキはオレにしっかりとしがみつき、オレもアキをしっかり抱きかかえる。
ウートとクマくん、レンジャーたちが見守る中、オレは時空魔法と異世界転移を唱えた。




