トラップ
城のメンバーに報告を済ませて、念のため再び魔王のアジトを見張りに戻ることにした。
拡張チャックで見張りの拠点に移動する。
これも本当に使える発見になったよ。
魔力バレなして転移が使えるんだからな。
明日は「魔王お出迎え大作戦」だ!
しっかり準備するかー!
翌日。
歪みの時間までまもなくだ。
城に控えていたヒョウとウートも合流する。
魔王退治とは別にもうひとつ調べておきたいことがある。
それは向こうとの時間差だ。
この後こちらで起きる歪みがいつ向こうに届くのか、今回はそれを確認できる貴重なチャンスでもある。
「何を仕掛けたの?」
「魔力花火」
「なにそれ」
「本当はクマくんを大使にしようかと思ったんだけどまだ成功するかわからないからさ。なんかあったら嫌だから花火にした」
「そりゃそうね。歪みと同時に花火が上がるなんてわかりやすすぎるわ」
「向こうには確認できたら手紙をくれって収納にメッセージを入れといた」
これで異世界間の時差がわかるだろう。
「そろそろだぞ」
「行くか!」
「「「行こう!」」」
――――――――――
「魔王さま、まもなくでございます」
「ふむ。いよいよか」
「やっと異世界にいけますね」
「万全を期したからな」
「流石でございますよ」
「向こうは魔法も使えないんだろ。ならばなんとかなるだろう」
「ホワイト、首尾は?」
「お任せください。ではこの魔法陣の上にどうぞ」
魔王たちは歪みの中心にある魔法陣へと向かった。
そしてナツ特製魔法陣の上に立ったのだった。
「時間ですぞ。参りましょう!」
「行くぞ! 異世界だ!」
――――――――――
歪みが収まり、靄が晴れる。
認識阻害をかけたオレたちの前にウキウキと魔王と四天王が姿を現した。
もちろん異世界転移などしてはいない。
ここはクマくんの森だ。
「ここが異世界か」
「深い森だな」
「なんか魔素が濃い気がしますな!」
「確かにな、グリーン。溜まったばかりだからか、新鮮な気もするな」
「当たり前だ。異世界だぞイエロー」
「浮かれるなブルー」
マジか。色分けかよ!
ホワイトってホワイト?
いかん。笑えてきた。
「ブッ」
「バカ」
「クスクス」
「聞こえるぞ」
「無理だろ。クックック」
「ワハハハ!」
「なんだよ!もういいよ」
大笑いしながら認識阻害を解く。
突然のオレたちの乱入に魔王たちは驚く。
「な!」
「生きておったのか!」
「いやそれより何故!?」
続いてクマくんたちも周囲を囲むように姿を見せる。
「んなぁ! ブラッドベアの群れだ!」
「いかん、殺されるぞ! 逃げろ!」
逃げるんかい。
それにブラッドベアの群れに殺されるって。
魔王とは本当に名ばかりだったんだな。
でも無理だよ。
外に出られないバリア張ってあるから。
ちな転移防止機能付きだ。
「な!? 魔王様、転移ができませぬ!」
「なにい!?」
「なら飛べ!」
勢いよく空に逃げようとしてバリアに勢いよくぶつかり跳ね返される。
あ、堕ちた。
「アキ、よろしく」
「はい」
アキが全員を峰打ちで昏倒させ、ウートが従属の首輪を付けていく。
王城の倉庫で犯罪者から取り上げ厳重管理していたものを借りたのだ。
はい、確保。
魔王は本当にチョロかった。
――――――――――
「で?」
「もうすべて話しました」
「いや黒幕」
「わからないのです。いつも指示がくるだけで」
尋問をするウートがこちらを窺う。
うん、嘘はついてない。
これは神眼鑑定だ。
驚くことに、魔王は人間だった。
その正体はなんと――勇者御一行様。
魔王チックな出で立ちもコスプレだった。
なんだよそれ。
ある日突然、金縛りに遭い圧倒的な力の差を思い知らされてから、その指示に従ってきたという。
黒幕とは会ったことがなく、最初に声を聞いただけ。
歪みの場所と時間はその時に貰った機械で知ることができた。
時空変換装置も同じくその時に貰えた。
