今日から魔導師長です
――――扉を開けると、そこは雪国でした。
「って、うそん」
つい某小説の有名な冒頭みたいになってしまった。でも、しょうがないじゃん。だって雪国なんだもの。
もう一面、雪、雪、雪。辺り一面真っ白けっけ。
しかもご丁寧なことに雪だるまやらかまくらまでもあって、いよいよ狐に化かされてる気分になってきた。
扉を開けたモーションのまま固まっていると、突然、足跡のついてないまっさらな雪から人が生えてきた。
「うわ!?」
ニョキッという擬音が似合いそうな勢いで生えてきたのは、メガネをかけたクールそうな男性だ。‥‥いや待て、クールって形容詞は雪から生えてくる人間に当てはまるのか?
クールそうな男性(暫定)はキョロキョロ辺りを見回して私を見つけると困ったように微笑みかけた。
「えーと‥‥今日から魔導師長の方ですよね?」
そうだけどさ‥‥アンタ何者?と思いながら答える。たぶん魔導師なんだろうけど。むしろ違ったらかなり対応に困るけど。
「はい、ミアカ・バーデルと言います。あの‥‥魔導師兵の方ですよね?」
「あぁ‥‥‥すいません、申し遅れました。私は副魔導師長のカスト・クラウディナと申します。魔導師長となるバーデルさんをサポートすることになるのでお見知りおきを。」
うひょー、なんか対応がめっちゃ紳士だ。この人がサポートしてくれるなら魔導師長もやってけそうかも。
‥‥‥あれ?そういえば魔導師長の仕事って何?
「お世話になります。あの、魔導師長って具体的に何をするんですか?」
「ああ、説明がまだでしたか。まず魔導師兵団というものの役割から話したほうが分かりやすいのでそうしますね。魔導師兵団は他国との戦争、侵略が起きた時に真っ先に騎士団と共に戦う魔導師が所属します。また、戦時中でない時は凶悪犯を捕まえたり、陛下から要請を受けて新しい魔法や魔導具の実験をしたりしますね。結構何でも屋のような感じになります。」
「その魔導師兵団を束ねる存在がバーデルさんのなる魔導師長です。魔導師長も他の魔導師兵のように平常時に雑用をこなしたりもしますが、それよりも我が国の軍事力の象徴として他国の要人との対談や部下である魔導師兵が捕らえた犯罪者についての書類をまとめるようなデスクワークもあると思います。また戦時中は戦いもしますが作戦を考えたり、魔導師兵に指示を与えたりしますね。‥‥‥あの、大丈夫ですか?顔色悪いですけど。」
心配してくれるのは有り難いんだけど全然大丈夫じゃないっす。
てか無理でしょ。なんだよ、他国の要人と会談って。緊張しすぎて舌噛みそう。まず私が軍事力の象徴ってところでナメられそうだけど。この17歳のガキが魔導師長?はんって笑われそう。(←被害妄想)
誰だよ、こんな人選にしたのは。ソイツ絶対見る目な‥‥‥‥メルルイ様だったわ。ダメだー、この国のトップが私にするとか。アルセナール王国見る目なさすぎる。
私が首でも吊りそうな顔してネガティブ方面に全力疾走していると、見かねたクラウディナさんが励ましてくれた。ぐす、優しい。
「大丈夫ですよ、そんな不安そうな顔をしなくても。最初は慣れるまで私の真似をすればいいですし、それに何も初めから要人との会談があるわけではないですから。」
「では書類とかも実際に見たほうが分かりやすいのでお見せしたいんですが、その前に私以外の人間を紹介したいんですが―――今いないんですよねぇ。」
「どんな方がいるんですか?」
てか、他にいたの?って思っちゃった。総本部っていうぐらいだから人がかなり詰めているイメージがあっても良さそうなのにクラウディナさんがあまりにも超人そうに見えて1人で仕事をこなしてんのかと思ってしまった。
「ええ、いますよ。総本部と名乗る割には少人数ですが。――――ああ、1人帰ってきました。」
「おい、カストまたお前やらかしたのか―――ってなんだ、お客さんいたのか?」
「お客さんというより私達のボスになる方ですよ。バーデルさん、紹介します、これはガジュ・デクレン。魔導師兵です。ガジュ、こちらはミアカ・バーデルさん、魔導師長になる方です。」
お互いに紹介されるとガジュと呼ばれた男は面白そうに眉をあげた。
「へぇ、このお嬢さんが新しい魔導師長サマか。随分若いが務まんのか?」
「おい、ガジュっ!すみません、バーデルさん。貴女の前の魔導師長が私財を肥やして職務を放棄していた男でしたから。上を信頼してない者が多いんです。」
え、そうだったんだ‥‥。
メルルイ様やお父様が清廉潔白な人達だからつい忘れそうになるけど、貴族には私財を肥やしたいだけの脳みそカス野郎がいっぱいいるんだよね。カルバン卿もそうだったし。
「別に気にしませんよ。初対面ですぐ人に気を許すような騙されやすい人間なんて魔導師兵にいないと思いますし。それに後からでも信頼は築けますから。‥‥‥ところで、前の魔導師長って誰だったんですか?」
私の科白にクラウディナさんは呆気にとられてたけど気をとりなおしたのか私の質問に答えようとしてくれた。
「ああ、それはですね―――「おい、」」
クラウディナさんを遮ったのはガジュだった。ああ、この際呼び捨てね。初対面で失礼すぎるし。
「どういうことだ。皮肉ってるのか?」
うーん、怒ってるとこ悪いんだけど全く心当たりがありませんが。何のこと?
