国王
筋肉隆々の日焼けした人は王様だった。
「オレがトキョの王、ウートだ。で、お前が倒したのか!」
「え、あ、はい」
「たいしたものだな! 名をなんと言う」
「な、ナツといいます」
王様はやたら嬉しそうだ。
後ろのメンバーに目を向けたので慌てて説明をする。
「これは許婚のアキ、これは従魔のヒョウです」
「……従魔?」
「はい」
「種族は?」
「……ま、魔狼の亜種、です」
「ふむ。……なるほど魔狼の亜種か」
王様は明らかに納得していない表情だ。
「……ま、ナツがそういうのなら不敬にはなるまい。ヒョウ殿、そういうわけでこの場は許されよ」
「無論だ」
おい、バレてるだろこれ。
「只者ではないことはわかった。続きは城で聞こう。待っておるぞ」
王様はそういうと白馬に跨り、城に戻っていった。
そこに入れ違いに馬車が停まる。
降りてきたのは王の配下の方々だな。
「カズ! どういうつもりだ!」
「どうもこうも。昨日お伝えした通りです」
「あんなもの信じられるか!」
「それは宰相の判断でしょう。こちらはそのままをお伝えして、そのまま行動をしたに過ぎませんが?」
「そんな勝手があるか」
「宰相、彼がSSランクの冒険者となるナツとその仲間たちです」
「まだ認めておらぬ!」
「それは王の決めることですからね。もちろんあなたの決めることでもない」
「なんだその言い方は!」
「失礼。国王に呼ばれておりますので」
ギルマスはそういうと馬に跨り、再び先頭を開始する。
宰相とやらは地団駄を踏んでいる。
「やけに煽りましたね」
「アイツは嫌いなんだよ」
「わかる気がするな」
彼が来てからずっとアラートが鳴っていたからな。
――――――――――
「さて聞こうか」
ここは謁見の間ではない。
国王の私室である。
「こんなところに招かれるとは」
「ねえギルマス、これ普通かな?」
「んなわけあるか!」
国王のウートはベッドに腰掛けていたが、私たちが座らされているダイニングテーブルへやってきた。
主賓席には座らず、我々の向かいにどっかりと腰を下ろした。
「まあよい。まず言っておくぞ。ここは完全な私室だ。ゆえに今この場においてはワシはお前たちと国王として向き合うつもりはないからな。ラフに語り合うぞ」
「さすがにそれは」
「いや、無理ですよ」
「構わぬ。ワシはお前たちが気に入った。ワシは気に入ったやつには敬語を使わせない主義だ」
「なんですかその変な主義!」
「いいんだよ。固いのは嫌いだ」
「いやいや無理がありますよ」
「では勅命だ。これより敬語を禁ず。これがこの場における国王として最後の言葉とする」
あかん。
ガチなやつだな。
オレたちは顔を見合わせて諦めた。
「わかったよ。本当にいいんだな?」
「もちろんだ」
「よろしくねーウートさん!」
「おう!」
「!? わ、わかりま、わかった」
「怪しいな」
「ではまず聞きたい。ヒョウ殿の種族は魔狼の亜種でよいのか?」
「……違うよ」
「うむ。そのお方は神獣で間違いないな?」
オレたちは顔を見合わせてから頷く。
「はい。ヒョウは氷狼という神獣です」
ウートは席を立ち、その場で膝を折り
跪く。
「先程は行きがかり上とはいえ大変な失礼をいたしました。どうかお許しください」
「構わぬ。ましていまの我はナツを主とする身だ。お主との関係もイーブンでよいのではないのか」
「なんと。ナツ殿はそれほどの方か!」
「いやいや違いますから! たまたまヒョウが困っていたのを助けただけで」
「神獣にかけられた300年の呪いを解いたのだぞ。我は一生ナツを主とすることを決めておる」
「ならばワシもだ。ナツは神同然だ」
ややこしくなっだぞ。
「ヒョウ殿」
「待て」
「はっ」
「お前にも我への敬語を禁ずる」
「なっ! それは無理です」
「お前も我が主たちに同じことを強いておるぞ」
