Case8
目には目を、歯には歯を⋯
暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯
犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。
ならば、痛みを知ればいい。
そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「じゃあな〜、海斗!」
「おう、またな!」
大学の友人と別れ、繁華街を歩く。
「こんばんは。三浦海斗さん、ですね?」
「そうだけど⋯お姉さん、誰?」
「幻覚教育管理局から参りました、久世と申します。」
「⋯はぁ⋯俺に何か?」
「ここだと話しにくいので、場所を変えませんか?」
「場所を変えるって、何処に⋯?」
「そこのホテルにでも。」
「⋯なるほどね⋯いいよ、ホテル行こっか?」
綺麗なお姉さんに誘われて、嫌がる男なんて居ない。
軽い足取りで、ホテルの一室へと入った。
「お姉さん、先にシャワー浴びる?」
「いえ⋯」
「へぇ⋯?お姉さん、そっち派なんだ?」
「⋯何か、勘違いをされているようですが。私は、あなたに話が⋯」
「照れなくていいって!俺、こだわりないし⋯お姉さんの好きにしていいよ?」
「三浦海斗さん、強盗の罪で幻覚教育を受けて頂きます。」
「っ⋯!ご、強盗って⋯何の話?っていうか、さっきから⋯幻覚教育?そういうプレイ?」
「こちらを装着して頂ければ、全ておわかりになると思います。」
変な女に引っ掛かってしまった⋯
そう思い込もうとしている自分に、気付かないフリをして⋯
言われるがまま、ゴーグル一体型ヘルメットを被る。
「これでいい?」
「それでは、拘束させて頂きます。」
そんな言葉すら、聞こえないフリをした。
ふと思い出す。
『高収入の単発バイト!?めっちゃ良いじゃん!』
時間を削らずに、お金が手に入る。
遊びたい俺には、ピッタリの条件だった。
応募してすぐに採用通知が届く。
指定された日時と場所を見て、嫌な予感がした。
それでも、気の所為だと自分に言い聞かせる。
⋯嫌な予感は的中していた。
「では、強盗に遭う世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」
不意に聞こえてきた言葉と共に、一瞬で世界が変わる。
『黙って金出せ!』
『早くしろ!』
目の前では、マスクを被った数人がバットを振り回し暴れていた。
『何見てんだ!?早く金出せって言ってんだろ!?』
『っ⋯!は、はい⋯!』
いきなり蹴り付けられ、震える手でお金を用意する。
⋯何だよ、こいつら⋯
『早くしろって言ってんだろ!?』
『っ⋯こ、これで全部で⋯』
お金を入れた鞄を引ったくられる。
奴らが去った後も、震えが止まらなかった。
⋯怖かった。
「強盗に遭う気持ち、理解出来ましたか?」
そんな言葉と共に、世界が戻る。
「っ⋯ああ⋯」
お金の為にと、人を傷付けてしまった。
自分が、酷く情けない⋯
「あなたは、強盗の加害者です。」
「⋯わかってる⋯」
「ですが、闇バイトの被害者でもあります。」
「っ⋯」
「きちんと自分の罪に向き合うだけでなく、ケアもして下さいね。」
優しい声に、思わず顔を上げる。
既に部屋を出ようとしていた後ろ姿に、そっと声を掛けた。
「⋯ありがとう⋯」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「報告します。強盗の罪で幻覚教育対象者となった、三浦海斗ですが⋯。その後、警察に出頭したようです。闇バイトの方では、ケアをお願いします。」
「わかった。ケアは、こちらで引き受けよう。」
「これにて、幻覚教育を終了致します。」




