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幻覚教育  作者: 月海みやび


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Case7

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「美羽、今日の晩ご飯⋯何食べたい?」

「う〜んとね⋯ハンバーグ!」

「⋯ハンバーグか⋯」


娘の返事に、思わずため息がこぼれる。


「⋯ママ?⋯ハンバーグ⋯ダメ?」

「⋯いいよ、頑張って作るね」


笑顔を貼り付け、手を繋いで歩く。


「すみません。片桐真紀さん、ですね?」

「⋯そう、ですけど?」

「私、幻覚教育管理局から参りました。久世と申します。」

「⋯何の用ですか?」

「大事な話ですので、ご自宅にお邪魔しても宜しいでしょうか?」


有無を言わせぬ圧を感じ、渋々頷いた。


歩きながら、楽しそうに女性と話す娘にイライラしてしまう。


「どうぞ⋯」

「お邪魔します。」

「美羽、少し部屋で遊んでて⋯」

「え〜!美羽もお話したい!」

「っ⋯言う事聞きなさい!」


思わず声を荒げ、慌てて口を塞ぐ。


「⋯美羽ちゃん。お母さんと大事なお話するから、少しお部屋で待っててくれる?」

「わかった!」


パタパタと走り去る娘に、嫌悪感がこみ上げる。


「で、大事な話って何ですか?」

「虐待の通報がありまして⋯」

「っ⋯は!?虐待!?誰が、そんな⋯!」

「事実確認の為にも、幻覚教育を受けて頂きます。」

「っ⋯その、幻覚教育⋯?って、何するんですか?」

「こちらを装着して頂き、安全の為に拘束させて頂きます。」

「は!?何で、そんな⋯」

「これが、幻覚教育ですので。」


抵抗する間もなく⋯ゴーグル一体型ヘルメットを被せられ、拘束される。


「では、虐待される世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」


目の前が一瞬暗くなったかと思うと、懐かしい景色が広がる。


『⋯ママ?』


料理をしている母親の後ろ姿に、そっと声を掛ける。


『今、忙しいの。声掛けないで』


聞いた事のない冷たい声に、肩が跳ねる。


『⋯怒ってる?私⋯何かした?』

『うるさいわね!あんたの存在自体が邪魔なの!』

『っ⋯!』


母親からの突然の存在否定に、何も言えなくなる。


『あんたなんか、産まなきゃ良かった!』


⋯どうして、そんな事を言うの?

⋯私が、何をしたの?

何も悪い事、してないのに⋯


不意に、自分が娘に苛立ちをぶつけた時を思い出す。


⋯私が言ってた事?


「⋯美羽、ごめん⋯」


再び視界が暗くなり、目の前に見慣れない女性が映る。


「母親に存在否定される事が、どれだけ辛いか⋯。虐待される子供の気持ち、理解出来ましたか?」


黙って頷き、娘の部屋へ駆ける。


「美羽⋯!ごめん⋯ごめんね⋯!」


不思議そうに首を傾げる娘を、優しく抱き締めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。虐待の罪で幻覚教育対象者となった、片桐真紀ですが⋯。その後は、不当に怒鳴りつける事もなく⋯。虐待と思われる言動は見受けられません。ですが⋯。本人のストレスが発散出来ていないようで⋯。また虐待を繰り返さないよう、ケアが必要かと思われます。」

「わかった。こちらで、ケアは引き受けよう。」

「お願いします。これにて、幻覚教育を終了致します。」

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