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幻覚教育  作者: 月海みやび


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9/13

Case9

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


警備員の制止も聞かず、目的の部屋へと歩を進める。


「こんなの、間違ってます!」

「⋯いきなり何ですか?」

「私、青葉台小学校で教員を務めてます。水野千尋と申します。」

「小学校の先生が、何の御用でしょう?」

「幻覚教育なんて、間違ってます!痛みや苦しみを味わわせなくても⋯言葉できちんと話せばわかってくれます!」

「甘いですね。話せばわかるなんて⋯。そんなの、良い事と悪い事の区別も付かないような子供にだけですよ。」

「っ⋯!そんな事ありません!」

「では⋯。どうして悪い事だとわかっていながら、罪を犯すのですか?」

「っ⋯そ、それは⋯」

「人は、他人の痛みには鈍感なのです。だから、頭では悪い事だとわかっていても⋯。軽く考えてしまう⋯。本当に他人の痛みを知るには、自分が体感するしかないのです。⋯あなたも、体感してみますか?何も問題がないのなら、エラーになりますし⋯。無意識に誰かを傷付けた事があるなら⋯。この制度の必要性がわかると思いますよ?」

「私は、誰かを傷付けた事なんてありません!」

「でしたら⋯。」


証明してみろと言うように、ゴーグル一体型ヘルメットを渡される。


「わかりました。ただし、エラーが出たら⋯!幻覚教育なんて、やめて下さい!」

「⋯検討致します。それでは、拘束させて頂きますね。」

「っ⋯!?拘束⋯!?」

「安全に最後まで受けて頂く為ですので。」


反論する間もなく、拘束される。


「では⋯。いってらっしゃいませ。」


一瞬で世界が変わる。

目の前には、優しい先生が居た。


『水野さんなら、大丈夫よ』


⋯大丈夫?

⋯何が、大丈夫なの?

私は、大丈夫じゃないから相談してるのに⋯


『水野さん、頑張って!』


⋯頑張る?

⋯これ以上、何を頑張ればいいの?

頑張れないから、頼っているのに⋯


『先生は、水野さんの味方よ』


⋯味方?

何もしてくれないくせに、そんな薄っぺらい言葉で誤魔化さないで⋯!


心の中で叫んでも、声に出す事が出来ない。


先生は、優しく微笑み続けていた。

自分の言葉で私が傷付いているなんて、微塵も思っていないような⋯


涙がこぼれる。


⋯目の前の先生は、私だったのね⋯

⋯そして、今の私は⋯

私が、今まで無自覚に傷付けてしまった生徒⋯


「っ⋯ごめんなさい⋯」

「⋯幻覚教育の意義、理解して頂けましたか?」

「⋯はい⋯自分が、生徒を傷付けてしまっていたなんて⋯幻覚教育で、自分が言われて初めて気付きました⋯」

「⋯あなたが、生徒を想って励まそうとした事は⋯。決して、悪い事ではありません。でも⋯。善意で傷付く人も居ます。それを理解した上で、これからは生徒に寄り添ってあげて下さい。」

「⋯はい⋯」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。幻覚教育の廃止を訴えて来た、水野千尋ですが⋯。幻覚教育を体感し、意義を理解して頂けたようです。そして、自らが無自覚に生徒を傷付けていた事にも気付き⋯。教師としての在り方を、今一度考え直すとの事です。」

「そうか⋯。今回は、予期せぬ幻覚教育にも関わらず⋯。よく対応してくれた。これからも、よろしく頼むよ。」

「はい。これにて、幻覚教育を終了致します。」

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