筋書き
篠田を連れてお部屋リゾートに集まる。
「こんなことになってたのかよ」
「早く言いたかったんだけどな。いろいろあって遅くなった」
「石川さんも噛んでたんですね」
「オレもこないだからだよ」
「ナツ、オレなんかが役に立つのか?」
「さっき話しただろ。オレとの相性で譲渡の精度が変わるみたいなんだよ」
「へー」
「とりあえず渡してみるよ」
「おう」
結果、初動からかなりの戦力が誕生する。
篠田健司
HP→80
MP→120
攻撃 →90(+400)
防御 →90(+500)
魔法→150
スピード→60
運→99
魔法属性 火、土
◯【肉体強化】
◯【予知】
◯【収納】
◯【語学】
●【飛行】
「すごいのかわからん」
「かなりのもんだ。ここからガンガン伸びるからな」
「へえ。……てかなんかパタパタ飛んでるんだけど」
「あ、妖精のナビィな。神界から派遣されてるナビゲーターだ」
「ナビィだよー♪ シノよろしく♪」
「いや情報量多いだろ。今の会話でひと月持つぞ」
「道場もあるからな。しっかり稽古つけてやるよ」
「師匠、ほどほどに願います」
「誰に言ってんだ?」
ご愁傷さまです。
「これさ、国体……」
「多分無理だと思う。その頃にはモンスター騒ぎでそれどころじゃなくなってると思うんだ。すまん」
「そっか……いやナツが謝ることじゃないだろ」
「とはいえな。巻き込んだのはオレの意思だ」
「巻き込んでくれてなきゃ絶縁してたよ」
「そう思って呼んだんだよ」
「はー、国体も出られねえのに師匠の特訓とはコレ如何に」
ご愁傷さまです(再)
今回の歪みは5か所。
そのうち3カ所は田舎だったが、なんと東京から2カ所が歪むことがわかった。
渋谷と三軒茶屋である。
2カ所である時点でいつもの強制転移が通用しないエリアが出る。
それぞれメインエリアど真ん中で建物が多く首都高も走ってるエリアに直撃しており、魔法での同時殲滅も通用しない。
現時点ではここでゾンビの存在が明らかになる可能性が高い。
まだ体制が整っていないので家町総理たちは秘匿する方法を検討中ではあるが、現場としては一般人の保護が最優先だ。
アタッカーが必要なのでいよいよ篠田を巻き込むことにした。
「能力が発動すればむしろ安全性は高くなる。てかこの時点で超人なんだけどさ」
「そうなのか。責任重いな」
「そこなんだ。悪いけど一緒に背負ってくれ」
篠田はニヤリと笑う。
「普段はそうはいかねーからなー。ナツに頼られんのは気持ちいい。いいぞ」
そこへ官邸から総理たちが拠点転移をしてきた。
「え? なに? てか家町総理大臣?」
「やあ、キミが新メンバーの篠田くんか!」
「あ、これ国家プロジェクトなんだわ。言うの忘れてた」
「ナツ、そういうとこな」
「だから剣道部も篠田くんがチームの要なんだよねー」
「だろ。一ノ瀬がわかってくれてれば救われるよ」
その後、メンバーが揃ってミーティングが始まった。
―――――――
「大胆ですね」
「めちゃくちゃだけど、秘匿を優先するならそれしかないか」
「政府主導じゃなきゃ無理な作戦ですね」
「風間さんが自衛隊も動かせるしバックアップも完璧ですよね」
「石川さん次第だな。内閣府特命担当大臣の責任も重いですよ」
「なし崩しすぎるんだよ!」
そう。
一昨日、空席だった内閣府特命担当大臣として石川師匠が爆誕したのだ。
「オレは国務大臣じゃねえのに!」
「民間からも選べるんですよね」
「警察って剣道家が強い組織ですからね。適任だと思います」
「ひかりー。誰の味方だよ」
「あなたの味方だよ。本当に適任だと思うよ」
「ならいいんだよ」
確かに。
上層部にも剣道家は多い。
ある意味、すでに大多数を掌握したとも言えなくもない。
「根回しとか苦手なんだよ」
「そこはほら、旭川補佐官がしっかりフォローしますから」
「警察関係者にはひかりさんファンが多いですからね」
それも紛れもない事実。
警察関係者にはひかりファンがめちゃくちゃいる。
びっくりするくらいだぞ。
実際、日本の剣道……すなわち世界の剣道は警察がダントツのトップだ。
全日本選手権は警察関係者が席巻するし、日本代表にも警察が並ぶ。
実業団選手もかなり強いけれど、警察には勝てない。
業務の一つとして日々濃密な稽古ができるし、特練員という制度もある。
話は逸れたが、政府の立案した作戦はこうだ。
今日このあと。
世界的なテロ組織から犯行声明が出る。
ターゲットは日本の渋谷と三軒茶屋。
世田谷区と目黒区、渋谷区、中野区、杉並区に緊急事態宣言が発令される。
指定区域の住民の緊急避難開始。
アメリカからの支援声明も出る。
明日
都内5区からの退避完了。
渋谷、三茶それぞれ半径10キロにはマスコミを含む一切の民間人はいない状況に限りなく近づける。
明後日
自衛隊、警察、在日アメリカ軍でテログループを殲滅。
以上である。
テロは爆弾テロを匂わせつつ、結果、何か不具合が起きたときは「未確認生物」も持ち込まれたという形にして、その後はそれを題目に民間をコントロールしていくことにしている。
アラームが鳴ってから3時間でこの作戦が立案され、採択された。
政府が味方で本当によかった。
なお、世界的テロ役はロシアが演じてくれる。
ロシア政府も追っている、めちゃくちゃ悪い組織という設定。
責任を感じており、アメリカと手を組んでこれを殲滅するという発表も追っかけで行い、両国が手を組む世界的なパートナーシップも発表することになっている。
違う意味でも世界を変えることができる両得の作戦だと思う。
「すごいストーリーだよね」
「3時間ですよ?」
「いや、ナツくんたちが参画してからいつか必要になると思ってな。吉野官房長官を中心に黒澤外務大臣、風間防衛大臣に検討してもらってきたんだ」
さすがだよ。
騙すようだが悪いことを隠そうとしているわけではないからな。
家町総理もいつかはこの異世界騒動が表に出ることを想定してストーリーを組んでいる。
今はまだパニックを抑える手順や準備が整ってないだけだ。
そのための国づくりも組織編成から大胆に手を付けようとしているからな。
現場のオレたちは少しでもそのための時間稼ぎをしなければいけない。
全てはこの国を、この国に住む人々を守るため。
そして世界を救うためだ。