その後はたまに指令が手紙が収納に届く。
聞き出せたのはだいたいこんなところか。
「世界の終わり」はその黒幕に最初に言われただけなので真偽はわからないそうだ。
なお、魔王101柱は存在していない。
本物の魔王の伝説に従って存在を匂わせていただけとのこと。
色分けと同じく、カッコいいと思ったらしい。
なんだそのセンスは。
モンスターを使役できるのは本当の魔王スキルなので彼にはそんな能力はないそうだ。
低レベルのモンスターをコントロールでいる装置も貰ったのでどうにか歪みに送り込むことはできていたらしい。
昔、スタンピードを起こしたのは本物。
そもそもコイツラが魔王を名乗ったのはほんの最近からだそうだ。
レッド(勇者→魔王)
ブルー(剣士)
ホワイト(魔導士)
グリーン(魔導士)
イエロー(ポーター/食事係)
なんか脱力した。
――――――――――
とりあえず勇者御一行は城の牢獄に閉じ込めた。
黒幕が関与してくる可能性もあるのでオレのバリアで完全包囲してある。
バリアに何か外部関与があった瞬間に強制転移で新しく作った拡張世界に放り込むこむようにセットしてある。
オレの考えを伝えるために、アキ、ヒョウ、ウートとは引き続き打合せだ。
「ここが新しい拡張牢獄か」
「全然快適で牢獄じゃないな」
「ナツくん優しすぎる」
「これでもプールやサウナは我慢したぞ」
「「「当たり前だ」」」
新しい拡張牢獄は4LDK。
個室4つに共有リビング、風呂、トイレ付き。
食べ物は庭に生っている果物だ。
「あれは害はないよ。脅かされてただけだろ」
「その割に名前つけて楽しんでたけどね」
「そこは確かに」
「そのあたりの判断と与える罰はこの国に任せるよ」
「わかった」
そこで真面目な話に移行する。
「黒幕はたぶん神だ」
「「えっ!?」」
「登場の仕方、関わり方が全く同じなんだよ。鐘の音、金縛り、姿は見せずに声だけだ」
「そうなのか」
「どういうこと? 壮大な自作自演?」
「いや、同じ神じゃないな。きっと違う別の神だろう」
神界にもいろいろあるのだと思う。
「ヒョウは堕神に連れ去られたという言い伝えが神界にはあったんだろ」
「我は見ておらぬからわからぬ」
「私はそう聞いてるよ♪」
「だとしたら話が合うだろ。ヒョウを実際に送り込んだのが魔王レンジャーなんだから黒幕と堕神が一致すると思わないか?」
「確かに」
「ナビィ、堕神のことを詳しく教えてくれ」
「そんなに知らないよー♪ 昔話として伝わってるだけ」
ヒョウが引き取る。
「堕神とは2000年前の神界戦争の時の反乱者たちだ」
「神界戦争?」
「簡単に言えば穏健派対武闘派だ」
「武闘派が負けて堕神となったのか」
「そうだ。我は穏健派として戦った」
「ヒョウ長生きだな」
「そこ?」
戦いはわずか七日で終わった。
もともと堕神を率いていたひとりの神が圧倒的な力を持っていたのだが、当時の創造神が命を賭した封印魔法で彼を封じ込めるのに成功して一気に戦争は終結となったそうだ。
「堕神たちはどうなったの?」
「残りの堕神は力を奪われて追放された」
そういうことか。
「封印が解けたってところか?」
「あるいは残党による復讐もあるな」
「封印がどうなったかなんてオレたちには知る術がない」
「そうなんだよ。でもきっとまだ解けてないんじゃないかな」
「なんで?」
「もしそうなら最初に神がそれを伝えると思わないか? オレには歪みの対処しか伝えてない」
「そうだね」
「啓示を受けた時点では取るに足らないものだったのだろうな。堕神と聞くとなにやら恐ろしいが、歪みのオマケ扱いならまだ力も取り戻せてないのかもしれぬ」
「実際に魔王レンジャーたちも戦ったわけじゃない。神の降臨というセレモニーに畏怖を抱いて従っただけだ」
どうやら話が見えてきた。
神の真似事はできるくらいに復活した堕神たちが今回の糸を引いている黒幕だ。




