火口ダンジョン
そこからダンジョン攻略をガンガン進めていく。
翌日からは階層が浅いダンジョンを毎日攻略していったが痕跡は見つからなかった。
「難易度で選んでみるか」
ウートがポツリと呟く。
「どういうことだ?」
「なんとなくだよ。時間をかければワシでもダンジョンの攻略はできる。そんなところに魔王が隠れてるとは思えんのだ」
「なるほどな。一理ある。っていうかそれしかない気がしてきたよ」
「距離の効率で回ってきたけど、そもそも転移で動くんだからそこまで気にしなくてもいいかもね」
「となると……ジャポネーゼの最難関ダンジョンはサクラヤマだ」
ジャポネーゼの南にある一番元気な活火山だそうだ。
こっちでいう鹿児島の桜島かな。
本当に鏡写しなんだな。
その火山口の横に広がる大型のダンジョンはかなりの高難度で、まだ最初のボス部屋すら攻略できていないという。
めちゃくちゃ予知も反応している。
これは当たりだ。
「予知が反応した。多分当たりだ」
全員に緊張が走る。
「いよいよか」
「少しドキドキする」
「腕が鳴るな」
「言っとくけどチョロいからね♪」
気が抜けた。
本当にチョロいならいいけど。
「いや、搦手があるんだぞ」
「神眼あるよ♪」
なんか本当にチョロそうだわ。
一度城に戻って準備をすることなった。
さすがに鹿児島まで転移で行くのもどうかと思うので、ランクル改で空路をブッ飛ばすことにした。
これ、魔力で空も飛べるからな。
「日帰りできると思うけど一応、ウートはお休みもらっといてくれよ」
「なんで日帰りができるのか改めて意味がわからんな」
「目視の転移はダルいからこれで行く」
収納からランクル改を取り出す。
「いや、馬車だと半年はかかるぞ」
「あ、認識変更か」
認識変更を解くとウートの顔が一変する。
「なんだこの鉄の塊は」
「向こうの乗り物だよ。こっちじゃオーバーテクノロジーだから偽装してた」
「そんなに速いのか?」
「走っても時速300キロは軽い」
「いやわからん。なんだそれ」
「馬車は時速なら、え~っと10キロくらいか。その30倍だ」
「んなバカな」
「あとで乗ればわかるよ。それにこれ、船にもなるから水に潜れるし、空も飛べるからな」
「なんだそれ。いいな。くれ」
「いいよ」
「だよな……。え? くれるのか!」
「ウートにならこんなもんいくらでもやるよ。バレても知らんぞ」
ウートは小躍りして喜んでいる。
いいから休みもらってこい。
準備が整い(主に国王不在にまつわるあれこれだ)、ようやく出発することになった。
一旦、城から転移で森へ飛ぶ。
そこからはランクル改の出番である。
「さあさあ乗って乗って」
「うお、広いな! 拡張か!」
「二階もあるからな。普通に暮らせるよ」
「これがもらえるのか! ナツ、お前ダメ宰相の代わりに宰相やれ」
「嫌だよ」
「なら副王でどうだ?」
「なにランクアップしてんだよ。余計に嫌だよ」
そんなやりとりをしつつ。
見送りのクマくんたちに手を振って出発する。
「おお、乗り心地いいな!」
「森だからスピードが出せないな。転移だ」
森の外へ飛ぶ。
そこからはフルスピードだ。
「ぬわっ!速いな!!」
まだまだこんなもんじゃないよ!