「えっと、何がですか?」
「俺が自分以外は信じない神経質野郎みたいじゃねぇか。」
‥‥‥そう解釈したこと自体が神経質な気がする。
私が黙ってることを肯定と受け取ったらしい。ガジュが青筋立てて飛びかかってこようとした。
あーあ、危ないなぁ。ぶつかったら痛いじゃん。
ひょいと避けると後ろですごい音がした。見ると雪の中に顔をつっこんだガジュがいた。しかも勢いがついてたかせいか顔どころか上半身まで埋まっている。
「‥‥何故避けた!?」
「避けません?普通」
そう言うとまた顔を真っ赤にさせるガジュ。
もーなにこの人。怒りっぽいし、怒りポイントが全然分かんない。血圧高いんじゃないの?
「―――ガージュっ、また暴れてんの?いい加減、予算削られちゃうよ?」
私がげんなりしかけた時、またもやドアが開いた。
入ってきたのは元気そうな女の人。パンツを履いていてぱっとみボーイッシュな感じだ。
「――って、うひゃ!?なにこの雪!?またカストがやらかしたの!?」
「‥‥‥皆して酷くないですか?サフィス、それより紹介したい人がいるので部屋にはいってください。」
「ほーい。って、その子?何よ、ついに女日照りのカストさんに彼女?」
「何言ってるんですか。そんなわけないでしょう。魔導師長となるミアカ・バーデルさんですよ。バーデルさん、ガジュと同じく魔導師兵のサフィス・ローレンです。 」
「こんなに可愛い子が魔導師長になるんだ、すごいねぇ。あたしはサフィス。宜しくお願いします、ミアカ魔導師長サン。」
サフィスは人懐っこい性格らしくにっこり笑って自己紹介してきた。
うん、笑ったときにできる笑窪が可愛い。やっぱこういう性格の方が好感が持てるなぁ。ガジュを見た後だから余計に。意味の分かんないことでキレられても困るよね。
「宜しくお願いします、ミアカ・バーデルと言います。」
「きゃーっ、可愛いっ。やっぱウチには華が無かったんだよ、華が!男ばっかでむさ苦しくてしょうがなかったんだー。」
むぎゅーっと抱きつかれて息がつまる。ぐぇ。
‥‥‥サフィスはスキンシップ過多な方らしい。
「‥‥‥お前も一応女だろうが。それにソイツ、中身は可愛くないぜ。さっき俺を投げ飛ばしやがった。」
おいおい、なに事を大きくしてんだよ。ガジュが突進してきたから避けただけなのに。まぁ、その拍子に足を引っかけたかもしんないけど、それは事故ってことで。
「それはどうせガジュが悪いんでしょー?いつも簡単にキレちゃうからね。気を付けなよ?」
「俺は短気なんかじゃねぇ!」
「そういう所が短気なんだってば。‥‥‥あ、そういえばカスト、こないだの魔導具の件なんだけど。」
「違ぇよ!っておい、聞いてんのか!?」
あ、ガジュが無視られた。
「何ですか?」
「あれの問題点なんだけどさ、テストしてみたら性能は十分なんだけどまともに動かせる人材がいないっていう。」
「ああ、魔力消費量の問題ですか‥‥‥。あれでも抑えてるんですけどね。」
「おい、聞いてんのかって!」
「「ガジュ、うるさい!(です)」」
「‥‥‥‥‥」
あ、撃沈されたガジュが地面にのの字書いて体育座りしてる。背中に哀愁漂ってんなー。
てか何のコントだよ、コレ。あれか、クラウディナさんもサフィスさんもガジュも昔馴染みっぽいし、そのアピールか、おい。
くそぅ、新参者だからって除け者にしなくたっていいじゃないかー!
ま、昔馴染みチームにも体育座りしてる人が約1名いるけどww
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。新キャラ出したのに全く名前以外の情報なくてごめんなさいぃ
多分、近いうたに人物紹介②を入れるのでそこで新キャラ詳細を載せると思います(-_-;)




