陰謀とハッタリ
割られた樽からは最初、ごく普通に薬草が出てきた。なぜ、おっさんが叫んだんだ?そう疑問に思っているとトウゴウと呼ばれた副官が樽をひっくり返した。
『ゴトッ』
すると薬草の中か固い金属製の球体がいくつか出てきた。長い船上生活でも見た覚えがない。なんだこれ?
「こ、これは・・・まさか!?」
「ええ、そう魔導球よ」
「くっ!」
驚くジェイド、ドヤ顔のリリアーヌ、くやしそうなシリウスのおっさん。なんだ、大陸北東部ではメジャーなの?
「シリウス殿、ジェイド殿、これは何ですか?いったいなにがあった・・・」「私から説明しちゃいましょう」
船長の疑問文をリリアーヌさんがかぶせて説明を始めた。
「えと、ちなみにこんなもの見たことある人、います?」
船員たちは互いに目くばせしあったが誰もわからなかったようだ。一瞬、奇妙な沈黙があたりを包んだ。
「はいはい、良かったわ。まあ、あたりまえだけど・・・」
そういうともったいぶった感じで魔導球を一つ手に取ると不意をついておっさんに向かって投げた。
「ひや!!」
奇声を発してちぢみあがった。
「いやあね。これくらいじゃ爆発なんてしないわよ」
爆発と聞いて船員たちも固まった。っていうかそんなもん投げるな!!
リリアーヌさんは詳しく説明を始めた。
「これは中に炎と大地の精霊が閉じ込められている球体よ。簡単に言ってしまうと爆弾。それもとびっきり強力な、ね。作ったのは最近、大陸北部でブイブイ言わせてるヴェール帝国、今ままでも数回北東部諸国に武器を売っていたみたいですけど・・・今回は新兵器の実験、まったく少しは考えなさいよね!!精霊の眷属たる私たちの目の前でこんなモノを使うって意味を!!下手しなくても戦争よ!!」
おっさんは今気が付いたようで真っ青な顔をして震えている。
「だから、私が個人的に船を拿捕してあげたってこと、分かった?」
う~ん、政治ってよくわかんないけど
「ちょっと医薬品はすぐ届けないといけないんだけど・・・もう解放してもらえるの?」
「あら、坊や。いい質問ね。でも答えはNOよ」
「な、なんでもう武器は見つかったんだし、薬だけ届けてもいいじゃない!!」
なぜか船員たちは「落ち着いて!!」「穏便に・・」「おこらせないで・・」
全く、男気ってもんが足りない。
「坊や。確かに薬だけ渡してもいいんだけど・・・彼はどうするの?」
チラッとおっさんを見る。
「彼は解放できないわ・・・いろいろ聞かなきゃいけないしね」
「じゃあ、置いていくから・・」「それはダメです・・・」
ジェイドの兄ちゃんが苦虫をかみ殺したような表情でつぶやいた。
「この輸送は北東部諸国の共同事業です。責任者である私と彼、どちらかかけても各国に不信感を与えてしまいます。それではたとえ無事ついても円滑にそこから運びだすことができません・・・」
彼は悔しげに
「それでは、間に合わない・・・」
それはつぶやきにしては大きく、懇願にしてはあまりに弱々しかった。
「まあ、残念だけど今回は身から出た錆。悪いけどあきらめて・・」
「ふざけんじゃないわよ!!」
私は大きな声を上げるとリリアーヌさんをにらみつけた。
「坊や・・悔しいかもしれないけどこれが大人の世界なの。よく覚えておきなさい。大人の世界じゃメンツを保たないとやっていけないの・・・少なくともそこのデン王国はそれを踏みつけた。自業自得ってやつじゃない」
「ジェイドの国は関係ないでしょう!さっきもビックリしていたもん!」
「かわいそうだけど無理ね。私たちから見れば同じ人間の国だもの。ほらジェイド殿も分かってるでしょう」
「えっ・・」
みると唇を噛み締めてはいるが視線を下げたまま一切の反論をあきらめているようだった。
「・・・・・」
「それじゃあね、坊や。このまま近くの私たちの港に連れて行くからそこであなたたちは解放。シリウス殿にはちょっと不幸になってもらいます。ジェイド殿にもお話を伺いますよ。よろしいですね?」
「わかり・・・」「ちょっと待った!!」
再び注目を集める私。
「・・・なにかしら、坊や。いい加減にしないと・・・」
サーベルの切先を私の喉にあて
「殺すわよ」
マジで怖いけどここまで来たらいうことは言ってやる。
「勝負よ!おばさん!!」
「おば!!」「やばい!!」「なんてことを!!」「おお、神よ」「艦長落ち着いて!!」
なぜか向こうの船員が大騒ぎしている。
「・・・坊や。いい度胸だね!死にたくないのかい?」
顔は余裕たっぷりだが目が全く笑っていない。よく見ると青筋を浮いている。
「もちろん、死にたくない!でもこの勝負が怖かったら俺を殺せばいいさ!」
私はにやりと笑うと
「勝負が怖くて俺を殺したらあんたのメンツは丸潰れだ!」
リリアーヌさんは青筋を収めると
「・・・くくく、やるじゃないさ、坊や。私はそういうの好きさ」
「俺が勝ったら船ごと解放しろ。魔導球はもちろんおいていく」「じゃあ、私が勝ったら?」
「俺の命をやるよ!」
「いいね。坊や、惚れちまいそうだよ。いいだろメンツを盾にされちゃあしょうがない。その勝負、受けてやるよ」
私は心の中でガッツポーズをとると同時に勝負について何も考えていなかったことに気付いた。どうしよう・・・
やっと一万字を超えました。少しは読みごたえ出てきましたかね?




