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サンドリヨン・コンプレクス  作者: 三浦 蝶形骨
5/6

十六枚

始まりは、タグだった。

ほのかの投稿に、場所タグがついていた。

駅から徒歩三分のカフェ。


ただ、タップした。


そのカフェの投稿の中に、ほのかが背景に映っている写真があった。

他人の投稿だった。

窓際の席で、誰かと話しながら、笑っていた。


保存した。


保存してから、気づいた。

なんで保存したんだろう。


次の日も、タグを開いた。

ほのかの投稿についていたタグを、片っ端から遡った。

全部見た。


公園のタグ。駅のタグ。美術館のタグ。

図書館のタグ。古着屋のタグ。動物カフェのタグ。


古着屋のタグに、一枚、目が留まった。

似た髪型だった。

拡大した。

違った。

別の人間だった。


スマホを置いた。

コーヒーでも入れようかと思って、やめた。

また手に取った。


一枚見つけるたびに、保存した。


アルバムを開いた。

ほのかの写真が、十四枚になっていた。


十五枚になった。


十六枚になった。


これは、調べているだけだ。

何を?


---


悠馬と、その週末に会った。

いつものように笑って、いつものように話した。


家に帰ってから、思った。

今日、目の前にいたのに、一度も悠馬のことを考えていなかった。


スマホを開いた。

ほのかのアカウントを、開いた。


---


十六枚のほのかが、並んでいた。


笑っている顔。

話している顔。

下を向いている顔。

背中。横顔。


全部、そのまんまだった。


この顔を、悠馬が知っている。


悠馬はこの顔を、リアルで見ている。

この顔と、話している。

この顔の隣に、いたことがある。


胸の奥が、じわじわと熱かった。


---


十六枚目。


公園のベンチに座って、遠くを見ているほのか。

誰かの投稿の、端に映っていた。


何を見ていたんだろう、と思った。


わからなかった。


わからないのに。


拡大した。

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