魔王の見張り
ヒョウにはウートと一緒に王城で待機してもらうことにした。
頭では理解しているもののかなりがっかりしているようで尻尾が見事に下がっていた。
オレたちも見張りは交代制にしてなるべく城で一緒にいる時間を作るといったら、「別にそんなことは頼んでないが?」といいつつ、尻尾がブンブン大変なことになっていた。
神獣のくせにかわいいよな。
これまでにわかっていることはこんな感じか?
①歪みはあくまで自然発生。
②しかし歪みを察知する方法があり、魔王たちが誰かの指示でオレたちの世界にモンスターを送り込んでいる。
③時間の進み方をクリアする装置がある。
④この世界が破壊される可能性がある。
④が一番ヤバいが何が原因なのかはまだわからない。歪みに強引にモンスターを送ることで何かこの世界に負荷をかけているのか?
そして③だ。
向こうでは毎日歪みが起きているが、ここではまだそこまでのスピード感はない。
つまりこっちの異世界の方が時間が遅れている可能性が高い。
あるいは時間の流れ方が違う、浦島太郎みたいな現象が起きているのかもしれないな。
それで最低でも一年ほどの時差が生まれてしまうってことになるのかもしれない。
とにかく時空変換装置をどうにかして手に入れなければな。
その過程で世界崩壊についての手がかりが欲しい。
――――――――――
翌朝。
素振りをしているとアキから念話が届く。
「動いたよ」
ホワイトとかいうヤツが単身で外に出たのだ。
すぐにアキと合流する。
「歪みは明日だ。時空変換装置のセットだろう」
「転移はやめてーーー」
しかしホワイトはその場から消え去る。
「クソっ転移だ」
「どうしよう」
「あ! モンモニ♪」
「え?」
「こっちの世界にシンクロさせてないよ♪」
「こっちでも有効なのか!」
「再起動すれば使えるはずー♪」
急いでモンモニを出して再起動する。
するとすぐさま歪みを知らせるアラートが鳴った!
「よし!」
モンモニのマップが異世界とシンクロしており、そこに映し出されたのは日本と同じ地形だった。
「場所は……伊豆! 修善寺のあたりだ!」
すぐにアキとランクル改に乗り込む。
全力ならすぐに着ける。
「慌てないで。歪みは明日だよ」
「魔力でバレる♪」
「そうか!」
動力を魔力からガソリンに切り替える。
もちろん無音仕様なので音漏れはないが、ガソリンだとあくまでランクルなので能力はかなり落ちてしまう。
焦る気持ちを抑えながら、静かに魔王の拠点から離れていく。
十分に距離を取ってから動力を魔力へと切り替える。
微弱な魔力でもランクル改の挙動くらいなら問題ない。
オレたちは伊豆へと急行するのだった。
――――――――――
「そろそろ目視転移に切り替えるぞ」
アキの手を握り歪みのポイントに近づく。
念のため途中からは魔力カットして歩き、やっとホワイトを見つけた。
(認識阻害、本当に便利だな)
(ずっと昔から禁呪だからね♪ この世界に使い手はもういないよ)
そばには大きなクリスタルのような巨石が置かれている。
水晶か?
きっとあれが時空変換装置なのだろう。
(装置っていうから機械かと思ってた)
(オレも。それにしてもデカい水晶だな)
(どうするの?)
(ここでホワイトを倒してもいいが……魔王たちに警戒されるだけだな。使い方もわからないし)
(放置だね)
(そうしよう。ナビィ、収納からヒョウたちにこのこと連絡しておいて)
(はーい♪)
ホワイトは地面に魔力を流している。
持ち込んだ魔石も大量に使っているようだ。
かなり膨大な魔力を使わないといけないのか。
しばらくすると設置が完了したのか、ホワイトは転移で消えた。
「かなりの魔力を流し込んでいたな。加えてこの距離を二回転移か。魔石も大量に使ったようだが魔王の手下にもそれなりの力はあるんだな」
「インフレしてるからイマイチその辺が分からないよね」
まずは巨大水晶の検分。
まだ起動前だからか大きさを除いて特になにか気になることはない。
とりあえずコピーしておくことにした。
地面には大きな紋様が描かれている。
「魔法陣とかいうやつかな?」
「水晶とこれが基本セットってことか」
と、そこにナビィが戻ってくる。
「ナビィ、これ」
「へぇ、魔法陣だね♪」
「読めたりするの?」
「どうだろ……あー、全部はわからないけど時間の魔法陣っぽいなー♪」
時間の魔法……。
あ、オレそういえばタイムリープ持ってたな。
「なあ、タイムリープ」
「そうだ、ナツくん持ってるよね」
「使ったことないけど。引き出しのタイムマシーンみたいなイメージしかない」
「なにそれ♪」
「オレの魔法のバイブルだ。向こうに戻ったら全巻セット買ってやるよ」
タイムリープか。
まだ使ったことはないけれど歪みで戻る時にうまくシンクロできたら異世界転移に有効かもしれないな。
「ナビィ、魔法陣もコピー対象になるか?」
「なるよー♪」
「イメージしにくいけどやってみるか」
魔法陣に手をかざしコピーを唱える。
瞬間、頭の中で完全に術式が解析できた。
「おおっ!」
「どうしたの!?」
「術式、理解できたかも」
「ええー♪」
「……なるほどな。理解した」
このイメージをクリエイトで魔法として具現化してみよう。
「ちょっとクリエイトしてみる。待っててな」
オレは深呼吸を繰り返してから目を閉じる。
「クリエイト」
おっと。
やっぱりかなりの高難度だな。
それから体感10分――。
ようやく、時空魔法が完成した!
「お待たせ」
「どうだった?」
「うん、うまくいったと思う」
「とういうこと?」
「なんかもう異世界転移できるかも。時空変換付きで」
「「ええええええ!?」」
「さすがにすぐ使えるようなもんじゃないけどさ。試す価値はあると思う」
ってことはこの魔法陣はもういらないな。
てか――。
ならちょっと弄っておくか。
オレは地面に描かれた魔法陣に手をかざして術式を加工しておく。
「よし!」
それから拡張チャックで一度城へ戻る。
「戻りました」
「おお!」
「どうであった?」
「時空魔法を覚えた」
「「え?」」
ヒョウとウートに、魔法陣をコピーしたら術式変換ができるようになったことを伝える。
「主、すごいな」
「もともとタイムリープ持ってるからかなー♪」
「ついでみたいに異世界転移も覚えるってのはなんでだ?」
「もともと転移できるじゃん。異世界ってだけで、鏡合わせで実在するならイメージはできたよ」
「すご」
「前に横浜と桂浜で実験しただろ。アキは世界中どこにでも呼べたけど、そこらに転がってた流木はダメだった。思い入れの問題だよ。向こうからこっちは無理でも、こっちからあっちに戻るんなら行けると思う」
「うわ、なんか説得力ある」
「試したいけど一方通行か」
「こっちでいろいろ終わらせてからだな」
「それだけどさ、とりあえず魔王は片付けよう」
「攻め込むか?」
「いや、面白いこと思いついたからそれで。魔王をトラップにハメることにした」
オレは作戦をみんなに伝えたのだった。




