あの日のこと。家族への告白と誓い
新天地を作りながらふと思い出したことがある。
それは国民へ全てを開示する少し前のこと。
オレは仲間たちを集めて家族や親しい知人への開示について相談したんだ。
――――――――――
「やっぱりニュースで知るのはどうかと思うんだ。可能な限りオレたちの存在は伏せられることになっているけれど、みんなの意見も聞いておきたい」
まずアキが答える。
「実は家族が当事者で、それを最後まで黙っていたとなるとかなりショックだよね。伝えていいならもちろん伝えたいよ」
「オレもだ。黙っているのはキツかった。家族はもちろんだけど、許されるなら部活の仲間たちにも話しておきたい」
篠田も同じ意見だ。
「そうだな。みんなの気持ちはとてもわかるよ。でもな」
黙って聞いていた師匠が話しかける。
「あくまでオレ個人としての意見としてはそこはちょっと違うんだ。元々が警察官だからな。家族に言えないことがあるのが普通なんだ」
そうか。師匠はこれでも警察の人だ。
前の奥さんに関わる話だけど大丈夫かなってひかりさんを見たら、大丈夫って顔で笑ってくれた。
あー。二人ってちゃんと結ばれてるんだな。
「そっか。そういう仕事の人は確かにいるよね」
アキの言葉に師匠が続ける。
「家族と国、どちらが大事なのかって話じゃないからな。そんなものは家族なのが当たり前だ。ただ、オレは職業柄、そこに自然と線を引けてたってだけだ」
「それも含めて家族の信頼であり、絆ってことか。お互いすごい覚悟ですね」
「警察だったからだよ。でもお前らはまだ高校生だ。秘密がキツいのは当然だし、家族に話す権利があると思うぞ。きっと家町もそういうだろう」
そうだよな。
でも。
「なんかオレはちょっと考えが変わったかもしれない。聞いてもらえるか?」
前置きを置いて、感じたことを話す。
「オレたちは高校生だけど18歳はもう社会的に成人だ。あとは剣道のおかげで有名人とも言えるな。オレたちは芸能人とは違うけれど、彼らはプライバシーが保護されてるといいながら半分公人みたいなもんだ。それに似た立場だよ。ましてオレたちは政府と一緒に動いている時点で完全な公人でもある」
アキと篠田、ひかりさんも頷く。
「トドメはこの能力だ。これはもう単なる一般人だから、なんて甘えを言える立場じゃない。オレたちは世界に並ぶ者がいない超人だからな。立派な国家戦力だ。警官どころじゃないよ」
「……そうだな」
「なんか理解できたわ」
「覚悟が足りなかったね」
「うむ」
オレたちは事前開示をしないことに決めたのだった。
その後、師匠から話を聞いた家町総理や三賢者から開示を勧められたがそこは遠慮した。
その代わりに、国民発表の時は大事な人と一緒に居させてもらって、その時に秘密を打ち明けさせてもらうことをお願いしたのだった。
――――――――――
そして国民発表の日を迎えた。
オレとアキは事前にそれぞれの家族を集めていた。
場所はオレの家だ。
リモートでは何度も会っていたが、初めてのリアルな家族の顔合わせにみんなは喜んでくれていた。
それは本当に幸せな時間だった。
そして国民発表の時間まであと30分くらいというところでオレたちは真剣な顔で家族の前に立った。
「なんだなんだ?」
「ちょっと真剣な話がしたくて」
みんながオレたちを見つめる。
と、そこにオヤジの爆弾が炸裂する。
「もしかして……子どもが出来たのか!?」
へ?
「おい、オヤジ!」
何を言い出すんだ!
アキパパの前だぞ!
「それなら嬉しいニュースですよ」
はい?
お、お義父さま?
「そうね!」
あらら。
お義母までですか?
「一ノ瀬さんがそう言ってくれるならよかった!」
「ほんとね!」
「いやー私たちもおじいちゃんおばあちゃんですか」
「いやあ、めでたいなあ」
「え、え、兄弟ができるの!?」
いやいやみんな飛躍しすぎだ。
オレたちを置いてめちゃくちゃ盛り上がってるぞ。
オレとアキは複雑。
いやそこを認めてくださるのは嬉しいのだけどタイミングが違う。
このあとの高低差がありすぎだ。
ついには育児の方針についてまで話し合いだしてるぞ。
「いや赤ちゃんはいないよ!」
アキが顔を真っ赤にしてカットインした。
「なんだそうなのか」
「残念だな」
「残念ね」
「待ってるぞ」
「びっくりした……」
なんだこの人たちは。
ハルくんもいるというのに!