「そ、それは……私ごときとヒョウ殿では格が違います」
「同じだ。先に言っておこう。我はお前のことを気に入っておる。お前は我が主たちと縁があるのがわかるからだ」
「!」
「国王ではなく一人の人間としてこの場を持ったことも気に入ったぞ。我はお前を友だと思いたい」
「……」
「さあ、続きを始めるとよい」
ウートはひとつ息を吐く。
「わかったよヒョウ。身に余る嬉しい言葉だ。ありがとう」
――――――――――
「なんだそれめちゃくちゃだな」
「やっぱり?」
「魔力が無限とかクリエイトとかやりたい放題ではないか」
「そっちかよ。こっちでは歪みについての何の情報もないのか?」
「神隠しも聞いたことはないな。モンスターしか行ってないのだろ? 把握しようがない」
「それはそうだよね。こっちには神の神託を聞いたものはいないのかなあ」
「少なくともワシのところには何の報告もない」
「ならば勇者とやらは?」
「ここしばらくは勇者は現れておりませぬ」
こちらの世界には神託が届いてないようだな。
「それよりナツの能力だ」
「まあ便利ではあるよな」
「ワシもあやかりたいもんだ」
「でも国王は魔法より武闘家としてのイメージの方が強いよな」
「そっちのほうが好きなだけだ。お、お前がナビィか。ちっこいな!」
「はーいナビィだよ♪」
袋から出てきてヒョウの頭に乗っかったナビィにウートが気づく。
「ピクシーとは珍しい仲間を持っているな。さすがはナツ神だ」
「それ止める約束だぞ。敬語使うぞ」
「だが神獣の主だからな。それにナツは実際に半神なのだろ?」
「ぐっ。それは確かに。オレ半神だったな」
「それを言うならオレたちもですよ。国王にタメ口強いられるとかなんの罰ゲームですか」
「カズ、次に敬語使ったら覚悟しろよ」
「あのね、オレはギルドマスターなんですよ。公的に部下なんだから最低限の敬語じゃないと不味いでしょう! 誰かに聞かれたらそれこそクビにされますよ!」
「ワシがいいと言ってるのだからいいだろう」
「周りが許さないんですよ! 宰相あたりにバレたら不敬罪で投獄されますよ」
あ、宰相のことは一応伝えておくか。
「そのことだけど」
「「ん?」」
「宰相って人には気をつけたほうかいい」
「ほう、なぜだ?」
「オレには良縁を知らせるサインが来るんだ。ウートにも反応したよ。それと同じく厄災となる悪縁もわかる」
「宰相に反応したのか」
「ああ。それなりの強さだった」
国王は髭を触りながら思案顔である。
「ま、あいつがよからぬことを企むやつだというのはわかってる」
「ならなんで手元に置いておくの?」
アキの質問にウートはニヤリと笑う。
「ワシの目の届くところにいれば悪事も防げるからな」
「「あーなるほど」」
「知らんところでなにかされるよりはよほど良い」
「そこまで分かってるならいい。安心したよ」
「そのことは覚えとくよ。さあ、そろそろメシだ。行くぞ」
「「え?」」
「ヒョウ殿のお口に合えばいいのですが」
「次に敬語を使ったらウートもアウトだぞ」
「ぐっ」
案内されたダイニングルームは隣の部屋だった。
「よかったよ。100人くらいとメシを食わされるかとビビったぞ」
「ワシも公式な晩餐会は苦手だ。家族や仲間とワイワイやるほうがいい」
「素敵なダイニングだなー。使い勝手がよさそうだ! ウートさんもしかして料理できるの?」
「それがわかるとはアキもなかなかだ」
そういうと国王は身支度を整えていく。
おお、国王シェフだ!
「今日はワシがもてなすからな。鉄板焼でよいか?」
「いいね! なら食材を提供しようか」
「お、なにがある?」
「デッドリーカウならたんまりあるぞ」
「おお! それは良いな」
そこで思い出す。
「違う! ドラゴン!!!」
「そうだった!!」
「「「「ドラゴン祭りだー!」」」」




