大好きな人
思いっきり告白してしまった。
アキは黙ってオレに抱きついてくる。
そして、やがて泣き出した。
「どうした?」
「……うれしい」
「オレもだよ」
しばらく抱き合ってから、そっと離れて手を差し出す。
アキはその手を取ってしっかり握り直してくれる。
「あのさ」
「うん」
「話しておかなきゃいけないことがある」
「なんだろう」
「いま大きな問題を抱えてて」
「………」
「大抵のことはなんとかなるって思うんだけど、これはとてもそう言い切れないようなものでさ」
「……」
「そのことを隠したままなのは、なんかズルいんじゃないかなって」
「……うん」
「でも信じてもらえるかわからないし、もし信じてくれたとしてもそれはそれでアキを不安にするだけかもしれない」
「……気持ちは変わらないよ。だから話してくれたらうれしい」
能力バレはやめろと言われた。
でもアキには隠し事はしたくない。
もしこれで周りにバレたとしても、それはもう仕方ないことだ。
うん。話してみよう。
「どこから話せばいいのかな。……見せたほうが早いかな」
「?」
マップで周りに誰もいないことを確認する。
「えっと。驚かないでね」
「……がんばるよ」
オレはそばにあったバスケットゴールを指さす。
「?」
「消すね」
「?」
瞬間、バスケットゴールが消えた。
「!?」
「戻すね」
バスケットゴールが元の場所に出現する。
「………」
「あとこんなことも出来る」
ふわっと身体を浮かせる。
そして指の先から小さな炎を出す。
アキは目をまんまるにして固まっている。
「驚かせてごめんな。一昨日、神様に会ってこの能力を渡されたんだ」
アキがようやく言葉を発した。
「……えーっと。これは夢かな?」
「夢じゃない」
「ナツ先輩は……魔法使いになった?」
「まあそんな感じだな」
「………マジ?」
「マジだ」
ひと呼吸おいて、アキが叫ぶ。
「すごーーーーーーーーい!!!!!」
「え?」
その反応は想定外だぞ。
「だってだってだって! なんか浮いてたよね? バスケットゴール消したよね? 指から炎出してたよね?」
アキは興奮したまま一気にまくしたてる。
「う、うん」
「ヤバーーーーーーいっ!」
なんか想像と違うな。
「あの……ドン引きされると思ったんだけど」
「しないよ!」
「まあ。それならよかったけど」
「やっぱりすごいなあ」
「へ?」
アキはオレの両手をとって熱い目をして一気に語る。
「もともと私にとってナツ先輩はスーパーヒーローなんだよ。世界一剣道が強くて、世界一かっこよくて、世界一優しくて」
「いや褒めすぎだよ」
「私にとってはさ、スーパーヒーローだと思ってた人がやっぱりスーパーヒーローだったってだけだよ」
……なるほど。
「だから全然気にならない。私の大好きなナツ先輩が、信じてたとおりのすごい人だった。それだけだよ」
はしゃぐアキになんか救われた気がした。
「なんかさ、話してよかったよ」
「うん!」
「ちょっと怖くてさ。一昨日からずっと不安だったんだ」
「話してくれたらよかったのに」
「いや無理だろ」
そのあとも神様から聞いたことをそのまま伝えていく。
モンスターが時々現れること。
本当にゾンビが現れたこと。
大晦日の夜にこの世界が異世界と混ざること。
「なんかすごいものを抱えてたんだね」
「だろ。なんかリアルじゃなくてさ」
「てっきり私はお金の問題とか女性の問題なのかと思ったよ」
「そんなの無いって」
「そうだよねえ」
ふと公園の時計を見たら会食までもう1時間を切っていた。
「あ、やべ。時間!」
「あ」
二人で走り出す。
自然と手をつないで。
「あ、このことは誰にも内緒な」
「もちろんだよ」
「なんかさ、能力バレした前任者たちはほとんど殺されちゃったらしくて」
「えええ!? なんでそんなことになるの?」
「世界中で能力者の取り合いになってその末のオチらしいよ」
「こわっ。モンスターよりヤバいね」
「まあ、当時はここまでぶっ飛んだ能力を授けてなかったみたいなんだけど」
「ナツくんのはぶっ飛んでるんだ」
「激ヤバのチートらしい」
呼び方がナツくんになったんだな。
でもまあ、オレたちが付き合ったからって別に問題ないしな。
こっちはバレても全然平気だ。
むしろそばにいるのが当たり前になれば何か起きてもアキを守れる。
「アキ、顧問にオレたち付き合うことになったって伝えていいか?」
「もちろんだよ」
「帰ったらみんなにも話そうな」
「うん!」
立ち止まる。
そしてもう一度アキを抱きしめる。
「信じてくれてありがとうな」
「当たり前だよ」
「アキだけは何があっても守るから」
「……うん」
「だからずっとそばにいてくれ」
「うれしい」
そして。
初めてのキスをした。




