Case5
目には目を、歯には歯を⋯
暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯
犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。
ならば、痛みを知ればいい。
そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯
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「おい!何とか言えよ!」
殴ろうとした拳が、割り込んで来た掌に受け止められる。
そして、一瞬で捻り上げられた。
「いてぇな⋯!何すんだよ!」
睨んだ先には、涼しい顔の女。
「誰だ、てめぇ?」
「幻覚教育管理局、久世と申します。」
「はぁ!?幻覚教育管理局!?」
「藤崎大地さん、いじめの現行犯で幻覚教育対象と致します。」
「いじめじゃねぇよ!」
「そうですか。いじめでないのなら、エラーが出ますので。」
「エラー!?お前、何言ってんだ?」
女が鞄から、ゴーグル一体型ヘルメットを取り出す。
「っ⋯何だよ、それ?」
「幻覚教育の専用ヘルメットです。いじめでないと証明して下さい。」
圧に押されるように、思わず頷く。
「っ⋯わかったよ⋯」
ヘルメットを奪い取り、舌打ちする。
「⋯ほら、これでいいんだろ?」
「はい、では⋯拘束させて頂きます。」
「は!?拘束!?何で!?」
「安全に最後まで幻覚教育を受けて頂く為です。」
慣れた手つきで、素早く拘束される。
「では、いじめを受ける世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」
一瞬で世界が変わる。
『おい!何とか言えよ!』
『っ⋯!』
荒々しい言葉と共に、拳が降ってくる。
自分よりも体格の良いやつが、楽しそうに笑っていた。
『っ⋯!』
言葉を発する事も許されず、その場に蹲る。
『おい!聞いてんのか!?』
容赦なく腹を蹴られ、最後には唾を吐かれた。
笑いながら去っていく後ろ姿が、自分と重なって見える。
⋯そうか、あいつは俺か⋯
⋯そして、俺はあいつか⋯
さっきまで自分が馬鹿にしていた相手。
いつも馬鹿にしているやつら。
⋯あいつらは、こんな気持ちだったのか⋯
自分より強いとわかっている相手に浴びせられる、暴言の怖さ。
自分が逆らえない相手から受ける、暴力の辛さ。
なんて惨めで、なんて恐ろしい⋯
「っ⋯死にてぇ⋯」
思わずこぼれた、言葉と涙。
歪んだ世界に、光が刺す。
「自分のしてきた事、いじめられる人の気持ち⋯理解出来ましたか?」
「っ⋯ああ⋯」
目の前の女が、優しく微笑む。
その笑顔に、何故か涙が止まらなかった。
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「報告します。いじめの罪で幻覚教育対象者とした、藤崎大地ですが⋯。その後は、人に暴力を振るう事もなく⋯落ち着いて過ごしているようです。これにて、幻覚教育を終了致します。」
「久世くん。君が勝手な行動を取るなんて、珍しいね⋯。」
「⋯申し訳ございません。」
「いや、謝る必要はないよ。ただ⋯。」
少しの間、沈黙が流れる。
「君は、まだ過去を忘れられずにいるのか?」
「っ⋯!⋯忘れられるはずがありません⋯。⋯忘れられないから、幻覚教育を行っているのです。」
「⋯そうか⋯。これからも、幻覚教育をもって人を救い続けなさい。」
「はい。失礼致します。」




