初収入
姿を現す前にまず最低限の準備が必要だ。
ナビィ曰く、城内でいきなり姿を晒してはいつこんなすごいテイマーが街に入ったんだ? ということになるとのこと。
それは確かに。
なら城門から入ればいいかというとそう簡単ではなく身分がないのが問題となる。
身分を得るにはギルドメンバーになるのが手っ取り早いが、ギルドに入るには城に入らねばならない。
堂々巡りである。
なのでここはギルドライセンスのクリエイトしかない。
剣道家としてはちょっとモヤモヤするが世界を救うのだから仕方ない。
認識阻害をかけたオレが単身でギルドに潜入して適当なクラスのライセンスをコピーする作戦だ。
――――――――
(どれが必要なんだ?)
(うーん。難しいなあ♪)
(低めのでいいだろ)
(あまりランクが低いとヒョウとアンバランスなんだよね♪)
(そりゃそうか。なら高めいくか)
(高ランカーは有名人が多いのよ♪ こんなヤツきいたことないってなる)
ここでも堂々巡りか!
とりあえず時間停止して、フロアにいた冒険者から手にはいるライセンスをひと通りコピーしてから拠点に戻った。
「最低ランクのFから上はBランクだ」
「魔狼の亜種を連れてるなら最低でもAよ♪」
「ならBでいこうか」
「Bならそこそこ有名人よ♪」
「えー。じゃEあたりでいいよ」
「低すぎ♪」
「ならDとかCあたり?」
「まあそんなところよね」
「魔狼の亜種はたまたま弱ってたところを運よくテイム出来た的な?」
「それ!」
「正解♪」
Dランクのラッキー冒険者ってことになった。
―――――――
ということで。
城門がいま大騒ぎになっている。
まず列に並んだらその時点で騒動になった。
今は王城からの増援が駆けつけているところだ。
そのまま城の詰所に連れて行かれることになった。
(どうすんだよ全然ダメじゃねえか!)
(だねぇ)
(うむ。我は神獣だからな。つまりその主はさらにすごいということになるな)
(そこ持ち上げてどうする)
(まあまあ。いざとなれば逃げればいいのよ♪)
((あーね))
で、衛兵長とかいう偉そうな方に詰められてます。
「で、名をなんという」
「あー、ナツです」
(やば。細かい設定決めてないぞ!)
「君は?」
「アキです」
(ここまでの騒ぎになるなんて想定外だよね)
「こいつは私のテイムした魔狼の亜種でヒョウといいます」
「え? テイムしたとはいえモンスターに名前を付けているのか」
衛兵長は少し驚いている。
(んだよ。名前付けないのかよ!)
(異世界ドライだね)
「え、ええ。私の人生を変えてくれたモンスターですから」
「それはそうだな。Dランクでこんな強力なモンスターをテイムできたんだからな」
ストーリーはこうだ。
たまたま倒れてるヒョウを発見。
なぜ倒れていたのかはわからない。
ケガをしていたから何かの事故かモンスター同士の戦いなのかなあ。
せや、今のうちにテイムしたろ!
こんな感じで説明してみたら意外と通じた。
「何をしにトキョへ?」
吹いた。トキョて笑
え、トキョって東京モチーフ?
もしかしてやっぱりここ王都なんじゃないのか?
「まあ怪しいところは無さそうだな。なにか企むようなヤツにも見えん」
「ありがとうございます」
「その謙虚な姿勢を忘れるなよ。似つかわぬ力を手にすると油断を生むものだからな」
なんかいい人だった。
偉そうとか言ってごめん。
どうにか見逃してもらえた。
ツイてるな。
さすが豪運。
「ふぁーっ。ようやく外に出られたな」
「めちゃくちゃ見られてるね」
「ヒョウってやっぱりすごいんだな」
「神獣だからな。つまりその主も……」
「それさっき聞いたぞ」
「バレたら国に囲われるよー♪」
「えー、めんどくさいだろそれ」
とりあえず先立つものが必要だ。
ギルドに凸である。
中に入るとどよめきが起きた。
「なんだあれは!?」
「魔狼!? いやもっとデカいぞ!」
「あいつの従魔なのか!?」
「そうじゃなきゃヤバいだろ」
騒ぎを無視して中を見渡すと、壁にはたくさんの依頼書が貼ってあるのを見つける。
壁に向かい依頼をチェックしていたら、職員と思われる女性が駆けつけてきた。
「あ、あのこれはどういう???」
「あ、初めまして。旅の冒険者のナツです。仕事が欲しくて来たんだけど」
「ちょ、ちょっとお持ちくださいね」
女性は2階へ駆け上がっていった。
ここでも偉い人が出てくるのかなあ。
階段から降りてきたのはスキンヘッドのいかついおっさんだ。
結構強そうだな。
「お前がナツか。さっき城から連絡があったぞ」
「初めまして。旅の冒険者のナツです。こちらはアキ、従魔のヒョウです」
「おう、オレはここのギルドマスターをしているカズだ。よく来たな」
あ、なんか良い感じの人だな。
良縁かな。
「ランクは……なんだまだDか。こんな立派な従魔連れてんのにサボってんなお前」
「いや、従魔にしたのがつい最近なんですよ」
「そうなのか? やけに絆が深いみたいだからてっきり長いのかと思ったぞ」
ヤバい。
そんなの判るもんなのか?
