一石二鳥です
「陛下への謁見ですか。承っておりました。少々お待ちください。」
ふぅ〜、なんとか間に合った。間に合ったはいいけど王宮の廊下を猛ダッシュしてる時に貴婦人を驚かせたらしく、3人ぐらい気絶させてしまった。あれ、屋根を飛び移った時だっけ?とにかく申し訳ないことしたなー。後日菓子折りでも持って謝りに行きますんで、ガジュが。
「お待たせしました。どうぞお通り下さい。」
さっきの近衛さんが部屋まで案内してくれる。いやあ、しかし近衛さんも大変だよね。メルルイ様の護衛をするなんて私だったら無理。精力をガリガリ削られてあっという間に背後霊的な存在になっちゃいそう。
あ、そんなこと考えてたら部屋に着いたらしい。満面の笑みを浮かべたメルルイ様に迎えられた。
「ああ〜、ミアカちゃん久しぶり。私のオアシスよ〜。」
うん、今日もいい感じに壊れてるね。
「陛下、お久しぶりです。来るのが遅くなってしまい申し訳ございませんでした。」
「もう、ミアカちゃんたら余所余所しくない?そういうお年頃なの?」
余所余所しいって。
これでもかなり本当は踏むべき臣下の礼とか省略しまくってんですけど。普通に今の態度で無礼ですよ?これ以上どうしろと。
「それで陛下――メルルイ様、私を呼んだのは何か用があったんじゃないですか?」
何故だ、何故陛下と呼んで睨まれなきゃならんのだ。陛下呼びが普通だよね?オイラおかしいこと言ってないよね?
「えー、もうちょっとお喋りしt――」
「あ、陛下火急の要件を思いだしましたのでこれにて失礼s――」
「わかった、話すから!話すから帰んないで!」
まったく、最初からそう言えばいいものを。
え?とてもじゃないけど主従の会話じゃないって?まぁ、メルルイ様は昔からうちの家と親しくしてたし、もう親戚の叔母さんって感じかな。それに今この部屋にいるのは私とも顔馴染みな口の固いメイドさんだけだしね。
「う゛ぅ、ミアカちゃん前はあんなに可愛かったのに‥‥。歳を重ねる毎に生意気になっちゃってさ。」
それは反抗期じゃなくてメルルイ様に遠慮がなくなっただけだから。
「それで本当にどうしたんですか?魔導師長をこうやって呼び寄せるなんてらしくないんで不安なんですよ。」
ほら、いつもはメルルイ様がいつもの脱走癖を発動させて私のところに来るか、近衛さんとメイドさんの目をくぐり抜けてバーデル家に来てるし。
「あぁ、うん。確かに話さなきゃいけないことがあるのよねぇ。ねぇミアカちゃん、魔王って知ってる?」
「ええ、まあ‥‥お伽噺程度には。」
また魔王か。巷でなんか流行ってんのかな。魔王サブレだとか魔王バーガーみたいな。
「うん、知ってるんならいいの。その魔王がさ、実は実在してそろそろ復活するらしいのさ。困ったもんよねぇ。」
「へぇ〜」
「え?なんか反応薄くない?これでも私直属の諜報部隊くんが教えてくれた極秘事項なんだけど。」
だって知ってるし。てかほんと何者なの?サフィスのお父さんって。
王さま子飼いの諜報部隊に引けを取らない情報の速さって。もしかして諜報部隊とか入ってんじゃないの?
「まぁそれでね、うちの国としては魔王がお伽噺と同じように害なす存在か分からないし、とりあえず魔王んとこに訪問したいわけ。で、その魔王んとこに行かせる使者の選出をミアカちゃんに任したいんだけど。生半可な子じゃ、魔王がお伽噺と同じような存在だと困るしさぁ。」
使者の選出かぁ。別にいいけど、うちの子達を死に行かせるかもしれないとはね。まぁ魔王がお伽噺と同じような存在だとは限らないからなんとも言えないけど。でもどうせなら私が使者になりたいなぁ。魔導師兵は死ぬ可能性もないし噂の魔王様にも会えるしこれ、一石二鳥じゃない?
「ねぇ、メルルイ様。その使者の選出って私も含めていい?」
「ダメ、絶対」
即答かい。
‥‥‥まあ、断られてもタダじゃ引かないけどね。今思い付いた作戦もあるし。
「絶対ダメだよ、ミアカちゃん。魔導師長が軽々しく国を出るのも問題だし、まずミアカちゃんを使者にすれば私がヤツに殺されちゃうから。ね?だから早まらないで?」
早まらないでって言われましても。自殺じゃあるまいし。それに、とっくに早まっちゃったしね。残念☆
でも、この場ではイイ子ちゃんでいないとね。演技じゃないように飽くまでも残念だけど諦めるって感じにしないと。
「でも使者っていうぐらいなんだからそれなりの地位の人間がいかないと逆に失礼と思われないですか?私だったら魔導師長って肩書きもありますし。」
「あ゛。〜〜っっ、でもダメなものはダメだから!使者になれなかったからって勝手に行くのもダメだよ。」
「‥‥‥はあ。分かりました、大人しくしてます。してますから、しばらく――使者の出発から帰還まで有休貰ってもいいですか?」
そう聞くとすぐに怪しむ顔になるメルルイ様。
「‥‥一応聞くけどなんで?」
「別に勝手に行ったりしませんよ?むしろ逆です。普通に王宮で働いてたら我慢できなくなって飛び出しそうな気がするので自分から閉じ籠ろうかなと。」
聞いた途端にほっと息を吐くメルルイ様。これで納得してくれるといいんだけど。
「なら、いいんだけど。有休はあげるけど、くれぐれも1人で魔王んとこまで出向こうなんて思わないでね。」
「仰せのままに。」
私はふざけたように返事をするとそのまま退室した。
あー、これからちょっとの間魔導師長が不在になるわけだし、色々手回ししとかなきゃだな。
まっ、うちの魔導師兵団は優秀なのが多いし平気だろうけど、念のためにね。私が処理しないといけないものは不在中も見越してやっとかないと。
う〜ん、忙しくなりそう。
普段ならげんなりするのに何故かわくわくしてきて私は身震いした。
あ、そうだ。ガジュには今日の恨みもあることだし仕事を大量に残しておこうかな♪
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ぶぇっくしょい!な、なんだぁ?風邪か?」
「あは、誰かがガジュのこと噂してんじゃない?」
「い、いや、噂されるっていうよりも何か悪寒が‥‥」
「じゃあ誰かがガジュのこと呪ってるんじゃないですか?」
「やめろ、カスト。不吉なことを言うな。」
〜〜魔導師兵総本部にてのとある会話〜〜