さらにアクセルを踏み込む。
舗装されてない悪路でも軽く300キロは出ている。
「ぬわっ! ナツ! 崖だ! 崖!」
「大丈夫!」
そのまま空へ舞い上がる。
かなりの高度まであがり、方向を見定める。
あとはオートパイロットでしばらく放置だ。
とりあえずマッハ2くらいでいくか。
えーと、30分かからんな。
まあ早く着くにはいいだろう。
ウートはもう興奮しすぎてヤバいことになっている。
フジヤマが見えたらしく大騒ぎだ。
「あと20分で着くからなー」
「はあ?!」
「着いたらすぐダンジョンアタックだから準備しといてくれよ!」
「いくらなんでもそんなに速いはずが……ああぁ!!!???」
「なんだ?」
「び、琵琶の大湖!?!?」
「ほらな、すぐ着くぞ」
そして程なくして九州へ。
そこからは目視による操縦へ切替えて運転をする。
あとは南下すればいいだけだ。
「あれだな」
今も噴煙をあげている桜島……サクラヤマを見つけた。
スピードを落とし、認識阻害を強くかけて降下していく。
マップを出して人のいないエリアに着陸して、認識変更でランクル改を馬車に戻してサクラヤマの麓を目指す。
「すごいな。本当に着いたのか」
「科学力もバカにできないだろ」
「本当だな。驚いたぞ」
マップにちらほら緑点が映りだしたのでランクル馬車の速度を「早めの馬車」に戻す。
程なくしてサクラヤマの麓へ。
あとはランクル馬車を収容して目視の転移で火口付近に転移すれば到着だ。
「火口って多分暑いよな」
「噴火したらとうなるのかなあ」
「サクラヤマは一日何回も噴火するぞ」
「そうだよな。こっちの世界でもそうだ」
「よほどの大規模噴火でない限りは特に問題はない」
「じゃ行ってみるか」
「あの社があるところがダンジョンの入口だ」
山頂を見上げると少し下ったあたりにひとつだけ人工物があるのが見えたので転移する。
「「「暑い!!!!」」」
急いで中に飛び込むと、中はより暑かった。
慌てて拡張ドアを付けて中に一旦避難する。
「活火山やべぇ!」
「これは厳しいな」
「ここの難しいところはこの灼熱地獄のせいもある」
「「早く言え」」
「ナツくん、エアコンバリア」
「了解だ」
アキ、ヒョウ、ウートにエアコンバリアをかける。
「これで大丈夫だ。元がバリアだから便利だぞ」
「また変なのクリエイトしたな」
「富士山……フジヤマの頂上が激寒だったんだよね」
表に出てみると快適そのもの!
これで攻略も進むというものだ。
少し進むと赤いスライムがいた。
「レッドスライムだ。くっつかれると火傷するぞ」
「地味にうざいなこれ」
「任せよ」
ヒョウが氷の吹雪を巻き散らかす。
周囲が凍りつき、レッドスライムも活動を停止した。
「寒さに弱いんだ」
「ここ、ヒョウが無双するんじゃないか」
言葉通り、このダンジョンはヒョウの独壇場だった。
ついでにアキとウートにも氷属性の譲渡をしてみたが、アキにしか渡せなかった。
「アキは水属性持ちだからアレンジが効いた感じか。ウートはダメだったな」
「ワシは炎しか持っておらんからな」
「少ないな!」
「普通は一人一属性なんだよ。お前らがブッ壊れてんだぞ。それにオレは格闘家だよ」
「修行が足りんな。帰ったらやるぞ」
「……マジですか師匠」
その後も順調に攻略は進む。
ここに出てくるのはいつものダンジョンモンスターに火や炎属性が付加されたやつだった。
「こりゃ普通の人じゃキツイのはわかるよ」
「だろ。外は普通なら立っていられない熱さだ」
辺りにはマグマが流れていたりするし、あちこちに溶岩溜まりもある。
かなりエグい環境だ。
エアコンバリアをクリエイトしておいて良かったな。
こんなダンジョンがあるなら逆もあるだろうな。
この世界は面白い。
魔王を倒したらこっちにも拠点が欲しいな。
熱問題を苦としないオレたちは順調に攻略を進めていく。
出てくるモンスターたちは全てヒョウの氷のブレスか、マッピングによる氷魔法で瞬時に殲滅するので単なるマラソンみたいになっている。
なんといつの間にやらマップ圏内のドロップアイテムは自動で回収できるようになっていたのでますます時短になっている。
そして区切りの100階層へと辿り着いた。
「ここでラストって感じはするよね」
「なんせ100だからな」
「中にいるのは魔王なのか?」
「魔王がダンジョンモンスターになってたらちょっと笑うぞ」
「それはさすがに無いよね」
「神眼はずっと生かしてたし、途中の隠し部屋も見落としはないはずだ」
「とりあえず開けてみるがいい。みな怠るなよ」
ヒョウの言葉に全員が頷く。
そして100階層のボスフロアの扉を開く。




