Case9
目には目を、歯には歯を⋯
暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯
犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。
ならば、痛みを知ればいい。
そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯
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警備員の制止も聞かず、目的の部屋へと歩を進める。
「こんなの、間違ってます!」
「⋯いきなり何ですか?」
「私、青葉台小学校で教員を務めてます。水野千尋と申します。」
「小学校の先生が、何の御用でしょう?」
「幻覚教育なんて、間違ってます!痛みや苦しみを味わわせなくても⋯言葉できちんと話せばわかってくれます!」
「甘いですね。話せばわかるなんて⋯。そんなの、良い事と悪い事の区別も付かないような子供にだけですよ。」
「っ⋯!そんな事ありません!」
「では⋯。どうして悪い事だとわかっていながら、罪を犯すのですか?」
「っ⋯そ、それは⋯」
「人は、他人の痛みには鈍感なのです。だから、頭では悪い事だとわかっていても⋯。軽く考えてしまう⋯。本当に他人の痛みを知るには、自分が体感するしかないのです。⋯あなたも、体感してみますか?何も問題がないのなら、エラーになりますし⋯。無意識に誰かを傷付けた事があるなら⋯。この制度の必要性がわかると思いますよ?」
「私は、誰かを傷付けた事なんてありません!」
「でしたら⋯。」
証明してみろと言うように、ゴーグル一体型ヘルメットを渡される。
「わかりました。ただし、エラーが出たら⋯!幻覚教育なんて、やめて下さい!」
「⋯検討致します。それでは、拘束させて頂きますね。」
「っ⋯!?拘束⋯!?」
「安全に最後まで受けて頂く為ですので。」
反論する間もなく、拘束される。
「では⋯。いってらっしゃいませ。」
一瞬で世界が変わる。
目の前には、優しい先生が居た。
『水野さんなら、大丈夫よ』
⋯大丈夫?
⋯何が、大丈夫なの?
私は、大丈夫じゃないから相談してるのに⋯
『水野さん、頑張って!』
⋯頑張る?
⋯これ以上、何を頑張ればいいの?
頑張れないから、頼っているのに⋯
『先生は、水野さんの味方よ』
⋯味方?
何もしてくれないくせに、そんな薄っぺらい言葉で誤魔化さないで⋯!
心の中で叫んでも、声に出す事が出来ない。
先生は、優しく微笑み続けていた。
自分の言葉で私が傷付いているなんて、微塵も思っていないような⋯
涙がこぼれる。
⋯目の前の先生は、私だったのね⋯
⋯そして、今の私は⋯
私が、今まで無自覚に傷付けてしまった生徒⋯
「っ⋯ごめんなさい⋯」
「⋯幻覚教育の意義、理解して頂けましたか?」
「⋯はい⋯自分が、生徒を傷付けてしまっていたなんて⋯幻覚教育で、自分が言われて初めて気付きました⋯」
「⋯あなたが、生徒を想って励まそうとした事は⋯。決して、悪い事ではありません。でも⋯。善意で傷付く人も居ます。それを理解した上で、これからは生徒に寄り添ってあげて下さい。」
「⋯はい⋯」
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「報告します。幻覚教育の廃止を訴えて来た、水野千尋ですが⋯。幻覚教育を体感し、意義を理解して頂けたようです。そして、自らが無自覚に生徒を傷付けていた事にも気付き⋯。教師としての在り方を、今一度考え直すとの事です。」
「そうか⋯。今回は、予期せぬ幻覚教育にも関わらず⋯。よく対応してくれた。これからも、よろしく頼むよ。」
「はい。これにて、幻覚教育を終了致します。」




