アースドラゴン
アースドラゴンとやらを退治することになった。
「ヒョウ、アースドラゴンってどんなのか知ってるか?」
「飛ばないドラゴンだ」
「それは聞いた。そんなに強いの?」
「大したことなかったな」
「戦ったことあるんだ!」
「あんなの雑魚だ」
「いやいやドラゴンだからね♪」
「まあ世間的にはな。主なら瞬殺であろう。我でも秒殺だったぞ」
「二人ともインフレ起こしてるからイマイチわからないのよね」
「どうするの♪」
「倒すよ。別にどんな風評になろうとここに長居はできないし。むしろ本当に魔王に勝てるかもって流れになればラッキーだ」
「開き直り大作戦ね」
ということでアースドラゴンが居座っているという渓谷に向かう。
今はそんな渓谷になど誰も向かわないので途中から目視による近〜中距離の転移を重ね、すぐにその渓谷に到着した。
「あれか」
「大きいねえ」
渓谷をドラゴンが闊歩している。
ゴツゴツした鱗だらけの背中が見える。
とにかくデカい。
もう恐竜だろ、あれ。
なんだよあのアゴ!
オレなんて一飲みじゃんか!
ドラゴンのいる渓谷を覗き込んでいたナビィが声を上げた。
「あれれ♪」
「ん?」
「え?」
「あ!」
「三匹おるな」
みんなで見ていたアースドラゴンの向かい側から別の個体が現れる。
よく見ると草陰にもう一体がいるのがみえた。
マップでも確認したが間違いない。
「ギルマスは一匹だと言ってたよな」
「仲間が呼び寄せられたのかもな。ドラゴンの巣になるかもしれんぞ」
「三匹討伐して献上したらさすがにえらいことになりそうだな」
「一匹は納品してあとは収納しておくか」
「なら我もひとつやらせてもらおうか」
「いいよ」
ということで狩りがスタートした。
オレは献上用と保存用をレーザーで瞬殺。
ヒョウは横殴りにして粉砕。
一秒もかからずドラゴン退治は終わった。
「なんの達成感もないな」
「インフレにもほどがあるね」
「ほらね。ナツくんヤバいでしょ♪」
「それはちょっと実感したかも」
ヒョウが相手をしたやつは跡形もないからそのまま放置して、二体を収納して、街の近くまで転移する。
「ギルマス喜ぶかなあ」
「失神するんじゃないの?」
「ドラゴン肉♪」
「ドラゴンは美味いぞ」
近くからは歩いてギルドに向かう。
ちょうどギルマスが表にいたので声をかける。
「お、これから行くのか?」
「いや、倒してきました」
「は?」
「え?」
ギルマスはあんぐり口を開けてフリーズしている。
「いやいや行くだけで二日はかかるだろ」
「あー。一族の秘密……」
「……ナツお前さあ」
「…………」
(なあ、ギルマスには言っていいよな)
(いいと思うぞ)
(賛成)
(♪)
「……あの。ちょっとお話が」
「……いいだろう。部屋で聞こう」
ギルド二階のマスタールームで話を聞いてもらえることになった。
「えっと。どこから話していいものか」
「いいから全部聞かせてろ」
「長くなりますよ」
「構わん」
――――――――
全てを話した。
ギルマスは頭を抱えていた。
「とんでもない話が出てきたもんだな」
「すみません」
「……いや、むしろこっちのせいだろ」
「ということで、オレたちはここの世界の人間じゃないんですよ」
「……ヒョウは?」
「氷狼で、神獣です」
ギルマス、絶句。
「よろしくな」
なお驚く。
「は、話せたの……ですか?」
「神獣であるぞ」
「お、おみそれいたしました」
「構わぬ」
やはりこの国にとって神獣とは特別な存在のようだ。
「とにかく、魔王についての情報が欲しいんです」
「そうなるよな。でもオレも詳しくないんだ。というか……普通なら……誰も知らないだろう」
「そうなんだ」
「普通なら、ってことは、そうじゃない人なら知ってるってことかな?」
アキの鋭い指摘にギルマスは渋々と頷く。
「仕方ないよな……。ナツ、国王に会いにいけ」
「え?」
「魔王なんてのは国単位の案件だよ」
なるほどな。
「でもそんな簡単に会えないだろ」
「このあとお前はアースドラゴンをド派手に納品しろ。それでオレがお前をSSランクに推薦してやる」
「!?」
「SSランクはこの世に存在しないランカーだ。国王の許可がいる」
「なるほど。堂々と会えるわけだ」
「謁見の場でどう動くかは出たとこ勝負だが、話を聞いてもらえたらチャンスはある。ウチの国王はそれなりにブッ飛んでるからな。食いつくと思うぞ」
なんとかなりそうな気がしてきたな。
あとはド派手な献上か。
さてどうするかな。
――――――――
次の日。
城下はとんでもない大騒ぎとなった。
オレがアースドラゴンを巨大な荷馬車に乗せて登城したからだ。
先導するのはギルドマスターだ。
前日に王城の閣僚にこのことを伝えたのだが一笑されて終わったらしい。
向こうがどう受け取ろうともそれはそれ。
こちらとしてはで公式に伝えた案件である。
この時点でこれは公のパフォーマンスだ。
城門から王城へ真っ直ぐ練り歩く。
やがて城から一頭の白馬が出てきた。 次いで明らかに王が乗るような豪華絢爛な馬車が続く。
白馬は馬車を置き去りにこちらへやって来る。
これは露払いの騎士だろう。
「来たぞ。王だ」
「すごい馬車だな」
「違う」
「え?」
そこに大きな笑い声が響く。
「ワハハハ!!! カズ! なんだこの騒ぎは!」
馬から飛び降りた男がギルマスの肩をバンバン叩きながら豪快に笑う。
真っ黒に日焼けしており、筋肉隆々。
明らかに只者ではない気配がする。
これが王様?
嘘つけ、王国一の武闘家としか思えない。
この人、めちゃくちゃ強いだろ!




