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幻覚教育  作者: 月海みやび


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10/12

Case10

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『なぁ、金貸してくんない?』

『は!?何で、俺が⋯!?』

『良いじゃん!すぐ返すからさ!』

『っ⋯わかったよ⋯』


圧に押されるがまま、お金を渡す。

それが、地獄の始まりだった。


『玲央〜!金貸して?』

『っ⋯この間貸しただろ?⋯まだ返してもらってないんだけど⋯』

『まとめて返すからさ!な?いいだろ?』


結局、断りきれずにお金を渡した。


⋯これでいくら貸したんだ?

⋯本当に返してくれるのか?


不安が渦を巻く。


『あっ⋯!玲央〜丁度いいとこに!金貸して欲しくてさ⋯!』

『っ⋯もう貸す金ないよ』

『嘘付くなよ〜!』


笑いながら、財布を奪われる。


『やっぱりあるじゃん!』


お金を抜き取られ、空の財布が投げ渡された。


⋯何で、俺が金貸さなきゃなんないんだよ⋯


不満がこみ上げる。


『玲央!金貸して!』

『もうない』


空の財布を渡す。


『うわ、マジで空じゃん⋯だったらさ、親の金⋯持ってこいよ?』

『は!?何言ってんだよ!?そんな事、出来るわけないだろ!?』

『出来ないじゃなくて、やるんだよ!』


腹に痛みが走る。


⋯蹴られた、のか⋯?


涙が滲む。


『玲央、金持って来たか?』


震える手でお金を渡す。


⋯ごめん、父さん⋯

⋯ごめん、母さん⋯


罪悪感に押し潰された。


これ以上、もう耐えられない⋯


「藤堂玲央さん、いじめられる人の気持ちは理解出来ましたか?」


滲んだ視界に映るのは、金を要求してくる奴らじゃなくて⋯


「っ⋯ああ⋯」


力なく頷く。


そうだ、俺が軽い気持ちでしていた事だ⋯

された方は、こんなにも辛い⋯


少し考えれば、わかるはずだったのに⋯

自分がされて、ようやく気付いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。いじめの罪で幻覚教育対象者となった、藤堂玲央ですが⋯。その後、借りていたお金を全て返し⋯本人とご家族に謝罪したようです。⋯許されなかったみたいですが、今後も誠意を持って謝罪を続けるそうです。」

「そうか⋯。許されなかったか⋯。」

「仕方がありません。それだけ、苦しめていたという事です。」

「そうだな⋯。⋯君は、もう赦されてもいいのではないか?」

「っ⋯いいえ。私は、一生赦されてはいけない罪を犯しましたから⋯。」

「だが⋯」

「これにて、幻覚教育を終了致します。」

「⋯久世くん。君が自分を赦せなくても⋯。私は君を赦したい。⋯きっと、娘も⋯。今の君を見て⋯」

「っ⋯失礼致します。」


逃げるように、部屋を後にする。


⋯私は、赦されてはいけない。

⋯私の犯した罪は、赦されてはいけない。

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