共同作戦
新種が現れる歪みの当日。
オレと氷狼がまず魔狼の出る岩手へ。
成り行きを確認した後、長崎のゴブリンと岡山のオークへ向かうことにした。
長崎と岡山はオレの到着まで包囲網を敷いて、反射と吸収のポリカーボネートで耐えてもらう。
「長崎と岡山は攻撃不可だが身を守るのも絶対だ。専守防衛、攻撃が激しければ師匠、篠田の判断で反撃もアリだからな」
「「おう」」
「頼んだ!」
そしてオレは氷狼と岩手に転移する。
「なあ、氷狼っていうのはフェンリルとはどう違うんだ?」
「簡単に言えばフェンリルは風の神獣で、我は氷の神獣だな」
「へえ! なら炎とか水とか……」
「我は聞いたことがないな。炎ならイーフリート、水からリヴァイアサンがいるが、もしかしたら狼にもいるのかもしれないがな」
「神獣って不思議な存在だよなあ」
「そうだな。だが我にしてみればナツ殿の方が驚異的な存在だがな」
「自覚ないけどな」
「そろそろだよー♪」
ナビィが時間を告げる。
あたりをいつもの白いモヤが覆う。
やがて獰猛な気配が周りを埋め尽くした。
モヤが晴れると真っ黒でライオンよりもふた回りは大きな狼が、オレたちの周囲を埋め尽くしていた。
「わー♪ 魔狼のど真ん中♪」
「完全に囲まれてる! やばくないかこれ」
「任せるがよい」
そういうと氷狼は周りを見渡しながら低い唸り声をあげた。
遠吠えではない。
ちょっとした唸り声だ。
その瞬間――。
周囲のマップの赤点が青に変わり、魔狼がその場に伏せた。
続いて遠吠え。
広域マップのすべての赤点は青に変わったのだった。
「……すげえ」
「うむ」
オレは氷狼の背中をバンバン叩きながら興奮して叫ぶ。
「すげえ! すげえよヒョウ!!!!」
「む? ヒョウ?」
「あー、なんか氷狼って長いからさ。あだ名みたいなもんだ」
「あだ名……」
「どうだ? 気に入ったか?」
「もちろんだ主」
「主?」
途端にオレと氷狼を白い光が包み込む。
しばらくするとそれは緩やかに収まっていった。
「な、なんだ今の!?」
「うわーっ♪ 絆が結ばれたよ♫」
「主が名を授け、我がそれを受け入れたからな」
「いや友達だろ。主ってのは違う」
「300年の呪いから解き放ち、我より遥かに強く、我に名を授けた。我は主を主としか認めん」
「えええ」
「結ばれちゃったもんねー♪」
こうしてオレは氷狼のヒョウと絆を結んだのだった。
その後はまず予定通りに長崎へ。
ゴブリンと対峙したけれど全く会話が通用しなかった。
仲間意識はあるみたいなんだからどうにかなるかと思ったが残念だ。
次に岡山のオーク。
こちらも結果は同じ。
どちらもマッピングからの雷撃で殲滅したのだった。
―――――――
「すげー」
「すごい」
「神獣を調伏したのか」
「いやだからそういうんじゃなくてさ。友だちだからな」
「ねぇねぇヒョウ、ナツくんが主なら私はどうなるの?」
「アキ殿は主の許婚であるのだな。なら奥方だ」
「やばーーーい! 奥方! 最高!!」
アキは大喜びだ。
「これから我はひとときも主からは離れぬ」
「いやそれは無理だ」
「無理だ」
「無理だって」
「無理である」
おいおいマジかね。
「ヒョウお前さ、魔狼より更にデカいんだぞ。ゾウくらいデカいのを連れて歩けるわけないだろ」
「む? 大きさが問題なのだな。ならサイズを下げよう」
「え?」
ヒョウはゾウサイズのその身体を、するすると小さくしていき、子犬サイズになった。
「「「は?」」」
「「キャーーー!カワイイぃぃ!!」」
男性陣は驚き、女性陣は大喜びだ。
「まあこれなら問題ないかな」
(でもヒョウ、大事な夜はダメだからな)
(むむ……まあそれは仕方ない)
通いだから毎晩ではないけどな。
たまのお泊りの日は頼んだぞ。
魔狼軍団の数はちょうど100。
お部屋リゾートは海辺モデルでどうも魔狼たちには違う気がするので、草原や森、山をベースにした森林リゾートを別に作ることにした。
……のだが。
魔狼軍団のリーダーはなんと話ができることが発覚。
かなり戦闘力の高い猛者がいたようだ。
「我らが王がナツ殿を主としたのですぞ。どちらからも離れることなどあり得ませぬ。どうかご理解いただきたい」
となると……リゾートのさらなる拡張か。
海につながる浜辺に隣接するように草原を配置。
その奥に山を配置して森を間に挟む。
うん。なんとなくまとまった。
こういうのはこだわる性格だからな。
草原に魔狼たちの住居を置く。
彼らのリクエストに沿って建物は平屋。
但しめちゃくちゃ広くして、屋上に上がれる階段もつけて日光浴もできるようにした。
あれ? 日光浴はネコか?
ま、ある分には嬉しいだろう。
家の裏には風呂の代わりに滝と湖をつけていつでも水浴びをできるようにした。
「これはいい住処をいただけた。感謝いたします」
「「「「「アオオオオーーーン」」」」」
100頭の感謝の雄叫びはなかなかのものだった!
そしてここから魔狼たちにまさかの展開が待っていた。
彼らの王がサイズダウンをして常にオレやその仲間たちに仕えているのを知った魔狼たちはすぐさま自分たちもサイズ変更ができるように特訓を始めたのだ。
さらにはリーダーがオレたちと話しているのを見て、会話もマスターしようとした。
彼らの忠誠心は凄まじく、10日もしないうちに全員がそのスキルを身につけたのだ。
その間、歪みからは魔狼が出現し続け、それをヒョウとリーダーがもれなく仲間にしていったので、群れは100単位で2日に一回のペースで増えていく。
新しく増えた魔狼たちが全員その後を追いスキルを身につけていくのがループしていく。
言葉に限らず切磋琢磨をし続けた結果、ナツの魔狼軍団は明らかに通常の魔狼の能力を遥かに上回っていくのだった。
「おい、どうするんだよこれ」
「魔狼だけで国家戦力超えてるだろ」
「エグい」
「魔狼がほとんどのモンスターを殲滅してくれるのはありがたいけどな」
ここからはその後の話ではあるが――。
1ヶ月もしないうちに魔狼軍団の数は1,000を超えた。
いずれは子どもも産まれるだろうし、もうこのスタイルを維持するのは無理だ。
群れでひとつの街を持たせないと成立しないだろう。
ヒョウとリーダーとの議論を重ねて、魔狼国を作ることにした。
すでに人間並みの知能を持っている者が多いので、畜産を教えたら見事にその仕組みを理解した。
これなら食事もなんとか回せそうだ。
草原リゾートをさらに拡張し、後は彼らに任せてみることにした。
これには家町総理と三賢者も驚いている。
この先、仲間になるモンスターがもしも増えていってもこの形ならなんとかなるかもしれない。
新しい出口が見えた気がするのだった。




