出立
翌朝。
拠点で身支度を整える。
このあとSSランクの冒険者誕生セレモニーをお城でやってくれるのだ。
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「あんまり派手なのは嫌だよ」
「こじんまりしたもんだ。だが史上初のSSランク認定だからな。簡単なものでもやらないわけにはいかんよ」
「そうだぞナツ。参加してくれんとギルドの顔も立たん」
「わかったよ。簡単なお祝いならいい。服はこんなもんしかないからな」
「冒険者らしい格好で構わん。11時になったらここに来いよ。転移使っていいからな」
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という昨日の説明を経て今に至る。
時間になったので転移に指定された場所へ転移した。
「おう、来たか」
そこには王らしく着飾ったウートが待っていた。
「さあいくか。皆待ち望んでおる」
「何人くらい参加するんだ?」
「王城の人間はひと通り参加するぞ」
「えーそんなに? 全然こじんまりじゃないじゃん」
「本当ならもっと派手にやらねばいかんところだからな」
「まあいいけどさ」
「さあ行くぞ」
ウートの後をついて歩く。
部屋を出ると正装をした兵士たちがズラリと並んでいた。
彼らに囲まれるように廊下を歩く。
やがて大きな扉のついた部屋に辿り着く。
「参るぞ」
控えていた従者により大きな扉が両開きで開けられた。
そこは大広間になっており、そのまま外の広いバルコニーへと繋がっていた。
促されるままバルコニーに出るとその眼下には王都中の民が集まっているのが見えた。
「「え?」」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
私たちが姿を表すとともに集まった民衆が大歓声を上げる。
「国中を上げとるやないかい!」
「当たり前だ」
「王城の人だけだと言ったのに!」
「この中にいるのは王城の者だけだ」
「へ、ヘリクツだ!」
「噓は言っておらん」
そのままセレモニーが始まる。
「よくぞ集まった! 彼らが世界で初めて誕生したSSランクの冒険者である!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
観衆から歓声があがる。
「冒険者ナツ、その伴侶であるアキ、そして従魔のヒョウである!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
「彼らがアースドラゴンを献上したのは皆が見たであろう! だが実際に彼らが倒してきたドラゴンは三頭だ。このようなことは神にしかできぬ御業だ!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
盛り上げすぎだし、盛り上がりすぎだ!
「彼らはこのまま世界を巡る冒険に出かける。我がジャポネーゼはそれを全力で支援することとなった!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
「行き先はまだ言えぬが皆も驚く成果を挙げることを約束する! そしてその最初の旅にはナビゲーターとしてワシも参加しようと思う!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
あ、これが狙いだな。
既成事実をぶち上げたかったのか。
城内はザワついているが、民衆は大喜び。
もう撤回は無理だ。
その後も賑々しいセレモニーが続く。
最後にオレにスピーチタイムがあった。
聞いてねえぞ。
「えー、旅の冒険者のナツです。今日はこのような歓待、心より感謝しています。この国のことが大好きです。……ですがまだ世界には多くの問題が残っているとも感じています。それを一つ一つ解決して、皆さんの生活が少しでも安全で豊かなものに変えていけるように尽力します。今日はありがとうございました!」
「「「うおおおおおおおおおお!」」」
この日一番の大歓声を起こしてセレモニーは終わったのだった。
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「やりやがったな」
「なんのことだ?」
「同行の既成事実!」
「おう、助かったぞ。これで行くしかない」
「まあこっちは慣れないことだらけだから助かるんだけどさ」
「国政は大丈夫なの?」
「なんとかするだろ」
「ナツくん、毎日転移で城に返してあげたらいいんじゃない?」
「んなぁっ!!!」
「なるほど。そうすりゃ執務に問題もないな」
「ひどいぞアキ。せっかく堂々とサボれるところだったのに」