嬉しいけどさ。
「先に話を伝えたかったんだけど……もう時間がないな」
「放送を聞きながらにしようか」
「そうするか。えっと、このあと政府から緊急アラートが来ます」
全員が驚く。
「その案件にオレたちは関わってます。その前提でこのあとの総理からの発表を聞いてください」
「前もって言えなくてごめんね」
そこに全員の携帯からけたたましい緊急アラートが発信される。
少し遅れて外からは大きな警報が鳴り出した。
みんなが真剣な顔になった。
テレビの国営放送を点ける。
そこには「緊急放送」という文字。
そして官邸からの生中継が始まったのだった。
――――――――――
「話せなくてごめんなさい」
「ごめんなさい」
あまりに現実離れした出来事に家族は沈黙している。
最初に口を開いたのはオレのオヤジだった。
「……まだ現実感はないが……世界が変わることは今の総理の発表で理解したよ。だがナツたちが当事者として謝る理由は聞いてないぞ」
「そうですね。アキ、ナツくんと二人は何に関わっているんだ?」
「それは……」
アキを押さえてオレが話す。
「本来は機密情報ですが、皆さんにはお伝えする許可をもらいました」
「誰からだい?」
「家町総理大臣からです」
「「「!」」」
オヤジは少し冷静だ。
「まあ……そうなるか」
「え? ただの高校生に何ができると?」
「一ノ瀬さん、ナツもアキさんもただの高校生じゃありませんよ」
「え、……まさか?」
「モンスターと戦っているんだな?」
「「「!!」」」
深呼吸を一つしてから答える。
「その通りだオヤジ。……みんな、ここからは本当のトップシークレットになります。どうか驚かずにいてください」
私は人差し指を頭上高く上げ、それから見ていたテレビを指差して、収納した。
「「「「「!!!!」」」」」
「これは神様からもらった能力です。同じ力がアキにもあります」
アキは指先から水球を出してクルクル回した。
オレはアキのご両親に頭を下げてお詫びする。
「一ノ瀬さん、アキを巻き込んでしまいました。どうかお許しください」
みんなは驚き反応ができない。
「あのさ、それって異世界転生的なやつ?」
聞いてきたのはハルだ。
もしかして詳しいのかな?
「この世界に異世界のモンスターが来てるって言ってただろ。異世界転生とは逆だな」
「そっか。ローファンタジーだね」
「お、ハルは詳しいんだな」
「学校で流行ったんだよね! すごいな! ナツ兄と姉ちゃんが世界を救う救世主に選ばれたんだ!!!」
嬉しそうに喜ぶハル。
それを聞いてようやくみんなも再起動した。
「危なくはないのか?」
「はい、間違いなく大丈夫です」
「だってゾンビにモンスターだろ!?」
「あのね、お父さん、心配だと思うけどこれ正直な話ね、ガチでチョロいのよ」
みんな唖然としている。
「神様がくれた能力が尋常じゃないくらいのチート能力なんです。どんなモンスターも近づく前に1000体以上は同時に倒せます。アキでも100体くらいは瞬殺できますよ」
「「「「え?」」」」
「チートきたーーーっ!」
みんなはキョトンとしているが、ハルだけはしゃいでるなあ。
「あとナツくんがバリアも使えるからこれまで擦り傷一つつけられたことないんだよ。あ、ハル。そのお箸で私をつついてごらん」
ハルが嬉しそうに箸でアキをつつく。
「うわ、なんだこれ! 薄いなんかがある! ええー! 全然触れない!!」
みんなもいろんなものでつつき出す。
ハルくんのおかげでなんとなく話に追いついてきたようだ。
「夢じゃないのか」
「本当ですね。いきなり異世界モンスターが来てるとか言われて」
「娘がスーパーマンになってたわ」
「ナツ、あんたあとで空を飛んで見せなさいよ」
「ねえ、あと何ができるの?!」
ハルにせがまれてコピーを見せたらみんな大喜びだ。
いろんなモノを次々とコピーさせられた。
実はアキの部屋ともリンクしていることを伝えると向こうの家に行ったり来たりして大騒ぎだ。
そこからはもう普通にみんなで話せた。
この際なので2階に上がり、お部屋リゾートにみんなを招待したのだが、さすがに全員が驚いて立ちすくんでしまった。
「は?」
「いやここ部屋だよな?」
「えええ?」
「空があるよね……?」
「海も見えるわね……」
「すげえ!!!!!!」
驚く一同。
そりゃそうだよな。
相変わらず一人はしゃいでいるのはハルだ。
とりあえずもう一度落ち着いてもらおう。
こういうときはとりあえず食事。
ごはんの途中だったのでバーベキューをすることにした。
ついでにヒョウも紹介する。
気を使ってトイプードルモードで姿を現したヒョウだったが、ハルにせがまれて本来の氷狼へ戻ったら全員腰を抜かしていた。
いかん!
繰り返してる!
――――――――――
今は師匠たちもひかりさんの自宅から戻ってきて合流している。
「大丈夫そうだね」
「ハルのおかげだな」
「でもこれ、改めて秘密だってことちゃんと伝えないとね」
「そうだな。秒でバレそうだぞ」
家族のみんなはすぐにリゾートに引っ越したいと言ってくれたので、それぞれの家に拡張扉を設定することにした。
これで家からはいつでもここに遊びに来ることができる。
仲間の大切な人たちがいつ来てもいいように、海辺にコテージをいくつか建てることにした。
せっかくなので憧れの水上コテージだ!
ビーチから桟橋を繋いで、海の上に二階建てのコテージを建てる。
並べたりせずに完全に独立したやつ。
作ってたら羨ましくなったのでオレとアキの部屋も一つ作ったら、師匠たちも欲しいと言うので用意してあげた。
篠田はいらないと言っていた。
一人でこんなところは嫌だとのこと。
ちょっと泣いてないか?
かわいそうなので森の中に専用のツリーハウスを作ったらめちゃくちゃ喜んでた。
家族に話せたのはよかった。
ずっと引っかかってたものが少しだけスッキリした。
今頃、世の中は突然の発表にきっと混乱しているだろう。
でも絶対にみんなのことも守ってみせるから。
声は届けられないけれど、どうか安心してほしい。
大切な人だけでなく、この世界の人も、向こうの世界の人も。
等しく守ろうと、改めて誓った。
新天地を作りながら、そんなことを思い出してた。




