Case6
目には目を、歯には歯を⋯
暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯
犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。
ならば、痛みを知ればいい。
そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯
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「早瀬玲香さんですね?」
「そうだけど⋯誰?」
「申し遅れました。幻覚教育管理局の久世と申します。」
「⋯幻覚、教育⋯?」
「痴漢の⋯」
「っ⋯!痴漢!私、痴漢されました!」
「⋯は?っ⋯失礼致しました。」
「助けてくれますよね?」
弱々しい声で、ジッと見つめる。
「⋯はい。私は、苦しむ方の味方ですので。」
⋯やっぱり、弱々しい女を演じれば⋯
老若男女関係なく、引っ掛かる⋯
世の中、楽勝ね⋯
思わずこぼれそうになる笑みを抑える。
「こちらの、ゴーグル一体型ヘルメットを装着させて頂けますか?」
「もちろん⋯それで救われるなら⋯」
気味の悪いヘルメットに嫌悪感を覚えながら、貼り付けた笑顔で受け取る。
⋯何、これ⋯
こんなものを被らせて、どうやって救うつもり?
本心を見透かされないように、ヘルメットを被った。
「では、拘束させて頂きますね。」
「えっ⋯?拘束!?」
「決して、痛くはしませんので。最後まで安全に⋯」
「いいから⋯!早くして⋯!」
長くなりそうな説明に、うんざりする。
⋯何が、幻覚教育よ⋯
幻覚で人を救えるなんて、本当に思ってるわけ?
馬鹿馬鹿しい⋯
「では、痴漢される世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」
聞こえた言葉に反論しようとした瞬間、世界が変わる。
『っ⋯!』
気付けば満員電車の中、お尻を撫でられていた。
⋯嫌だ、気持ち悪い⋯
振り返ってみても、誰が触っているのかわからない。
触っている腕を掴もうとしても、上手く逃げられてしまう。
『っ⋯』
大声を出そうとしても、何故か声が出ない。
っ⋯何で⋯?
大声で助けを求めれば⋯
そこまで考えて、ハッとする。
⋯大声を出せば、痴漢は捕まるかもしれない。
でも⋯この場に居る全員に、痴漢された事を知られてしまう。
悪い事をしているのは、私じゃないのに⋯
私が、好奇の目に晒される⋯
周りに知られる事が恥ずかしく思えて、必死に声を抑える。
『⋯ヤバ⋯顔真っ赤じゃん⋯』
不意に聞こえてきた笑い声に、顔を上げる。
辺りを見回しても、誰の声だったのかわからない。
っ⋯女の声だった⋯
それも、私の反応を楽しんでるような⋯
⋯楽しんでる?
痴漢される私を見て?
⋯違う。
痴漢をして、楽しんでるんだ⋯
自分が人にしていた事。
それを、私がされている⋯
『っ⋯やだ⋯やめて⋯』
震える声で呟く。
私が、悪戯心で痴漢をした人も⋯
⋯こんな気持ちで⋯
「っ⋯ごめんなさい⋯」
視界が歪み、世界が戻る。
「痴漢される人の気持ち、理解出来ましたか?」
「っ⋯はい⋯」
自分が、どれだけ考え無しだったか⋯
軽い気持ちでしていた事が、こんなにも不愉快な事だったなんて⋯
「理解出来たのなら、あなたはもう大丈夫です。」
優しい声に、安心して頷いた。
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「報告します。痴漢の罪で幻覚教育対象者となった、早瀬玲香ですが⋯。その後、痴漢行為は見受けられません。これにて、幻覚教育を終了致します。」




