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幻覚教育  作者: 月海みやび


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5/13

Case5

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい!何とか言えよ!」


殴ろうとした拳が、割り込んで来た掌に受け止められる。

そして、一瞬で捻り上げられた。


「いてぇな⋯!何すんだよ!」


睨んだ先には、涼しい顔の女。


「誰だ、てめぇ?」

「幻覚教育管理局、久世と申します。」

「はぁ!?幻覚教育管理局!?」

「藤崎大地さん、いじめの現行犯で幻覚教育対象と致します。」

「いじめじゃねぇよ!」

「そうですか。いじめでないのなら、エラーが出ますので。」

「エラー!?お前、何言ってんだ?」


女が鞄から、ゴーグル一体型ヘルメットを取り出す。


「っ⋯何だよ、それ?」

「幻覚教育の専用ヘルメットです。いじめでないと証明して下さい。」


圧に押されるように、思わず頷く。


「っ⋯わかったよ⋯」


ヘルメットを奪い取り、舌打ちする。


「⋯ほら、これでいいんだろ?」

「はい、では⋯拘束させて頂きます。」

「は!?拘束!?何で!?」

「安全に最後まで幻覚教育を受けて頂く為です。」


慣れた手つきで、素早く拘束される。


「では、いじめを受ける世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」


一瞬で世界が変わる。


『おい!何とか言えよ!』

『っ⋯!』


荒々しい言葉と共に、拳が降ってくる。


自分よりも体格の良いやつが、楽しそうに笑っていた。


『っ⋯!』


言葉を発する事も許されず、その場に蹲る。


『おい!聞いてんのか!?』


容赦なく腹を蹴られ、最後には唾を吐かれた。


笑いながら去っていく後ろ姿が、自分と重なって見える。


⋯そうか、あいつは俺か⋯

⋯そして、俺はあいつか⋯


さっきまで自分が馬鹿にしていた相手。

いつも馬鹿にしているやつら。


⋯あいつらは、こんな気持ちだったのか⋯

自分より強いとわかっている相手に浴びせられる、暴言の怖さ。

自分が逆らえない相手から受ける、暴力の辛さ。

なんて惨めで、なんて恐ろしい⋯


「っ⋯死にてぇ⋯」


思わずこぼれた、言葉と涙。


歪んだ世界に、光が刺す。


「自分のしてきた事、いじめられる人の気持ち⋯理解出来ましたか?」

「っ⋯ああ⋯」


目の前の女が、優しく微笑む。

その笑顔に、何故か涙が止まらなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。いじめの罪で幻覚教育対象者とした、藤崎大地ですが⋯。その後は、人に暴力を振るう事もなく⋯落ち着いて過ごしているようです。これにて、幻覚教育を終了致します。」

「久世くん。君が勝手な行動を取るなんて、珍しいね⋯。」

「⋯申し訳ございません。」

「いや、謝る必要はないよ。ただ⋯。」


少しの間、沈黙が流れる。


「君は、まだ過去を忘れられずにいるのか?」

「っ⋯!⋯忘れられるはずがありません⋯。⋯忘れられないから、幻覚教育を行っているのです。」

「⋯そうか⋯。これからも、幻覚教育をもって人を救い続けなさい。」

「はい。失礼致します。」

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