必殺の居合斬り
風の精霊へと間合いを詰めるウタカタ。
しかし、風の精霊がウタカタ目掛けてカマイタチを飛ばす。
「おっとぉ!」
ウタカタは間一髪カマイタチを躱した。
そして、風の精霊が目前に迫り居合斬りを放つ。
「我流・抜刀浮雲!!」
凄まじい速度で放たれる居合斬り。
その瞬間、赤く煌めく光をウタカタは目にした。
しかし、全力の居合斬りを風の精霊は躱した。
カマイタチを躱したことでウタカタの体勢が崩れ、その状態で放った居合斬りは、風の精霊の回避に間に合わず躱されてしまったのだ。
そして、風の精霊が間髪入れずに次の攻撃を放つ。
「金剛鎧装!」
咄嗟にウタカタは金剛鎧装でカマイタチを防いだ。
「ふぅー、危ない危ない。何とか間に合ったねぇ」
『何を呑気なことを言っておる!お主自慢の居合斬りが躱されたのだぞ!』
「まぁまぁ、そう焦りなさんな。当たったところで核の位置がわからなかったんだから、意味はないさ」
『そういう問題では無かろう!お主最速の一撃を躱されたのだぞ!』
「それについては大丈夫、手は打つさ。それより、さっきの一撃で精霊さんの核の位置、ちゃーんとこの目で見ちゃったよぉ。こいつぁ大きな収穫だねぇ」
ウタカタ自慢の居合斬りは躱されてしまった。
しかし、ギリギリまで間合いを詰めて風の精霊の動きを見極めてから居合斬りを放ったことで、核の位置を目視で確認できたのだ。
ウタカタはどこか余裕そうな表情を浮かべている。
ウタカタには考えがあった。
「次はどんな攻撃が来ても躱さないよぉ」
『何を言っておる、お主!?それでは自爆特攻ではないか、貴様死ぬ気か!?』
土の精霊が焦りをあらわにする。
しかし、ウタカタはそんな土の精霊を気にも留めずに、再度足場を風の精霊へと向けて伸ばし、間合いを詰める。
『やめろ、よせ!死ぬぞウタカタ!』
土の精霊が叫ぶ。
そして、土の精霊が危惧していた通り、カマイタチがウタカタ目掛けて飛んでくる。
しかし、宣言通りウタカタは微動だにしなかった。
ウタカタは、真っ直ぐ向かってくるカマイタチをその目で捉えていた。
カマイタチが目前まで迫る。
ウタカタへ直撃する、その寸前——。
「磐境障壁!」
ウタカタがそう叫ぶと、ウタカタの目の前に岩の壁が立ちはだかった。
岩の壁——磐境障壁がカマイタチを防ぐ。
ウタカタはそのまま突き進み、風の精霊が目前まで迫った時、磐境障壁を解除した。
岩の障壁は崩れ落ち、ウタカタの目の前に風の精霊が現れた。
ウタカタは、満を持して居合斬りを放つ。
「我流・抜刀浮雲!!」
今度は万全の体勢だった。
居合斬りの速度は風の精霊の回避を上回り、避けることを許さない必中の刃となった。
その刃は、風の精霊の核を正確に捉えた。
ピキッ!パキパキッ!バリイイィィィーーーーン!!
甲高い音を立てるとともに、核は砕け散り風の精霊の肉体は霧散して消えた。
『やったか!?』
「どうやら、そうみたいだねぇ」
決着がついたことを確認すると、ウタカタは刀を肩に担いで一息ついた。
「まぁ、自信はあったけど、やるか、やられるかだったねぇ」
『まったくお主は、掴みどころのない奴よのう』
「言ったろう?それが俺の魅力さって」
足場としていた石柱を地上へと伸ばして、ウタカタは山頂の地へと降り立った。
「やりましたね、ウタカタさん!」
そこへ、セツナが駆けつけた。
「無事で何よりだ、セツナ。辺り一帯、竜巻でやばかったからねぇ」
「私の祈りの結界があれば大丈夫ですよ。神の御加護です!」
「へぇー、神様は随分気前がいいねぇ。俺も欲しいくらいだよ」
「巫女に代々伝わる加護です。欲しくても手に入りませんよっ!」
「そいつは残念。今からでも神様を信じようと思ったんだけどねぇ」
「あぁー!ダメですよー、そんなこと言っちゃ!神様はいるんですから!」
「はい、はいー。地雷踏みました、すみませんねぇ」
全く反省していない様子のウタカタにセツナが説教をしていると、二人に直接話しかける声が聞こえてくる。
『あれれー?何が起きたのこれ?すっごいメチャクチャになってるじゃない!?』
無邪気な声の主は風の精霊のものだった。
『お主がやったんじゃよ』
土の精霊が風の精霊に伝える。
『ありゃりゃー、ごめんよー。でもボク、全然覚えがないよー。一体何があったの?』
どこか飄々とした態度で答える風の精霊。
「何だか風の精霊様って、ウタカタさんに性格が似てますね……」
「そうかい?俺ってこんな感じなのかい?もう少し頼り甲斐があるっていうか、男らしいというか、ねぇ!?」
賛同を求めるウタカタだったが、誰からの賛同も得られなかった。
『お主が暴れておったことしか、ワシらも知らん。ところでお主、封印を解かれる時のことを覚えとるか?』
土の精霊が重要な質問をした。
「そうそう!それだよそれ!大事なことなんだ、精霊さん、なんか覚えてないかい!?」
ウタカタも風の精霊へと問いかける。
『うーん、ごめんだけど全然覚えてない』
風の精霊の返答に、やるせなさをあらわにする一行。
しかし、ウタカタが何かないかとさらに問う。
「精霊さん、何でもいい。あんたの封印を解いた奴のこととか思い出せないかい?」
必死に記憶を辿って思い出そうとする風の精霊。
そして、一つだけ、思い出せたことがあった。
『そういえば!一つだけあるよ!ボクの封印を解いた奴、刀を持ってたよ!』
風の精霊が思い出したのは、すでに土の精霊から教えてもらった内容だった。
「あー、他には何かないかい?刀を持っている以外に身につけていたものとか。顔を見たりとかしてないかい?」
必死に引き出そうとするウタカタ、風の精霊はさらに記憶を辿る。
『あっ!そういえば、そいつ耳飾りをつけてたよ。模様までは覚えてないけど、ボクの巻き起こす風で揺れてたのを覚えてる!!どう!?ボク、凄いでしょ!!』
耳飾りの情報を思い出したことを自慢げに語る風の精霊。
小さな情報だが、黒幕へとつながる情報を手に入れた。
「耳飾りかー、まだ絞れそうにもないなぁ」
「そうですねえ。どんな耳飾りなのかが分かれば、それが作られている地域から特定できたかもしれませんね」
『えっ?あれ?ボク、役に立ったよね?ちゃんと思い出したよ、特徴。ねぇ、ボク凄いよね!?』
風の精霊がものすごい勢いで問い詰めてくる。
『あぁ、お主はちゃんと役に立ったぞ。凄いとも!凄い凄い』
風の精霊の扱いを心得ているのか、土の精霊が風の精霊をなだめる。
「そういや、あの黒い竜巻は収まったのかい?ちょっと様子を見ようかねぇ」
ウタカタが山頂から島を一望できる所へと向かった。
黒い竜巻は止んでいた。
しかし、暗雲が立ち込めたまま、天候は一向に回復する気配がなかった。




