初めて
三戦目もどうにかクリア出来た。
自宅に戻り、みんなで今日の反省会を行ってる。
「さすがに危なかった」
「次は4カ所だよ♪」
そこにアキが夕飯を運んできてくれた。
「できたよ~」
アキは料理が得意だった。
小さな頃からお母さんにしっかり仕込まれていたそうだ。
これがなかなか上手でとても美味しいのだ。
「言ってくれたら運ぶのに」
「ナツくんはおつかれだからいいんだよ」
「片付けは絶対オレがやるからね」
「いいのに」
「ダメだ。作ってもらっておいて片付けまでさせられないからな」
「わかったよ。ありがとう」
今日はオムライスだ。
ふわふわトロトロ!
美味しそうなサラダとスープもある!
すごいな。高校一年だぞ?
アキが通うようになって少しずつ調味料も増えてきた。
家から持ち込んでいるのかもしれないけれど、せめて食費くらいのお金は渡してあげないとな。
とりあえず当面の食費は渡しておこう。その上でこの能力でバレずにできる副業も考えるぜ。
激ウマの料理をいただきながらこれからのことを話し合う。
「その前にアキ、これ」
「なにこれ」
「食費だ。食材だけじゃなくいろいろ買い足しもしてるだろ」
「えー。いいよ!」
「ダメだ。こういうのはちゃんとしたい派だ」
「……だよねえ。わかったよ。ありがたく受け取るね」
「うん」
「でもこれは3人のもの。明日100均でおサイフかってくるからレシートと一緒に管理しておくからね」
「ナビィもカウントされてる♪」
「よかったな。アキ、ナビィが数に入ってるって喜んでるぞ」
「当たり前だよ!」
うーん。いい子すぎる。
このままお嫁さんになってもらいたい。
絶対に離すまい!
「で、どうするのー♪」
「仲間が必要だ」
「私がいるよ」
「ナビィも♪」
「そういうことじゃない。……警察に頼もうと思ってるんだ」
「国家パレは危険だよ♪」
「ナツくん殺されちゃうのは嫌だ」
「それは困る。オレも嫌だ」
能力バレした前任者たちは国家の争奪戦の末にほとんどが命を失ったらしい。
そのために神様もここ最近は過剰チートを与えてくれているのでオレの命の心配はないと思う。
「まあとんでもないチートを渡すようにしたそうだから大丈夫だろうけど」
「そんなに!?」
「それはそうね♪ ミサイルでもナツくんは殺せないと思う♪」
「アキ、オレの能力はまだ1%しか解放してないんだよ」
「嘘でしょ?」
「だからいざとなれば何とでもなると思うから心配はしなくていい。でも揉め事は嫌だから細心の注意ははらうよ」
アキもようやく安心したようだ。
「じゃあどうするの?」
「厳密には警察組織じゃないな。警察に勤めている個人を頼る」
「……確かに警察には剣道家が多いね」
「へえ♪」
実は剣道家は縦と横のつながりが深い。
特に横はかなりヤバい。
剣道をしているというだけで可愛がってくれる人はめちゃくちゃ多いのだ。
「ひとりだけ、本当のことを伝えておきたい人がいる」
「誰? あ!」
「うん。石川師匠だ」
石川さんはオレの剣道の師匠だ。
小学校に入る前から弟子入りして面倒をみてもらった。
今のオレはこの人抜きでは語れない。
「今は警視庁の剣道部の監督をしてるって聞いた」
「石川さんなら頼れるね」
「二冠を取ったから挨拶にいくのも当たり前だしな。連絡をしてみようと思う」
石川さんならきっと力になってもらえるはずだ。
「あと……迷ってるのは篠田だ」
「親友だもんね」
「巻き込みたくはないけど、あいつに隠しておくのは無理だ」
「へー♪」
「いつかこのことが表に出るとしたらだけど。あいつは黙っていたことを許してくれないだろうな」
「わかる気がするな」
「素敵な関係だね♪」
あとは頃合いでそれぞれの両親には打ち明けることも決めた。
ある程度の共有をして、反省会はお開きとなり、台所食事の片付けをしていたら、アキが唐突に話をしてきた。
「ところでさ」
「ん?」
「私の助けはいらないの?」
来たな。
「唯一、すでに全部知ってる人間で説明不要だよね。なにより……ナツくんの恋人だよね」
「……だからだよ。アキをモンスターと戦わせるなんてありえない」
「これでも全国トップクラスだよ」
「……」
「ナツくんの力になりたいって思うのは当たり前のことだよ」
「力を譲渡するのは構わない。むしろ何かあった時のために能力は覚醒させておきたいと思ってるよ」
「だったら!」
「でも無理だ。アキを前線に出すくらいならテレビに出てこのことをバラして国に対処させるよ」
「!」
「ごめんなアキ。信じてるとか信じてないとか、勝てるとか勝てないとかそういうことじゃないんだ」
「……」
「愛してる人をひとりで戦いには出せない」
「……そっか」
「……だから」
「?」
「オレのそばにいろ。隣で戦ってほしい。それなら絶対に守れるから」
「!」
アキが泣きながら抱きついてくる。
「それでいいよ。家で待ってるだけなのが心配で悔しかったんだ」
「いま探してるのはオレの代わりにほかの場所で戦ってくれる人だ。アキは隣にいてくれ」
「ありがとう」
いつの間にかナビィは袋に戻ってた。
呼び出すまで出てこないだろう。
キスをした。
そして。
なんか止まらなくなった。
今日はご両親から初めてのお泊り許可をもらった日だ。
とても大事な日になった。
翌朝。
二人で初めて起きた。
目を開けたら先に起きていた天使と目が合った。
ちょっと照れた顔で笑うアキがとてつもなく愛しい。
きっとこの気持ちは100年経っても変わらないっていう確信がある。
「おはよう」
「おはよう」
オレたちは自然とまた抱き合うのだった。
「やらかしたー!」
「ナツくんが悪い」
「アキだって!」
今日はハルの中学への出稽古の日だ。
あと一回、もう一回が止まらなかった。
仕方ないだろ!
「転移だな」
「えー、大丈夫なの!?」
「卒業生だぞ。夏休みの校内なんてチョロいぜ」
無事に転移をしてギリ間に合った。
体育館に入ると剣道部員たちが出迎えてくれた。
先頭で満面の笑みで誇らしげにしているハルがいた。
兄ちゃんは張り切っちゃうぜ!
いいところ見せるからな!
その日はとても幸せで充実した一日になった。