「えー? サボりたかったの!?」
「ぐぐっ。天真爛漫にバッサリ斬られたぞ」
「アキはこういう子です」
結局、城の事務方との調整の結果、ウートは毎晩城に戻り、3時間の執務時間を作ることが義務化された。
そして民衆の盛大な見送りを受けながらオレたちは城から出発するのであった。
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「結構時間取ったな」
「転移すりゃいいだろ」
「まだこんなに人がいるよ?」
オレたちは三人並んで御者の位置で延々と続く民衆の列に手を振っていた。
「城門を出れば大丈夫だろ」
「ウートなんも知らないな。城門の外には入城の列が並んでるんだよ」
「なにい!面倒だな。ノーチェックにするか」
「ダメだぞ。悪人もノーチェックになる」
仕方なく城を出たらそのままクマたちの森に向かうことにした。
森に続く道は誰も使わないし、付いてくる人がいても諦めるだろう。
「最初のダンジョンはここからどれくらいなんだ?」
「馬車で一日半だな」
「オレは行ったことのあるところにしか転移できないからな。目視できる転移を繰り返していくことになる」
「効率悪いな……ってナツは魔力無限だったか。普通なら一日一回がせいぜいだ」
「そんなもんなのね」
「飛ぶ距離と人数にもよるぞ」
「うーん。こっちでも人外か」
「まあSSランクを公表したし、多少はいいんじゃないか?」
「本当か? 隠さなくていいなら楽だけど」
「もういいよ。ワシ公認だ」
「そろそろいいんじゃない?」
「ん。そうだな。マップも近くには反応がない」
転移でまずはクマくんたちの森へ。
「おお、この距離を一発か!」
驚くウートだったがすぐに身を引き締める。
「囲まれておるな」
「大丈夫だ。みんな仲間だと言っただろ」
そこに真っ白な毛並みのブラッドベアがその巨体を現した。
「む、亜種か?」
「あいつがクマくんだ」
オレが手を広げるとクマくんは駆け寄って抱きついてくる。
この森とオレたちの拠点は繋げてあったがこのところバタバタで遊びに来てやれなかったからな。
「お会いできて嬉しいですぞナツ神! それに我が王も!」
「忙しくてな。ごめんな!」
「鍛えておるか?」
「もちろんでございます」
「話せるのだな!」
「ああ。クマくんはヒョウの弟子だ。一日もかけずに人語をマスターしたぞ」
「なんと。……ところでクマくんにナツ神と呼ばせているのにワシはダメとはこれいかに」
「勝手に呼ばれてるんだよ。ウートはダメだからな」
「ぐぬ。理不尽だな」
「クマくん、オレの新しい友だちだ。国王のウート。同じ地に住む者同士、これからは仲良くしてくれ」
「無論。ナツ神に従いますぞ」
「ウートだ。よろしくお願いいたしますぞ」
「こちらこそですぞ」
ウートとクマくんが握手してるぞ。
これってなかなか歴史的なことなのではないのか。
二人は今後の決め事を相談していた。
基本的な姿勢は「不可侵」でいくらしい。
但しお互いのピンチにはそれぞれが手助けをすることを決めていた。
うん、いい形じゃないかな。
いざという時に相互に助け合えるよう、オレが王城と東の森を拡張で繋ぐ。
普段は使わないが、何かの時の非常扉として活用してもらうのだ。
「城への根回し前だからな。まずはワシの私室に繋いでおいてくれ。ゆくゆくクマ兄たちの居住となるエリアを作らせる」
クマ兄て。
ヒョウの兄弟子だかららしい。
てかウート、ヒョウに弟子入りしてたんだな。
とりあえず親睦会だ。
デッドリーカウの肉を振る舞ってクマくん軍団と楽しく昼メシを食べたのだった。
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さていくか!
クマくんたちと別れて、まずは遠くに見える山へ転移する。
そこから次々と転移して未踏破のダンジョンへ到着する。
ダンジョンを警備している兵士たちが驚いて集まってくる。
「これは国王陛下! どうされたのです?」
「ダンジョンの調査だ。聞いておらぬのか?」
「いや聞いたのがついさっきのことですよ。早すぎます」
「SSランクのナツ殿と一緒だからな。転移ですぐに来れた」
「これは大変だ。この先のダンジョンにも王の移動速度を伝えおきます!」
結果、突然の王の訪問に砦は大騒ぎとなってしまった。
「歓待は不要だ。ありがたいが気持ちだけ受け取るぞ。すぐにダンジョンに入る!」
王の言葉に兵士たちがすぐにダンジョン開門の準備を始める。
「荷物も同行も不要だ。ナツ殿の規格外のアイテムボックスにすべて準備ができておるからな。踏破の報を楽しみに待っておれ!」
どよめきが起こり、その後、大歓声があがるのだった。




