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サンドリヨン・コンプレクス  作者: 三浦 蝶形骨
3/6

だれ

悠馬と、何度か会った。


パーティーの数日後、食事に誘われた。

行った。


ごはんを食べて、映画を見て、夜景を見た。

悠馬はいつも、いい店を選んだ。

いい服を着ていた。

いい車に乗っていた。


悠馬と並んで歩くと、視線を感じた。

羨む目だった。

それが、気持ちよかった。



悠馬は私を、アクセサリーにしたかったんだろう。

私も、悠馬をアクセサリーにしていた。


悪くない。むしろ、清潔な関係だと思った。

欲しいものが、最初からわかっている関係だから。


---


「真白さんって、何考えてるかわからないときある」

三回目のデートの帰り道、悠馬が言った。


「そう?」


「うん。笑ってるけど、なんか、遠い感じがするときがある」

笑えた。


「考えすぎだよ」

笑ってそう言ったら、悠馬は少し、傷ついた顔をした。


アクセサリーが、感情を持つな、と思った。

思ってから、私も同じだと思った。


---


四回目、夜景の見えるバーだった。

グラスを傾けながら、悠馬が言った。


「真白さんのこと、もっと知りたい」


「たとえば?」


「全部」


私の全部を知ったとき、悠馬は何を見るんだろう。

計算して作った顔を。

投資と回収で考えてきた美しさを。


「好きな食べ物とか」


「ラーメン」


「意外」


「そう?」

悠馬が笑った。私も笑った。


全部知りたいと言いながら、ラーメンで意外と言う。

全部、なんて、たいしたことない全部だった。


帰り道、手を握られた。

温かかった。


うれしいか、と自分に聞いた。

悪くない、と思った。


握り返した。


---


家に帰って、スマホを開いた。

悠馬からLINEが来ていた。


『また会いたい』


『また会おうね』


そう送って、なんとなく、悠馬のインスタを開いた。

海外出張の写真。ビジネス系のイベント。たまに友人との食事。


それなりに、作っている。

でも、私ほどじゃない。


適当にスクロールしていたら、指が止まった。


タグ付けされた、別のアカウントの投稿だった。

悠馬が映り込んでいた。


明らかに、親しい距離だった。

私の見たことのない表情をしていた。

慈しむような、愛おしいような目線を。


ああ、本命なんだな。

直感した。


べつに関係ない、とも思った。

でも指が、そのアカウントをタップしていた。


honoka。


投稿32枚。フォロワーは427人。


最初の一枚を見た。

ピントが甘い写真だった。

閉じようとした。

閉じなかった。


もう一枚、見た。


また、もう一枚。


空の写真。

家族との集合写真。

猫の写真。

友達との旅行。

雨の窓。

誰かの手。


全部、盛っていなかった。

全部、計算がなかった。

全部、なんでもない写真だった。


なんでもない写真なのに。

スマホを持つ手が、少し、熱かった。


気づいたら、十枚、遡っていた。


ただ。

もう一枚、見た。


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