公認
翌日、メディア取材を終えてオレたちは東京に戻った。
夕方になっていたので今日はこのまま部活も休み、明日からいつもの剣道生活に戻ることになる。
「アキは空港に家の迎えが来るんだよね? じゃあそこで解散だな」
「え、なんで? 一緒にクルマで帰ろうよ」
「いいの?」
「もちろんだよ。パパも喜ぶよー」
アキのご両親とは試合会場で前に顔を合わせている。
お二人とも剣道家で、とても気さくで仲の良いご夫婦だ。
空港でご挨拶すると向こうから送ることを提案してくださった。
お言葉に甘えて送ってもらうことになった。
「ナツくん優勝おめでとう」
「ありがとうございます。相乗りもさせてもらっちゃってすみません」
「いいに決まってるだろ。アキの憧れの先輩だからな」
「あ」
「ん?」
「あの、実は……『パパ! 私たち付き合うことになったんだよ!』」
「なんだと!?」
お父さんは路肩にクルマを停めてこちらを振り返る。
「本当か!」
オレの目をじっと見る。
ここは譲れないな。
「はい。アキさんとお付き合いをさせてください」
「本気なんだな」
「もちろんです」
途端にお父さんは破顔する。
「やったなアキ! よかったな!!」
「イエーーーイ!」
お父さんとアキ、ハイタッチしてます。
「へ?」
「前から応援してたんだよ。早く告白しろって何度背中を押したことか』
「え?」
「ナツくんなら間違いない。生涯食いっぱぐれることなんてないぞってな」
「えええ」
「それは冗談だけどな。私も剣道家だ。剣道を見ればその人のことは大体はわかる。ナツくんの剣道は真っすぐだ。安心してアキを任せられるよ」
そう言ってお父さんは握手を求めてくれた。
その手を握り返してオレもようやく笑顔になれた。
「今度家に遊びにおいで。ママもナツくん派だから安心しなさい」
聞けば家族でアキの気持ちを応援してくれていたそうだ。
「私は大切な人への隠し事が嫌いなの。だから最初からナツくんのことが大好きだって伝えてたよ」
いい子だなあ。
そしてなにより嬉しい。
そのままの流れでご自宅に遊びに行く日も決められてしまった。
楽しみだからいいんだけど、展開早いな。
「このままナツくんのご両親にも挨拶したいなあ。いや、いきなりは迷惑だな」
「あ、いま僕、一人暮らしなんですよ」
「「え!」」
「アキにも言ってなかったよな。春に父が転勤になって、母も一緒に北海道に行っちゃいました。あの二人、めちゃくちゃ仲良しなんですよ」
「えー、ごはんとかどうしてるの?」
「自分でやってるよ」
「料理なんてできるんだ」
「いや、得意だと言えるのはもやし炒めくらいだな。目玉焼きは作れるようになったけど、卵焼きは途中からスクランブルエッグになる」
「洗濯とか掃除とかは?」
「洗濯は合宿とかでやってるからまあなんとか。掃除は……したことないな」
「えー」
そこにお父さんが爆弾を落とす。
「それならたまにはアキが行ってあげなさい」
「えっいいの!?」
「当たり前だ。但しお泊りはママの許可が降りてからだぞ」
「やったーー!!」
なんだこれ。
どんだけ信頼されてるんだ。
こうなると逆にちゃんとしないとなってなるのが不思議だ。
家まで送り届けてもらい、お礼を言って二人とはお別れした。
久しぶりの自宅だけど、確かに誰もいない家に帰るのはさみしいもんだな。
こうなるとアキが来てくれるのが楽しみで仕方がない。
「ナビィ」
「はーい♪」
「なんかいろいろありすぎだよな」
「本当にねー♪」
「剣道とゾンビと恋愛って共存できんのかね」
「同時並行でいろいろあったねー♪」
「ほんそれ。歪みはまだしばらく来ないのかなあ」
「ナツくんのスキルも増えたから能力も伸びてるだろうし、モンモニの精度もきっとあがってると思うよ♪」
「ってことは今日明日に歪みは起きないか」
「多分大丈夫じゃないかなー♪」
前回は1時間前にモンモニが反応した。
その後も毎日夜な夜な色んなスキルを試したり、魔力トレーニングをしてるからな。
ナビィの言うとおり、オレの基礎能力とリンクするモンモニの精度もあがっていると信じたい。
さて今日も魔力トレーニングだ。
コツコツやることは性に合ってる。
転移できる場所も増やしておきたいし、夜中のうちにポイントを増やしておこうか。
幸い、大会や練習試合、合宿で日本各地を転戦している。
飛べる場所は多いから夜中のうちに転移ポイントを整理することにした。
―――――――
「ひぃー、なんか疲れた!」
「疲れないはずなのにねー♪」
「身体は疲れなくてもメンタル的には疲れるんだよ」
今日だけでかなりのエリアを回った。
札幌、仙台、北関東全て、金沢、長野、名古屋、京都、大阪、和歌山、広島、高松、九州全県、沖縄。
よくもまあこれだけ行ってたもんだ。
土日は近郊、夏休みなんかは遠征しまくってたからな。
大会も地方が多かったし。
これだけでも全国どこでアラートが鳴ってもおおよそはカバーできるだろう。
今後は東北、中部、四国をもう少し増やしていくことにしよう。
夜が白白と明けていく。
真夏の力強い入道雲が早くも遠くに見える。
夏の朝は大好きだ。
オレらしく欲張ろう。
この夏は世界を救い、剣道を究めながら、全力でアキと恋をするのだ!




