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幻覚教育  作者: 月海みやび


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Case4

目には目を、歯には歯を⋯

暴言には暴言を、暴力には暴力を⋯


犯した罪の重さは、痛みを体感しなければ理解出来ない。


ならば、痛みを知ればいい。

そして、自らの過ちを悔い改めよ⋯


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺達は、小さい頃からいつも一緒に居た。

まるで兄弟のように⋯


『うわ、最悪⋯』

『どうした?』

『⋯3人で買ったやつ⋯間違えてた⋯』

『はぁ!?お前⋯あれだけ、確認しろって言ったのに⋯!』

『ごめん⋯!すぐに注文するから!』

『それにしても⋯これ、どうする?』

『SNSで売ればいいんじゃね?』


間違えて買ったものを、SNSで売ろうと募集を掛けた。

それに、数人から反応がある。


『⋯同じタイミングで、欲しいって言われても⋯誰に売ればいいんだ?』

『⋯なぁ⋯商品送らず、金貰えば⋯めっちゃ稼げるんじゃね?』


誰が、そんな事を言い出したのか⋯


詐欺だとわかっていながら、軽い気持ちで始めた事だった。


「なぁ、これって需要あるんじゃね?」

「⋯うわ、めっちゃ高値付いてる⋯」

「それ、写真引っ張ってきて載せようぜ!」


いつの間にか、他の人が出品している写真を使うようになっていた。


不意に玄関のチャイムが鳴る。


「ピザ来たかも!」

「はーい、今開けます!」

「幻覚教育管理局の久世と申します。白石圭介さん・瀬川直人さん・真壁亮介さん、お揃いですね?」

「⋯えっ⋯?」

「どうした?何かトラブル?」

「皆さんが、詐欺をしていると⋯」

「っ⋯!いや、何かの間違いじゃないっすか?」

「⋯そうそう!俺達、そんな事してないっすよ?」

「皆さんが、悪い事をしていないなら⋯エラーになるだけなので。」

「⋯いや、エラーとか⋯意味わかんないし!」

「幻覚教育です。皆さんに、受けて頂きます。」

「⋯幻覚、教育⋯?」

「そんなの、聞いた事ないし!」


スマホで検索を掛ける。


「⋯国の⋯教育制度⋯?」

「⋯マジかよ⋯」

「⋯では、皆さん⋯」

「っ⋯!ごめんなさい⋯!」

「っ⋯俺達、軽い気持ちで⋯」

「⋯詐欺をしていたと、認めるのですね?」

「⋯はい、もうしません!だから、一回だけ見逃して⋯」

「それは出来ません。一度、幻覚教育対象者となったら⋯受けて頂くしかありません。」

「⋯幻覚教育って、何されるんすか?」

「専用のゴーグル一体型ヘルメットを被って頂き、幻覚を見て貰います。」

「⋯なんだ、それだけ⋯?」

「大人しく、幻覚でも何でも見るんで⋯痛い事はしないでくれます?」

「はい、約束致します。」


仏頂面のお姉さんを部屋に入れ、俺達は受け取ったゴーグル一体型ヘルメットを被る。


「それでは、拘束させて頂きます。」

「は!?話が違うじゃん!」

「痛くはしません。これは、最後まで安全に受けて頂く為ですので。」


渋々、拘束を受け入れる。


「では、詐欺に遭う世界へ⋯。いってらっしゃいませ。」


一瞬、何かが切り替わるような感覚になる。


『なぁ、これ良くね?』

『めっちゃ良いじゃん!でも、高くね?』

『いや⋯これなら安い方じゃね?』

『マジ!?じゃあ、買おうぜ!早くDM送れよ!』

『⋯DM送った!返事、すぐ来るかな?』

『投稿されたばっかだし、来るんじゃね?』

『返事来た!』

『何て?』

『既に何人かがDM送ってるっぽい⋯』

『マジかよ?じゃあ、断られたって事?』

『いや⋯先に金送れば、俺達に譲るって⋯』

『だったら、急いで送れよ!俺達、お前に送金するから』

『⋯送った!』


数時間経っても、返事が来ない。


『⋯なぁ、何も言って来ねぇの?』

『⋯ああ⋯金は受け取ったみたいなんだけど⋯』

『もう一回、こっちからDM送った方がいいんじゃね?』

『ああ、そうする⋯っ⋯!ふざけんな⋯!』

『どうした!?』

『⋯アカウント、消えてやがる⋯』

『はぁ!?金は!?』

『相手が受け取った後だから、どうしようもねぇよ⋯!』

『っ⋯何だよ、それ⋯!』

『⋯警察!警察に言おうぜ!だって、これ⋯詐欺だろ!?』

『⋯SNSでの売買は、自己責任⋯ってか、下手すりゃ俺達まで捕まるかも⋯』

『っ⋯!そんなんアリかよ!?』


それぞれが、奪われた金額に呆然とする。


⋯詐欺に遭うって、こんな気持ちになるのか⋯


今まで、詐欺に遭う方も悪いと思ってた。

でも⋯自分達が詐欺に遭って、俺達が悪いとは思えない。

納得出来ない。


⋯俺達が騙してた相手も、こんな気持ちになっていたのか⋯


自分達が犯していた罪の重さが、やっと理解出来た。


また、何かが切り替わるような感覚。


「詐欺に遭う気持ち、理解出来ましたか?」

「⋯はい⋯」


俺達の声が重なる。


今まで騙してきた人達に、謝罪する方法も金を返す方法もない。


今まで便利だと思っていたSNSが、初めて不便に感じた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「報告します。詐欺の罪で幻覚教育対象者となった、白石圭介・瀬川直人・真壁亮介ですが⋯。その後、警察に出頭したようです。これにて、幻覚教育を終了致します。」

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