この人かなりできる人だ。
「そう感じてもらえるなんて嬉しいです。オレたちきっといい縁なんですね」
「ははは。面白いやつだ。全然偉ぶらないんだな」
「ラッキーなだけですから」
「気に入ったぞ。どんな仕事がしたいんだ?」
「このチームだけで動ければ何でもいいですよ」
「ソロパーティーか。Dランクだからそこまで割のいい依頼なんてないぞ」
「コツコツやるんで大丈夫です」
「ならホーンラビットやってみるか」
街外れの農家の家の近くにホーンラビットが大量発生しているそうだ。
「討伐証明はツノだ。一匹1000Nな」
「数は?」
「かなり」
「全滅させていいのかな」
「ははは。できるならな。数減らしたと思ってくれればいいさ」
「了解だ」
場所を聞いてそのまま出発する。
街中は転移ができなくて不便だな。
「ヒョウ、ナビィ。転移はレア能力なのか?」
「何を言ってる」
「当たり前よ」
むう、面倒だな。
30分ほど歩いて依頼主の農家に到着。
作業をしている人に声をかけるとヒョウに驚きつつ、喜んでくれた。
「このあたりのホーンラビットを退治したらいいんですね」
「頼むよ。農作物の被害がひどくてな。少しでも減らしてほしい」
「全滅させていいんですよね?」
「そりゃ願ったりだ。できるものならな。その時はボーナスを出すぜ」
「忘れないでくださいよ」
気配を探ると森の中に巣があるようだ。
森に入ってマップを使うととんでもない数の反応が出る。
その数は2000匹以上だ。
「あ、あれかな?」
アキの指すほうを見ると、大型犬ほどのウサギがいた。
額に長いツノが生えている。
「思ったよりデカいな」
「ツノを残すんでしょ」
「雷撃じゃ強すぎるなあ」
あ、あれだ。
横浜で思いついたレーザー。
あれならきっと形も残るな。
「ナビィ、ウサギって地下に巣を作ってんのかな?」
「ううん。普通に地面で繁殖してる♪」
「なら大丈夫だな」
マップで一斉選択。
全てを選択できた。
「レーザー!」
ピピュンッと小さな発射音。
同時に赤点はすべて黒点へと変わった。
その数は2305だ。
一斉転移で一カ所に集める。
ここからはコツコツ作業だ。
それから3時間――。
ツノをすべて集めた。
「ふぁー!キツイ!」
「死んだら簡単に取れるんだね」
「埋葬しなきゃな」
「それ売れるよ♪」
なぬ。
なら持っていくか。
収納して依頼主の元へ戻る。
「はあ? 全部倒した!?」
「2305匹でした」
「こんな短時間に?」
「コツがあるんですよ」
「本当かなぁ」
「あ、見ます?」
そう言って収納からツノを取り出す。
「「あ!」」
突如目の前に大量のツノが溢れかえる。
「うわぁ! なんだあんた収納持ちなのか!!」
あ、もしかしてレアだったのかな。
(なにやってんのよ!)
(レアだったのか)
(収納自体はなくもないけどこの量はヤバい♪)
農家のおじさんは腰を抜かしていた。
「あのー。ついお見せしちゃったんですけどこのことはオフレコでお願いしますね」
「お、おふれこ?」
「あ。内緒ってことで」
「わ、わかった。でも本当だったのか。さすがにこんなに払えないよ」
「あ、そこはいいですよ。じゃあ払える分だけギルドには報告しておきます」
「そりゃありがたい」
「だから内緒ですからね!」
おじさんと約束して帰路につく。
「ナツくん油断しすぎ」
「こっちの世界の常識がわからない!」
「主は規格外だからな。大抵アウトだと思っておくといい」
面倒だけど仕方ないよな。
もう少し慎重にいくか。




